IT統合管理ソフトウェア『AssetView』や、名刺管理・営業支援ツール『HotProfile』などを開発・販売する株式会社ハンモックの高田 知世子さんへのインタビューを行いました。営業が強いという同社のなかで全く未経験の状態から、おひとりで全社のマーケティングを担当されている高田さん。手探りの状態から同社のマーケティングを創り上げてきた道のりと、マーケティングの醍醐味を聞きました。
*現状のマーケティング活動概要と課題
*「自分で決める」ことの積み重ねが今の自分に繋がった
-現在企画部ではどのような業務を担当されているんですか?
高田さん(以下、敬称略)
当社には事業部が3つあり、事業部ごとに戦略担当がいます。企画部としては、彼らが「これをやりたい」といったことをどう実現していくかを考え、実行していくことがミッションです。そのため定常的な活動はなく、その時その時で依頼があったもの、企画部としてやるべきだと判断したことを業務として行っています。具体的には展示会の運営やセミナー企画、集客、コンテンツマーケティング、動画の制作、MAやSFAの運用ルール作り、など。オーダー元は各事業部の戦略担当だけではなく、社長の「アービー(AssetViewのキャラクター)が踊る動画を作る」という要望に対して具体的なイメージをヒアリングして、着られるタイプのぬいぐるみを作る、といった業務も企画部で担当しましたね。
-ぬいぐるみもですか!とても幅広い業務を担当されているんですね。
高田
はい。企画部としての業務は大きく変わっていないのですが、私個人の業務は年々幅広くなっています。もともと企画部には現在事業部付の戦略担当メンバーも所属していたのですが、「事業部側の発想に立って仕事を進めていくべき」という会社の方針により3名が企画部から異動、実質マーケティング企画を行うのは私一人になった、という経緯もあります。
-おひとりで全社のマーケティングを推進していくとなると、高いレベルでマーケティングのプロであることが求められると思います。高田さんは、ずっとマーケティング畑にいらっしゃるんですか?
高田
いえ、私が2009年に当社に入社した当時は、業務部門のアシスタントとして電話対応や見積もり作成、注文書の処理など営業サポートに従事していました。2012年に企画部に異動し、マーケティングについて何も知らない状態から業務が始まりました。
-そのような状態から、どうやってマーケティングの知見を深めていったのでしょうか。
高田
最初はとても戸惑いました。業務部門ではやるべきことが明確に決まっていたのに対し、企画部の仕事は自分自身で考えなくてはなりません。当社の企画部には、事業部から「こんなことやりたいんだけど…」という“ふわっ”とした依頼が来ます。例えば、「今期リードが足りないんだけど、何か考えて!」という依頼です。それに対して、どのような状態のリードがほしいのか、どんなセグメントのターゲットなのか、など必要な情報を自分で項目化して選択肢を作り、事業部にヒアリングして事業部の意図を明確化していく、ということを積み重ねてきました。 特に重要視したことは、自分で決める、ということ。 依頼をしてくる相手は、いつも必要な情報を最初から全てくれるわけではありません。必要な材料を効率よく得ることを求めていった結果、自分なりの仕事のやり方を身に着けてきました。 また、マーケティングのノウハウを得るために、広告代理店やメディアなど、意識して外部の方とたくさん会うようにしていました。彼らは他社の事例や最新のトレンド情報を豊富に持っています。 分からないことは「分からない」と素直に伝え、彼らに相談することを通して、マーケティングについてのノウハウを自分の中に蓄積していきました。当時大切にしていた「自分で考えること」、「マーケティングの知見を持っている人を味方につけること」が、今の自分を作るうえで欠かせないものだったと感じています。
*マーケ活動成功の定義は、『会社がマーケに求めている貢献』の徹底追及にあり!
