IT業界で近年注目を集め始めたエバンジェリスト(evangelist)という職業をご存じでしょうか。エバンジェリストは、最新のテクノロジーやトレンドについて、一般ユーザーに分かりやすく説明する役割を担っています。
この記事では、エバンジェリストの仕事内容や役割、注目される理由、必要なスキルなどについて詳しく解説しています。エバンジェリストを目指す方はもちろん、IT業界への就職・転職を検討している方には参考になる部分が多いはず。ぜひ最後までご覧ください。
エバンジェリストのルーツ
エバンジェリストとは、元々キリスト教における「伝道師」を意味する英語です。それが転じて最新のテクノロジーを一般ユーザーに分かりやすく伝える役割を担う人をエバンジェリストと呼ぶようになりました。IT業界でエバンンジェリストという言葉が使われ始めたのは、アップルやマイクロソフトが「テクニカルエバンジェリスト」というポストを設け、新しい商品やそれを使った習慣の導入を説いてまわる役割を担わせたことに由来します。
PCという機械がどんなに優れていようとも、必要と思ってもらえなければ一般の人は欲しがりません。特に専門知識のない人からすればそうでしょう。エバンジェリストという職種は、商品の必要性や他社との違いを啓蒙することで、商品を一般層にまで広める役割を担っているのです。
エバンジェリストが必要とされる理由
最新のテクノロジーについて分かりやすく伝えるエバンジェリストが重宝される大きな要因には、IT技術の急速な進化スピードがあります。IT業界では数年前の技術が時代遅れになることも珍しくありません。また、IT技術を駆使することを専門とするエンジニアであっても最新のテクノロジーについては把握できていないことも多いでしょう。それがIT技術を専門としないクライアント企業であるならばなおさらです。
たとえどんなに素晴らしい商品やサービスであっても、それがどういう仕組みで、どんなシーンで活用できるのかが相手に伝えられなければ契約や売上にはつながりません。難解なものを相手に分かりやすく伝えられて初めて成果につながります。エバンジェリストは難しいものを誰にでも分かるように説明をすることで、新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけを作っているのです。
エバンジェリストの仕事内容
難解なIT技術について分かりやすく説明するエバンジェリストは、さまざまなシーンで活躍しています。エバンジェリストが具体的にどのようなシーンで活躍しているのか、主なものを紹介します。
イベントでのセミナーやプレゼンテーション
ここで言うプレゼンテーションとは、コンペや商談のシーンで営業職が行うものとは異なります。自社の製品やサービス、新しい技術に対して大勢の前で発表をするというものです。セミナーと言った方がイメージとして近いかもしれません。イベントを開催してプレゼンを行うのは、もちろん自社の製品の購入やサービスの加入につなげる目的もありますが、シンプルに新たな技術について中立な立場で分かりやすく説明するといったパターンもあります。
社内研修・インナーマーケティング
自社の新製品やサービスについて、自社の社員教育を行うのもエバンジェリストの役割の1つです。難解な技術が使われたものは、たとえそれを開発した社内の人間であっても容易に理解できるものではありません。社員向けに行う自社ブランドや製品に対しての啓蒙活動をインナーマーケティングと呼びます。インナーマーケティングを行うことで社員の意識向上などにつながります。
一般的な内容の社内研修は人事が担当することも多いですが、技術が関わってくるものに対しては専門職であるエバンジェリストが担当するというように役割分担がされていることが多いです。
クライアント企業が自社サービスを導入する際のデモンストレーション
エバンジェリストは、サービスの導入検討しているまたは導入したてのクライアント企業に出向いて、個別にデモンストレーションを行うこともあります。単にデモンストレーションをするだけでなく、クライアントに合わせた内容のプレゼンや説明が求められます。
広報や営業との違い
エバンジェリストは、企業に属して自社の製品やサービスについてのプレゼンテーションを行い、啓蒙活動をするのが役割です。その点では広報や営業と似ている部分もあると言えます。しかし、エバンジェリストは専門家として基本的には中立な立場から情報発信することが多いです。企業に属していながらも偏らず中立な立場で情報を提供することでユーザーと信頼関係を築くのです。
エバンジェリストになるには
企業の広告塔とも言える役割を担うエバンジェリストには、さまざまな能力が求められます。ここからはエバンジェリストとして活躍するために必要なスキルや、どのようなキャリアプランでエバンジェリストを目指すことができるのかについて解説していきます。
プレゼンテーション能力とテクノロジーに関する知識
IT技術を専門としないユーザー企業に対して分かりやすくプレゼンテーションをすることがエバンジェリストの最大の役割です。技術に対しての知識ならエンジニアにもあるでしょう。それにも関わらずエバンジェリストを設けるのなら圧倒的なプレゼンテーションスキルが求められることは間違いありません。もちろん専門的なことについて分かりやすく説明するには、それ相応の知識も必須となります。エバンジェリストを目指すなら知識とプレゼン能力のどちらも身につける必要があります。
知的好奇心と情報収集能力
ITテクノロジーの進化はとどまることがありません。そのためエバンジェリストは常に最新の情報を入手する必要があります。そして情報を提供することを生業とするのなら、それを楽しめるかどうかも重要でしょう。新しい技術についてどんどん知りたいという好奇心があることはエバンジェリストとして活躍する上での素質となります。
エバンジェリストにキャリアチェンジするなら
エバンジェリストは、非常に専門性が高く企業の広告塔とも呼べる重要な役割です。そのため新卒・転職問わずいきなりエバンジェリストになれることはまずないでしょう。しかし将来的にエバンジェリストを目指すのなら、エンジニアやITコンサルタントとして経験を積むのがおすすめです。エバンジェリストは、エンジニアとしての技術に関する知識や運用能力、ITコンサルタントのヒアリング・プレゼン能力を兼ね備えたような存在です。
簡単なことではありませんが、しっかりと経験を積み重ねてスキルを磨くことで初めて、エバンジェリストとしての道が見えてくるのではないでしょうか。