• 2020/08/31
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営業活動で行うべきデジタルトランスフォーメーション(DX)〜これから営業活動はどうなる?〜

  • マーキャリ 編集部
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目次

この記事では、近年重要視されているデジタルトランスフォーメーションについて、営業分野ではどのようなデジタルトランスフォーメーションが起こせるのか詳しく解説しています。


「営業は足で稼ぐもの」といった考えが強い企業もいまだに多いですが、今後、営業の仕方は大きく変わっていくことが予想されます。デジタルトランスフォーメーションとは何か、といったところから解説していますのでデジタルトランスフォーメーションについて詳しく分かっていなくても問題ありません。ぜひ参考にしてください。

デジタルトランスフォーメーションを正しく理解していますか?

デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。DTではなくDXと略すのは、英語圏では「trans」を「X」と略すことに由来しています。


よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものです。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です。デジタル化はあくまで1つの手段にすぎません。この点についてはしっかりと頭に入れておいてください。単にデジタル化を目指すことに躍起になってしまっている企業は、驚くほど多いのです。


デジタルトランスフォーメーションは、業務の効率化をするためにシステムを開発することでも、インターネットやAIを駆使した新しいビジネスを作ることでもありません。特定の業務だけでなく、業務全体、ひいては製品・サービス自体までもデジタル化することを意味しています。


デジタルトランスフォーメーションへ至るまでには「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」の2つのステップを経ることになります。どちらも業務工程をデジタルの力によって効率化していくものですが、デジタイゼーションはデジタルツールを導入することで特定業務のデジタル化やアナログ情報をデジタルにしてデータを蓄積できる環境を整えることを言います。


デジタライゼーションは業務フロー(プロセス全体)をデジタル化していくことです。デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経産省では以下のように定義しています。


「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」


つまりは製品やサービスをデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。商品をデジタル化することは、デジタルトランスフォーメーションへの第一歩にすぎないのです。


近年、新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、これまで通りのやり方では難しいです。場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要となるでしょう。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争上の優位性を保つために避けては通れないものなのです。それは企業が売上を上げるための営業活動も例外ではありません。  

営業活動のデジタルトランスフォーメーション事例

営業活動をデジタルトランスフォーメーションするといっても、正直イメージがつきづらいでしょう。この項ではどのようにして営業をデジタルトランスフォーメーションするかについて解説をする前に実際の事例を紹介します。営業のデジタルトランスフォーメーションのイメージをまずつかんでください。  

テスラ:営業活動をオンラインで完結

電気自動車メーカーとして知られるテスラ。テスラは2019年に多くの店舗を閉鎖して、オンラインでの販売に移行しています。車は安い買い物ではありません。そのため「しっかりと吟味して購入を決定したい」と考えるのが一般的です。オンラインで買えるのはいいが、満足できなかったらどうするのかが気になるところでしょう。車は乗り心地が重要。そのため試乗がしづらくなるのは消費者にとってデメリットのように感じられます。


しかし、テスラは購入後7日以内または走行距離1600キロ以内(いずれか早い方)であれば全額返金が可能な体制が整えられています。「高い買い物だから失敗したくない」という気持ちを利用し、返金制度を設けることで「気軽にできる高い買い物」という新しい購買のかたちを提案していると言えます。


テスラでは、店舗を構える必要がなくなった分、人件費やテナント料などのコストを大きく下げることに成功しました。その結果、平均で車の販売価格を6%も引き下げるという大きな成果を得ています。実際の成果を販売価格に反映することは、真摯な経営を行っているという印象を消費者に与えます。それに伴って電気自動車へのものづくりの精神も真摯なものであると消費者にイメージさせられます。テスラはBtoCマーケティングにも長けている企業だと言えるでしょう。   

富士通:営業職を廃止

富士通は、デジタルトランスフォーメーションを率先して行う日本企業の1つです。富士通では営業職という名称を廃止しビジネスプロデューサーという職種が新たに生まれます。単なる名称変更ではなく、顧客といっしょにビジネスをプロデュースする、顧客を直接サポートする役割を担い、メンバーは営業職とシステムエンジニア職が再編されて組織されます。


