近年、機械学習、AI技術の進歩が目覚ましく、業務の効率化やコスト削減のためにAIを導入している企業も増えているようです。ミスなく圧倒的なスピードで情報を処理できることからIT業界では特に注目を集めているAIですが、IT業界に従事されている方(WebディレクターやWebデザイナー)であれば、「AIに自分の仕事を取られてしまうのではないか」「仕事の一部分をAIと分業することになるのではないか」といったことを懸念されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
また、これからITやWeb系に挑戦してみたい学生や新卒の方は、業界全体の将来性を不安視されるかもしれません。今回は、AIが台頭する未来を見据えたうえで、Webディレクターにこれから求められるスキルや将来性について考察していきたいと思います。
Webディレクターとは「ウェブサイトの総監督」である
Webディレクターの将来性を考える前に、Webディレクターの仕事内容を振り返ってみましょう。Webディレクターは発注主であるクライアントの要望を汲み取り、それを実現するために必要なものすべてを用意する責任を持ち、納品を行う立場にあります。
クライアントがWebサイトを作りたい目的、達成したい事柄、Web運用プランなどをヒアリングし、それらを満たすためのWebサイトの開発設計、プロモーションプランを作成、予算・スケジュールを出した上でクライアントとの合意形成を行います。そこから、Webサイトの規模にもよりますが、ライター、デザイナー、エンジニアなどのクリエイターをアサインし、予算管理・スケジュール管理などの進行管理までを担当するケースも少なくありません。Webサイトの設計から、実制作までの進行管理と納品までの責任を負う、「Webサイトの総監督」がWebディレクターです。
Webディレクターに求められるスキルとは?
ここまでお話ししたようにWebディレクターは多岐に渡る業務プロセスを任せられる立場にあり、ディレクションふくめ様々なスキルが求められます。以下に、代表的なものを挙げます。
・クライアントから提示された課題を解決する企画力
・企画を正しく、面白く提案書にまとめる企画編集スキル
・提案書をクライアント、デザイナーやライターなどクリエイターに正しく伝えるコミュニケーション力
・日々進化するWeb業界にアンテナを張り、先読みするスキル
・コピーライティング、デザイン、UI/UXを目利きできるスキル
・プロジェクトを成功させるため、メンバーをまとめあげるリーダーシップ、マネジメント能力…etc
挙げればキリがないほど、幅広いスキルが高いレベルで求められます。これから目指したい人にとっては敷居が高いように感じるかもしれませんが、反対に、自己研磨に貪欲で、飽き性な人の方にはマッチする職業かもしれません。実際にWeb制作会社の求人募集を見ても、上記のように専門的なスキル求めらていることがわかります。
AI時代、Webディレクターに将来性はあるのか
これまでの内容を踏まえたうえで、AI時代にWebディレクターは生き残れるか?ということについて考えてみます。
野村総研と英オックスフォード大学のオズボーン准教授らで行った共同研究によれば、「日本の労働人口の約 49%が、技術的には人工知能等で代替可能」とされていますが、一方で「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」とも、結論付けられています。(参照:NRI未来創発 ニュースリリース)
AIは正解が決まっている、何らかのルーティンあるいは比較的、反復作業が多い業務を置き換えるところから普及していく、とも言えるでしょう。
前述したように、Webディレクターは、市場の動向、ビジネスモデル、将来の展望をヒアリングし、クライアントが置かれている状況を理解した上で、解決すべき課題を洗い出し、それらを解決できるWebサイトを構築する。その中でクリエイターに正しいコミュニケーションを行い、限られた予算の使い方を考え、スケジュール内にWebサイトを公開する。これらの業務プロセスはルーティン業務の対極にあり、とてもすぐにAIに簡単に置き換えられるとは考え難いです。
技術の発達により、ディスプレイ端末がVRに代わるなどの技術的な変化は生まれ、Webディレクターという言葉はいつかなくなるかもしれませんが、トレンドを正しくつかみ、クライアントの要望を実現できる本質的なスキルを身に着けることができれば、職に困ることはないでしょう。そういった観点でも私は、Webディレクターという職業は将来性があると考えます。