夢抱く人材が活躍! 独自の育成方法で成長してきた「インサイドセールス組織」

夢抱く人材が活躍! 独自の育成方法で成長してきた「インサイドセールス組織」

Profile

早川諒 株式会社AHGS 代表取締役

全国に拠点を持つ株式会社AHGSのインサイドセールス事業を統括し、クライアントの課題解決を支援。インサイドセールススタッフの育成にも従事し、人材育成や昇進制度では独自の手法をとり、活躍したい者が活躍できる場と感謝しあえる組織を目指す。
現在、「世界一、社内でありがとうが溢れる会社へ」をスローガンに掲げ、インサイドセールススタッフを増員、事業を拡大している。

目次

今回インタビューしたのは、オンライン教育プラットフォームやセブ島留学、マーケティングプロモーションなど、さまざまな事業を展開する株式会社AHGS代表取締役の早川さん。AHGSは感謝しあえる組織作りを目指し「世界一、社内でありがとうがあふれる会社へ」をスローガンに掲げ、インサイドセールス事業を運営しています。インタビューでは独自の研修ノウハウを持つ同社が、どのようにプレイヤーやマネージャーを育ててきたのかに迫ります。

海外含め4拠点で運営するインサイドセールス事業

──まずインサイドセールスの事業内容について教えてください。

現在は池袋と沖縄、長崎の壱岐、フィリピンのセブ島にインサイドセールスの拠点を持ち、大手クライアント様の課題解決やサポートを行う事業を行っています。顧客はBtoBで、店舗様や企業様の課題を解決するソリューションサービスのセールスが多いです。流れとしては、電話でアポイントを取り、そこからオンラインの対談・商談をする形がメインになります。その中で、私がインサイドセールスの事業全体を管理しており、各拠点にはマネージャーが在籍しています。



──インサイドセールスと言うと、フィールドセールスにホットリードをパスするイメージがありますが、御社の場合だと商談・成約まで行っているのですね。

お申込み完了まですべてWeb商談で行っているところは大きな特徴ですね。オンライン商談で資料をお見せして提案し、問題なければそのままWeb上でお申込みいただくので、Web上で完結しています。

株式会社AHGS 代表取締役 早川諒

フィールドセールスとインサイドセールスの対照的な需要

──御社が感じているインサイドセールス市場の成長性やニーズの変化について教えてください。

コロナの影響で、弊社ではフィールドセールスは厳しくなってきています。一方で、インサイドセールスはお客様と直接会うことなく、ダイレクトに営業ができるので、成長性を明確に感じています。

雇用において、インサイドセールスは伸びている職種です。電話やメールを駆使し、どこでもできる営業スタイルのため、この状況下でも在宅でできる仕事として求職者が増えています。顧客からしても、直接訪問されるよりも抵抗なく受け入れやすいですからね。現在弊社でも、在宅のインサイドセールススタッフも増やしているところです。

コロナが流行する前は100名だったスタッフが、現在は200名以上に増えていて、スタッフの数も業績も伸びている状況です。



──インサイドセールスの各拠点に違いはありますか。

業務内容は同じですが、拠点によって属性が違います。それには弊社の採用戦略が関係しています。弊社では英語教育の事業も行っていて、沖縄やセブ島に関しては、インサイドセールスの仕事をしながら英語を学んでスキルアップしたいという方を採用しています。

長崎の壱岐に関しては、弊社が離島への移住のサポートをして地方創生に貢献していく活動もしているので、離島暮らしに憧れがある方や地方移住をしてみたいという人が多く集まっていますね。



──御社が選ばれる理由はどのような点でしょうか。

先述のとおり、弊社には、「英語を学びたい」「海外へ行きたい」という夢や挑戦したい思いを抱えているメンバーが多く、それが強みにつながっています。実際クライアント様は、「そのように頑張っている人たちに仕事を出したい」と応援してくださる方が多いのです。当然、クライアント様の課題解決を弊社が支援し、それに対しお金をいただくという関係性ではありますが、弊社スタッフが挑戦する機会を提供してくださり、一緒に夢を後押ししてくださっているパートナーとも言えるのではないかと思います。