-手探りの状態からマーケターキャリアを築いてきたとのことですが、マーケターとしての自信に繋がった体験があれば、聞かせてください。
高田
企画部に異動になってから2年目の頃に開催されたIT weekで統括責任者をやりきったことが、マーケターとしての一番最初の成功体験です。 当社には事業部が3つあるため、3つのゾーンに分かれてそれぞれブースを出展していました。それらの出展をすべて取り仕切る責任者に指名されましたが、「マーケティングの経験も浅いのに、どうしよう・・・」というのが、その当時の正直な思いです。 とにかく漏れがないように、滞りがないよう進めることに必死で、会期前はとても不安でした。 そんな思いの中でIT weekを迎えましたが、結果は大成功。 社内のメンバーからも「よく頑張ったね」と言ってもらえました。 そこで初めて「自分、マーケターとして頑張ったな」と実感を持てたことを覚えています。
-マーケティングの「成功」の定義化は難しいと伺います。御社では、成功をどのように定義づけているのでしょうか。
高田
当社は営業主体の会社ということもあり、基本的には「売り上げにいくら繋がったか」が定義になります。以前はマーケティング活動の効果測定の定義がなく、展示会に出たり、コンテンツを作っても、経営層からは「で、売り上げにはいくら繋がったの?」と言われていました。 そこで取り組んだのが、商談ソースの見える化です。それ自体はSFAに『商談ソース』という欄を作り、商談化した案件に対して営業に商談ソースを入れてもらう、というシンプルなものなのですが、大きな効果がありました。 マーケ施策から売り上げに繋がった案件を継続的に追えるようにすることで、『前回実施した時の成果』を受注件数、受注金額で見られるようになり、マーケティング企画の説得力を高められるようになったんです。実際には商談ソースは何かひとつではなく、展示会やパンフレット、セミナー、営業力など複合的な要因があるため、この定義を決める時はとても悩みました。しかしマーケティングに売り上げへの貢献を求める当社には、この形が一番フィットしていると感じます。
*マーケターとしての野望、ゴール
-マーケティング未経験から今では自分自身で企画立案、実行をされるまでになった高田さんですが、今後のマーケターとしての夢や野望を聞かせてください。
高田
『売れる』マーケター、ですね。 例えばメールマーケティングを通して、こちらから送ったメールに対してお客様からレスポンスが返ってくることがあります。このように、お客さんに近い距離でコミュニケーションが取れると、マーケティングの活動で直接売り上げを作っていけるようになるんじゃないか、と考えています。売り上げを常に意識しながら活動し、マーケがこれだけ会社に貢献している!という事実を明確に示せる。それが、私の考える『売れる』マーケター、です。
*マーケターに求められる人材要件、これからマーケターになる方へ一言
-高田さんは、マーケターに求められるスキルやスタンスを、どのようにお考えですか?
高田
自分が思っていることを絵や文字で他の人が分かるように表現する力、人が思っていることを絵や文字で表現してあげる力がとても大切だと感じています。 先ほども言った通り、企画部には“ふわっ”とした依頼が飛び込んでくることがとても多いです。そのような依頼の意図を汲み取り、具体的にどう企画や活動に結び付けることが出来るか。マーケティングの仕事には、そのような力が求められます。 私自身、最初はそのような環境にとても苦労しましたが、意図の汲み取りと実現性の高い企画への具体化を何度も繰り返す中で、「そのスキルに関しては誰にも負けない自信がある」と言えるようになりました。
-最後に、マーケターを志す方へ、メッセージをお願いします。
高田
マーケティングという仕事は、業務範囲が広く、イメージする業務内容が広いので「いろいろやってみたい!」という人にとっては面白みのある仕事だと思います。営業は売り上げがゴールですが、マーケティングはゴールも自分で決められるため、やればやるだけ面白い、という魅力を感じています。もちろん、大変なことも多いです。ですが、自分で考えて考えて考え抜いて、決めて、新しく創っていく、という楽しさは本当に、何物にも代えがたいものがあります。
-マーケターの魅力を生き生きとした表情でお話しして下さった高田さん。本当にお仕事を楽しんでらっしゃることが分かりました。本日はありがとうございました!