また、全社で課長職以上の幹部の報酬体系を見直し、年功序列を2020年中に撤廃するなど、電機メーカーとして培ってきた社内の仕組みや人事制度などを順次刷新する予定です。人事制度の改革は年齢を問わず、職務上の役割に応じて報酬が決まる「ジョブ型制度」を導入し、全社従業員13万人の意識改革をする狙いもあります。役割が空けば社内外から広く公募するスタイルで、常にベストな経営が行えるような体制作りがすすめられています。


年功序列の撤廃は、社員にとっては大きな刺激になります。大手であることにあぐらをかいてしまっていた人は、きちんと仕事に向き合うでしょうし、自身の成果がきちんと評価されていないと考えていた人にとっては自分を強くアピールするチャンスとなります。


超高齢社会にある日本ではすでに人口が減少し始めています。このことは労働人口にも直結し、日本企業はこれまで以上に優秀な人材の確保が困難になっていきます。そんななかで富士通が行う人事制度の改革や年功序列制の撤廃は、自身の実力で勝負したいと考えている新卒や転職希望者への追い風にもなるでしょう。富士通が行う改革は、単に営業職の廃止というだけでなく、優秀な人材の確保にもつながるものになると予想されます。  

NTT東日本:インサイドセールスを活用

NTT東日本では、一般的な営業職に加え、営業活動をインサイドセールスだけでも完結できる仕組みつくりを整えました。 インサイドセールスとは内勤営業と訳されることが多い職種です。外回りの営業職が「フィールドセールス」または「アウトサイドセールス」と呼ばれているのに対して、こう呼ばれています。従来の対面型の営業ではなく、電話やメール、Web会議システムなどを使い顧客と直接対面する以外の方法で営業活動を行うのが特徴です。


近年アメリカで広まり、それが日本でも取り入れられました。アメリカではインサイドセールスが契約手続きまで行うことが多いですが、日本では訪問営業の担当に契約の取れやすいアポイントを渡すといったパス出しを行う役割を担うことが多いです。


NTT東日本のインサイドセールスは、いわゆる営業部の補佐的な役割として設けられているインサイドセールスではなく、営業活動全般を担う職種であるのがNTT東日本のインサイドセールスの特徴です。


NTT東日本は以前、Webプロモーションでリード(=見込み客)を増やしても、そのリードが一向に受注につながらないという課題がありました。同社は、インサイドセールスの立ち上げで営業活動の改革を行い、数値分析やPDCAをまわすだけでなくスタッフへの教育や既存の営業部との調整を行うことで、リード獲得件数を3年で10倍、案件受注率を3~4倍まで大きくのばしました。


インサイドセールスを導入することで得られる最大のメリットは営業活動の効率化です。契約を取るのが仕事の営業職ですが、実は従来の営業職の仕事内容はアポイントの取得、営業先への訪問、契約した顧客へのアフターフォローと多岐に渡ります。インサイドセールスでは、オフィスにいながら顧客対応が可能ですので、地理的な事情が関係なくなります。従来であれば、遠方の顧客に会うために少ないアポで1日が終わっていたものが、移動時間がなくなるためたくさんの顧客を対応することや、優先順位の高い顧客に時間を割くことができます。


インサイドセールスが営業活動の全部を担うことができれば、その分顧客に訪問する交通費がカットできます。費用だけでなく、移動時間やチケットの手配などといった時間も抑えられます。また、抑えられたコストを使って売り上げを伸ばすための広告に使うなどの好循環を生むこともできるでしょう。


インサイドセールスは客先に出向かずオフィスや場合によっては在宅でも仕事ができますので、たとえば訪問営業職だった人が、小さな子どもがいるなどの理由で一時的に時短勤務を行いたいといった場合にもインサイドセールスは有効でしょう。また、現在はインターネットの普及に伴い、どこにいても商品が買える時代になりました。商品を購入する際には、似たようなものの中から比較して購入するというのが基本的なスタイルになっています。営業職が商品やサービスについて直接訪問して説明しなくても、ネット上で十分に情報が集められる時代に、インサイドセールスはマッチしていると言えます。    