株式会社AHGS 代表取締役 早川諒

マインドセットから始める研修

──御社の研修内容について教えてください。

起業後、さまざまな研修を試した結果、最初にマインドセットを抜きにテクニックを教えても意味がないことに気がつきました。そのため、入社したタイミングで、まずは会社のビジョンと本人のビジョンを結びつけるところから始めています。

具体的には、はじめにトーク練習として自己紹介をしてもらいます。自分という商品を売り込む想定で、3分間ぴったりで自分の魅力を最大限伝える練習をしてもらいます。自己紹介をすることでいい感じに緊張や不安が解け、自分を抵抗なくオープンにできます。

3分の自己紹介の後、2人1組で行う練習では、音量を大きくした音楽を流しながら行います。ボソボソ話したら聞こえない状況で自己紹介することで、自己紹介以前とは顔つきが変わりますし、マインドがオープンになります。結果的に、仲間意識を育むこともできるので、離職の抑制にもつながります。



──自分を商品だととらえて行う自己紹介は中々大変そうですね。

普通に自己紹介してもらうだけだと、おそらく20秒程度で終わってしまいますよね。そこで、しっかり考えてから3分間のトークをすることで、セールスに必要な話し方を感覚的に学ぶことができます。

自己紹介で話す内容として、「どのようなストーリーがあり、夢があり、ここに来た目的があり、将来の展望があり」というのは、お客様へのセールスで話すこととまったく同じなのです。ただ「買ってください」と言うだけでは、商品の魅力は伝えられず、お客様の心は動きません。導入していただくことによってお客様にどんな未来が示せるか、それを伝えるのがセールスの根本だと思いますので、そこをまず学んでもらうのがこの導入研修です。



──メンバーの中で、インサイドセールスのキャリアを極めたいと考える方もいらっしゃると思います。マネージャーへの昇進に向けた研修などがあれば、お聞かせください。

プレイヤーとしてやっていくのか、マネージャーを目指すのかで社内のキャリアアップ方法は異なります。プレイヤー向けの研修は定期的に現場で行われていますが、マネージャーを目指す方に対しては、別途私から直接、マネジメント研修をしています。

また、管理職ポジションについては、コミットメント制度を導入しています。どんなに数字が良かったとしても、やりたい人にしかやらせないという大方針があるので、本人が手を挙げないかぎり、どんなに優秀な人でも管理職を任せることはありません。

このコミットメント制度では、コミットメントシートに「あなたが昇進することで今の組織が得られる変化や利益、メリットは何か」という話を5ページにわたって書いてもらいます。そのように、実績とコミットメントが両方あって初めて昇進できる、という制度なので、まずはコミットメントをしてもらうところから始まります。

直近2年ほどは、コミットメントしてくれるメンバーが多くて「今回、1人昇格者出したいな」といった状況に対して、5人以上がコミットしてきてくれていますので、そこから選ばれていきます。



──増えた理由はどのようなものでしょうか?

最初の頃は昇格に消極的なメンバーがほとんどでしたが、「私も元々は英語を勉強したくてAHGSに入ったけど、そんな私が3年経って、今マネージャーを任されていて、やりがいを持ってやっているんだよ」などと部下に語ってくれる管理職が増えました。その結果、次から次へと手を挙がるようになっていきました。やはり、目の前に憧れの存在が、頑張って仕事をしている姿を部下に見せてくれているのが一番の要因だと思います。

株式会社AHGS 代表取締役 早川諒

独自の仕組みやシステムでKPIを管理

──KPIやKGIなどの、実際に数値で求められる部分は、どのような点でしょうか。

クライアント様からは、1件あたりいくらで商談や実際の契約に至ったのかを評価していただくことが多いですね。もう少し細かく言うと、1日あたり何人のお客様と話をするのか、というアタック数があり、そこから商談率や申し込み率を出しています。あとは見込みのお客様の数を時間帯ごとに管理して、どう再アプローチしていくのかも、すべて定量的に細かく管理しています。



