新規事業を立ち上げる時に、プロジェクトメンバーのが頭を悩ますのが、企画書を作ることではないでしょうか? せっかく事業検討に時間をかけても、企画書の出来映えが良くなかったために、ボツになってしまうことも少なくありません。しかし、企画書の効果的な作成方法を理解することで、説得力も強まり、難しかった新規事業企画をスタートさせることができるでしょう。そこで本記事では、新規事業の立ち上げるための企画書の書き方について、説明をしていきたいと思います。
新規事業の企画書作成で意識しておくこと
企画書は、効果的な作り方を1度マスターしておくと、どのポイントを押さえておけばいいのか理解できます。特に新規事業の企画書を作る上で最も大切なことは、「企画書の可否を判断する立場の人が期待することを的確に押さえておくこと」です。新規事業の企画書は、社内決裁や金融機関からの融資申し込み等の場面で必ず求められるものです。しかし、決裁書や融資の審査の立場にある人にとって知りたい内容は異なってきます。そのために、主観的な独りよがりの内容では、理解を得ることができないので、見る側の観点で企画書を作成することが重要です。
新規事業が認められる企画書の作成ポイント
新規事業の企画書の作成に当たり、押さえておくべきポイントがあります。これらのポイントを系統立てて整理し、説明することで、その企画を経営層や金融機関の担当者を納得させることができるようになります。
自分達がやるべき事業かどうか?
まず、この企画書で提案された事業は、本当に自分達がやるべき事業なのかを判断することです。この事業は自社の強みが活かされて、その事業を取り組むことで社会的な意義があるのかが、審査されていきます。そのために、新規事業の企画書では、次のようなことを具体的に明文化しておくことが必要です。
・新規事業を手掛ける理由
・新規事業を行うことで解決できる課題
・事業に活かされる自社の強み
・客観的な自社分析、競合他社も含めた環境分析
これらの項目を盛り込むことで、新規事業を進める理由が分かりやすくなってきます。
投資価値のある事業か?
あえて新規事業を進めることで、投資するだけの見返りが望めるのかについて展望を描けなければ、新規事業を実行フェーズに移行させていくことは難しくなります。継続的な需要が見込まれ、競合のある市場で勝ち続ける根拠も示さなければなりません。そこで、新規事業企画書の中で、次のようなことを盛り込むと効果的な企画書に近づいてきます。具体的には「市場規模・有望性」、「ターゲット顧客のニーズを的確に掴み、事業展開を進めた結果、その業界で自社がどのような地位を築けるか」等も含めて、記載していくと、さらに説得力が増してきます。
確かな事業性はあるか?
新規事業を進める上では、確実に事業として、成り立っていくものか、その確実性も可否の判断基準になります。新規事業には投資リスクがつきまとうので、投資コストをどのくらいの期間で回収できるか、確実に回収できるかで企画書の結果が大きく変わってきます。この投資リスクに対する確実性を明確にするためには、企画書の中で、提供する製品・サービスを選ぶ顧客のニーズや投資コストに対する収益見込み等を入れておくことが必須です。ここで事業を構成する要素毎に、コストや資金計画、収益見込みを入れて、予測しうる損益を試算しておくと、最終的な判断もしやすくなります。
リスクの程度
事業が確実なものなのかを説明すると、同時にリスク判断も必要です。未知の領域である新規事業は、これまでの実績が無いので、失敗リスクの可能性も否定できません。そのためにリカバリー策の有無も入れておくことが必要です。
効果的な企画書のあり方
新規事業を進める上で作成ポイントを挙げて来ましたが、資料作成のテクニックとプレゼンが上手くできれば、企画が採用される可能性は格段に上がっていきます。資料を作成する上で心掛けておくことは主に以下の3つです。
・書類にストーリーを持たせる
・簡潔に書く
・客観的なデータを集めて論理立てて整理する
これらの点を押さえて企画書を作り上げることです。また、プレゼンで陥りやすいことは、感情的になってしまうことです。他にも、質問回答集が不足していてその場で回答ができないケースがあるため、その対策が必要になります。役員はありとあらゆる角度から質問してくるため、それがどういう意味があるのか、どんな質問がありそうかを想定して回答集を作っておきます。
ストーリー性のある企画書
これは「4ステップの構成で資料を作成すること」です。第1ステップでは、対象市場のデータや統計データを使いながら、他社の商品やサービスの状況、類似品の存在、潜在ニーズ等の具体的な数字も明記しておくことです。
第2ステップでは、新規事業の必要性に基づき、どのような商品やサービスを作り上げていくのかを説明するパートになります。具体的な事業の概要やその特徴、他社と優位性、販売施策等を説明していきます。
第3ステップは、この商品・サービスを作ることで、どのようなことが起こるのかを説明していきます。その具現化として、目論見の事業計画やKPIも明確化させていきます。また、実行するための運用体制・スケジュールや進行手順も必要になります。その一方でリスク管理としての「撤退指標基準」も作り、事業ステップ毎の目標値を達成できない場合の策も考えておかなければなりません。
そして、第4ステップで、事業を運用した結果、どのような結果が産み出せるのかを示していきます。この事業を手掛けることで、業界内にどのようなインパクトを与えることができるのか、またさらに事業を拡大させることができるのかを盛り込んでいくのです。
想定問答集も用意しておく
新規事業の企画書は、会社の経営層に読ませて、来るべき将来的に期待をさせるための資料でもあります。そのために、企画書は長くても15、6ページ程度にまとめておくことが、読みやすい、見やすい資料となります。しかし、この企画書でプレゼンをすると、必ず聞かれる質問があるはずです。典型的な質問としては「この事業は儲かるのか?」「有望な市場があるか?」「どのようにして、顧客を獲得するのか?」「他社は、この事業に参入してこないか?」プレゼンでも、これらの質問に明確に回答しなければ、企画を通すことは難しくなってくるでしょう。
しかし、この手の疑問点を全て企画書に盛り込むのではなく、あえて質問させるようにしておくテクニックも必要だということです。意図的に突っ込まれる要素を企画書やプレゼンに残しつつ、その対策として別に準備する回答資料で捕捉説明するのです。ここで、経営層からの質問にパーフェクトに答えることができれば、この新規事業に対する安心感が与えられます。その結果、事業承認を得る可能性が格段に上がっていきます。
まとめ
新規事業をスムーズに立ち上げるためには、非常に多くの時間と労力を費やします。その集大成が企画書でもあるのですが、その書き方を間違えてしまうと、できるはずの事業も立ち行かなくなってしまいます。新規事業をスピーディーに進めるためにも、企画書の作成で求められることを理解して、しっかりと臨んでください。