営業活動のデジタルトランスフォーメーション推進への障害

営業がオンラインで完結する、インサイドセールスによって社内にいながら契約を取ることができるといった体制は、非常に効率的で理想のかたちのように思われます。しかしITやAIが発展するにつれ懸念されるようになったのは「既存の仕事がなくなり、職が奪われるのではないか」ということ。たとえばインサイドセールスを導入したNTT東日本の例をとるならば、既存の営業職との摩擦は避けられないでしょう。


どのような会社であっても営業職には数字やノルマと呼ばれる売上目標が設けられています。それではインサイドセールスが挙げた売上は、どの部署の成果となるのか論点となるところです。 NTT東日本では、プロモーション部門がインサイドセールスを担当しているため売上はすべて営業部の成果としているようです。同じ社内であってもお互いが気持ちよく働けるための仕組みづくりには細心の注意を払うべきでしょう。特に営業部では自身の腕一本で成果をあげてきたと考えている方も多いです。他部署に配置転換となることを嫌う方が多いので、営業のデジタルトランスフォーメーションを行うのなら、あらかじめ筋道立てて説明をしておくことが重要となります。  

それでもデジタルトランスフォーメーションを行う意義

営業部門に限らず、企業では業務を行うにあたってすでに何らかのITシステムが導入されています。業種によっては数十年単位でシステムの変更が行われていないというケースも珍しくありません。企業は自社が運用しやすいように既存のシステムをカスタムし続けるのが通常です。そのためシステムが老朽化するだけでなく複雑化することで、どんなものなのか実態が見えないブラックボックス化している状態にあります。システムのブラックボックス化がすすむことでデータを活用しきれないだけでなく、新たな技術を導入しても効果が出にくい状況にどんどんとはまってしまいます。


さらには、新たなシステムを1から導入するためには、仕事のやり方そのものを大きく変更する必要があるため、現場からの抵抗も大きいことも、ブラックボックス化がすすむ要因となっています。もちろんシステムの刷新には大きな費用と時間がかかります。しかし、これらの問題を放置しておくと、「デジタル市場の拡大に伴って大きくなるデータ量」「システムを現場で運用している担当の定年退職による世代交代」「サイバーセキュリティや事故・災害などによるデータの紛失リスクの高まり」といった状況に陥ると考えられています。


これら3つの要素に対応しきれなくなるのが2025年と言われており、2025年までにデジタルトランスフォーメーションが起こせなければ、国内外を含めて競争に勝ち残れない存在となると予想されています。

これまでの営業とこれからの営業

従来の営業職は、スタイルの違いこそあれ顧客の要望を叶える、ニーズを満たすのが仕事でした。もちろん今後それがなくなってしまうわけではありません。しかし、ニーズを満たすでは不十分な時代がデジタルトランスフォーメーションによってやってくるでしょう。


たとえこれまで通り足で稼ぐ営業を行うと意思をかたくしても、周りがデジタルトランスフォーメーションすればそれは前時代のものになり、相対的に価値は下がってしまいます。


極論ではなく、デジタルトランスフォーメーションは「するorしない」の話ではなく、せざるを得ないものとなっています。その理由は前項で述べた通り、ひとことで言えば「競争に勝ち残れなくなるから」です。コンピュータが出始めの時代には、コンピュータの計算が信用できず、電卓で検算をしていたという今では笑い話のような本当の話があります。しかし、現在はExcelの表計算の結果を疑う人はいないでしょう。それと似たような状況がデジタルトランスフォーメーションによって近い将来やってこようとしているわけです。