──KGIやKPIの管理方法について教えてください。

弊社独自の社内システムを使用し、全プレイヤーの全目標とそれに対する実績が毎日確認できる状態になっています。そして週次で報告会があり、1週間に1回その数字が目標に対して進捗が乗っているのかいないかを判断します。進捗が乗っていないのであれば、何をどのように改善するのかを考え、具体的なアクションを決めるためのミーティングも行います。

私の経験上、月間目標を立てるだけだと、月中にはギャップが出てしまったり、思い通りにいかない部分が出てしまったりします。そこで部署の目標管理を週間に変えてから、業績が伸びたのは明らかでした。その経験から「目標は週間で管理せよ」というのが、弊社のマネジメント手法になっています。



──目標と進捗に大きくギャップがあった場合は、どのように改善していますか。

毎月20日までに目標修正を行うようにします。流れで言うと、月初に会社としての当月目標が確立し、拠点ごとの目標や部署の目標、各プレイヤーの目標などが決まります。これを月に1回修正できるようにしています。その期日が20日です。そのため、20日の時点で各プレイヤーに、今月の目標に対する実績が大きく離れている場合は下方修正してもらい、その再設定した数字を追っていく形になります。



──お客様に契約更新をしてもらうために、どのようなアプローチを行っているのでしょうか。

レポート報告会を定期的に行うようにしています。KGIやKPIをしっかりと擦り合わせた上で、目標に対してのパフォーマンスをレポート化したり、実際のユーザーの声を拾ってまとめたりして、定期的にシェアさせていただいています。ただ「売ります」ということだけではなく、クライアント様の今後の商品開発や企画に関しても役立つような情報を提供することが大事ですね。

株式会社AHGS 代表取締役 早川諒

人に感謝し、人のために頑張れる組織を作っていく

──マネジメントで苦労している点や、やりがいについて教えてください。

やはり人なので、気持ちにも波があるところ、教えても思った通りに成長しないこと、離職者が出てしまうことなどは、弊社に限らずマネジメントの苦労する部分です。

一方で、人のために頑張れる組織を作っていくことで、お互いが感謝しあえるところが、やはり1つの大きなやりがいだと思います。弊社の今年のスローガンも「世界一、社内でありがとうがあふれる会社へ」ということを掲げています。

インサイドセールスの場合、特に新規顧客の獲得ではエンドユーザーから営業スタッフが直接その場で感謝のお言葉をいただく機会というのは正直なところ、あまり多くありません。もちろん、あとで感謝のお声を頂ことはたくさんあるのですが。そこで、営業スタッフには、まずは社内でどれだけお互いが感謝を伝えあえるかどうかという点を、かなり重視しています。ですから弊社はインサイドセールスに携わる会社の中でも、人に感謝される機会が、特に多い会社ではないかと思います。

また、弊社内では毎年1回、Web上で「ありがとうを伝え合う」というイベントを開催しています。ありがとうカードを自分が感謝を伝えたい社内の人たちに贈れる仕組みを制度化しています。その他にも、「AHGSオリンピック」というイベントがあります。これは全員が全員を採点しあう制度で、数字で表せないものを評価することが目的です。「人に感謝をしながら仕事をしている」とか「どんな時もサボらず頑張っている」などの定性評価ですね。これは直接人事査定に紐づくことはなく、純粋にみんなから評価が高かった人を表彰し、讃えるという文化です。

マネージャーが結果を出すために必要な5つの要素

──現場のマネージャーから上がってくる課題には、どのようなものがありますか。

離職やコミュニケーションについての課題が大きいですね。頑張って教えていた子に「辞めたい」と言われてしまったとか、どれくらいの距離感で接するべきなのかわからないなどです。
やはりマネージャーも、部下との関係性が今の仕事の満足度に大きく影響しているように思います。部下と良い関係を築けている管理職は楽しそうに仕事をしていますし、数字も良いですね。良いチームワークを作り上げることが、本当に1番苦労している部分であり、やりがいだとも感じています。