これまでの営業はソリューション営業という言葉に代表されるように、顧客が困っていることや課題に感じていることを解決することが仕事でした。これには顧客が気づいていない潜在的なニーズの解決も含まれています。デジタルトランスフォーメーションは、業務の効率化をするためにシステムを開発することでも、インターネットやAIを駆使した新しいビジネスを作ることでもなく、テクノロジーの活用によってこれまでの経営や会社の運営の仕方を根本的に変えてしまうことです。つまりはデジタルトランスフォーメーションがすすむにつれて必然的に営業職のあり方も変わっていかなければならないのです。


営業職は、顧客のサポートに徹するのではなく今後は顧客が悩む「自分たちはどうすべきか」といった経営や運営のあり方にまで踏み込んでいっしょに考え、アドバイスを与えるような役割へと変化していくことが期待されるのではないでしょうか。いわゆる御用聞きではなく、どうあるべきかを解決することができるのが新しい時代の営業職です。ソリューション営業は、その名の通り解決をすることしかできません。課題はなにか、どんなニーズがあるか、何か困っていることがないかとヒアリングしたところで、相手にニーズがない場合には力になることはできません。そもそも相手に「どうしていきたい」がなければ従来の営業職の出る幕はないのです。


今後、営業という役割が目指すゴールはどこになるのでしょうか。デジタルトランスフォーメーションがすすむのは営業活動においてだけではありません。ビジネス全体のデジタル化がすすむわけですから、営業活動のゴールは顧客のビジネスのサポートにとどまるのではなく、ビジネスを成功へと導く存在になることでしょう。これまでの営業職は、自社の製品やサービスを使って顧客の課題を解決したり支援をしたりするものでした。しかし今後の営業職は顧客のビジネスそのものを成功に導くことが求められると考えられます。


とはいえ、会社の経営や事業の方針を他社のいち営業職にゆだねるというのは想像がしづらいかもしれません。しかし人として信用され、相談できる人間になれればそれもありえない話ではないでしょう。進化したAIなら質問を投げかければ答えを導けるでしょう。営業がAIにとってかわられるかどうかはAIの進化の問題ではなく、営業の在り方の問題です。逆に言えば、AIが進化するまでのつなぎのような存在となってしまっては、営業の価値はなくなります。


そもそも商品の販売をすべてECサイトに集約して、営業職という役割をなくす選択もないわけではありません。しかし、会社の方針としてそうしないのであればクライアントに対して何をすべきかを言える存在、少なくともECサイト以上の存在ではある必要があります。今後の営業職は、クライアントに寄り添うことにとどまらず、新たな欲求を生みだす役割となる日もそう遠くないのかもしれません。

デジタルトランスフォーメーションの先の営業職の働き方

これまで営業職はリスト作成・アポ獲得のための架電・訪問して商談・ヒアリング・商品説明・提案・クロージングと、非常に多くの作業を担っていました。それぞれのクライアントや見込み客に集中したくても業務の幅が広い上に毎月の売上目標があるためにそれもかないませんでした。デジタルトランスフォーメーションが進む過程で、デジタル化がすすめば営業は力を割くべきところにフォーカスができるようになります。営業職の役割が「売上を立てる」ことであるならばヒアリング・提案・クロージングに集中できるようになります。


デジタルトランスフォーメーション以前の話で、現代においてもアナログな手法で営業活動を行っている企業は意外なほど多いです。たとえばアポイントを取るために毎日何十・何百と電話をする企業や、一件一件飛び込み訪問をして営業を行う企業は現代でも非常に多いです。情報がインターネットで手に入れられる現代においては、すでにネットにある以上の情報を提供できない人材はスキルに関わらず活躍できないようになっています。同業他社の商品情報などがいくらでも手に入れやすい状況にあるなかで、他社と同じような商品・アプローチであれば今後はアポイントを取ることさえ難しくなっていくでしょう。



デジタルトランスフォーメーションの第一段階である「デジタイゼーション」はすでに完了していると言ってよい段階ではあります。そのような時代において現在も旧時代的な営業手法をとっているのなら、営業職として未来はどうあるべきかをデジタルトランスフォーメーションの波に取り残されないよう考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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