──マネージャーにとって必要なスキルや、意識している点について教えてください。

「物事を細分化して分析できる力」はとても大切だと感じています。実際に、弊社ではインサイドセールスでプレイヤーが結果を出すために必要なことを5つの要素に落とし込みました。

1つ目が「文化」で、会社や部署の数字を追う姿勢や空気などです。2つ目は「トーク」。3つ目がアプローチ方法を定めるための「リスト」。4つ目が、KPI、KGIなどの数値を分析する「データ」で、5つ目が「マインド」です。この5つが揃えば、必ず結果が出ることを、社内では伝えています。

さらに、この5つから要素を細分化しています。例えば「トーク」であれば、結果を出せるトークスクリプトがそもそも用意できているか、そのスクリプトに最新のエッセンスやノウハウが詰め込まれ、成功事例・失敗事例が反映されているのか。そしてそのスクリプトを活用して、どのようなトークの進め方ができるか、話すテンポや抑揚をつけられるか、お客様からの質問への的確で説得力のある返答ができるか、などですね。

これにもとづき、結果が出ないと悩んでいるチームやプレイヤーには、1から原因を探るのではなく、この5つの中でどれが悪いのかを分析するように教えています。

こういう細分化したものをプレイヤー一人ひとりチェックして、できていないところを改善させられるか、できている部分を評価できるか、というのがマネージャーにとって重要なスキルです。

株式会社AHGS 代表取締役 早川諒

インサイドセールスで培う力は、すべてのビジネスに通ずる

──インサイドセールスへ転職を考えている人に向けて、アドバイスをお願いします。

1番に伝えたいことは、「インサイドセールスは絶対にやったほうがいい」ということです。インサイドセールスで培う力は、全てのビジネスに対し活用できる、汎用性の高い力だからです。

例えば、弊社で言うと、教育事業に関しては完全にWebマーケティングがメインですが、セールスで泥臭く物を売るのは嫌だから、教育事業やWebマーケティングのような一見「イケてる」事業をやりたい、と安易に考える社員には、それでは通用しないよと伝えています。

Webマーケティングでも、根本はインサイドセールスで培う力がないと活躍できません。結果を出すためには、LPの構成や文言が重要です。具体的には、どのようなタイトルをつけるのか、SEOでどう成果を出すのか、お客様の心を惹きつける順番で構成されているか、冒頭の一文で何を書くのかなどですね。たとえ自分で直接作らないとしても、判断ができなければいけません。これを言い換えれば、セールストークが作れないと、Webマーケティングはできないよね、ということになります。

「企画」と言うのは、机上の空論から生まれてくるわけではありません。現場でお客様の生の声やニーズを拾うところから始める必要があります。少しインターネットで検索して「リサーチしました」と言うだけの企画で上手く行くほど甘くはないので、泥臭くやらなければなりません。ですから、セールスで鍛えられるようなデータ管理やマインド面も、大事になってきますよね。



──営業職はポータブルスキルを持つと言われていますが、他の職種にも活かせるのですね。

そうですね。インサイドセールスでは、本当にトーク力、リストを見る力、データ管理能力、マインドセット能力、文化を作り上げる能力の5つの力がつきます。この5つの力は、世の中のあらゆる仕事に対して転用できるものです。

弊社を退職後、独立・起業または転職し、インサイドセールスとは全く違う仕事で結果を出しているような人ほど、「あの時インサイドセールスを本気でやって良かったです」と必ず口をそろえて言ってくれるんですよね。

そういってもらえると、私もこの仕事をやっていてよかったと思います。やはり今この瞬間の自分が、5年後、10年後の自分をつくるから、今目の前の仕事を全力で頑張ろうねという話をしていますね。

インサイドセールスで経験を積んで実績を上げれば、この先また何か他のことにチャレンジしたいとか、他の職種に転職したいと考えたときにも、100%役に立つと私は信じています。

マーキャリ 編集部

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マーキャリ 編集部

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