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マーケティングのフレームワークとして知られる「ファイブフォース分析」。よく3C分析などと使われる業界分析ツールです。この記事では、事例を用いながらファイブフォース分析を解説していきます。
ファイブフォース分析とは?
アメリカのハーバードビジネススクールの教授、マイケル・ポーターによって提唱されたもので、英語表記は5 Forces Analysis。業界の収益性を決める「買い手の交渉力」、「売り手の交渉力」、「競争企業間の敵対関係」、「新規参入業者の脅威」、「代替品の脅威」の5つの競争要因から業界を分析するフレームワークです。彼の著書、「競争の戦略」で幅広くビジネス界に広まりました。
新たな事業をスタートする、新ブランドを立ち上げるといった時に、参入する業界で自社は収益を上げていけるか。または、どうすればその業界で収益を上げられるか。を測るのに適した分析ツールです。提唱されてから約40年ほど経過しますが、大企業、中小企業問わず、活用されています。
ファイブフォース分析のやり方
5つの要因をそれぞれどのように考える必要があるか、事例を交えながら解説します。
買い手の交渉力
「買い手」とは、商品やサービスを販売する業界のこと。例えば、私が農業を始めて、自分の栽培した農作物で生計を立てたいとした場合、その農作物を販売してくれるスーパーなり市場が買い手に該当します。「交渉力」は、自分とスーパーや市場の仕入れ担当(買い手)とのパワーバランスを示しています。簡単に言えば、自分の売りたい価格で買ってもらえる市場かどうかということです。農作物の中でも具体的に「玉ねぎ」だったとします。自分としては1kg1,000円で卸したいと思っていても、そのスーパーや市場が仕入れ先を豊富に持っていて、他のところからは1kg800円で購入できる状況があれば、1kg1,000円ではなかなか売れないでしょう。この場合、スーパーや市場(買い手)のパワーが上回っており、販売は価格競争になりがちで、収益としての魅力が低いという考え方ができます。
玉ねぎでは魅力が弱かったとしても、ほかの野菜はどうか、果物はどうか。と考えていく中で、買い手よりも自分のパワーが強い=自分の希望の価格で販売しやすいものが見えてくるでしょう。
売り手の交渉力
「売り手」とは、部品や資材を調達する仕入れ先のこと。例えばギターを製造する業界で言えば、ボディとなる木材、弦や弦を固定する部品を作るメーカーが売り手に該当します。「交渉力」は、ギター製造業界と部品や資材を作るメーカーとのパワーバランスを示しています。どれくらいコストを抑えてギターが製造できるかなどを測る領域です。極端な話ですが、弦を作るメーカーが世界に1社しかなければ、仕入れる側はメーカーの示す価格で買うほかありません。もしくは、自分たちで製造することを選ぶかです。
一方で、弦を作るメーカーが世界にごまんと存在していたらどうでしょうか。1社の独占市場と比較すれば、価格面やサービス面などのさまざまな点で仕入れる側(ギター製造業界)のパワーが強いので、コストを下げたり、納期の調整といった交渉がしやすくなり、ギター製造業界への参入は魅力的であると考えられます。
競争企業間の敵対関係
ライバルとなり得る企業のシェアや動向を把握し、参入して収益が見込める業界なのかを測る領域です。例えば、パソコン業界に新規参入するとした場合、パソコンの見た目やスペックは各社似通っていて、どこのメーカーの商品を買っても使用感に大差ない、いわゆるコモディティ化がされている市場として知られています。そういった市場で販売数を伸ばす時は価格競争になりやすいため、上段でご説明した買い手と売り手のバランスが良かったとしても収益の期待値は薄く、魅力は少ない業界であると考えられます。新規参入業者の脅威
業界に新規参入しやすいかどうかです。例えば、ネット販売のビジネスなんかは新規参入しやすいので、自分でビジネスを起こすときの参入障壁が低くて助かる一方、企業でなく個人でもどんどん入ってこれる環境なので、その分販売数が分散されやすいと考えられます。参入するのに特別な知識やスキル、設備投資が必要といった、簡単に参入できない参入障壁の高いものはこの項目での魅力が高い業界と言えます。
代替品の脅威
代替品、つまり代わりのきく似た商品やサービスがあるかどうかです。例えば、本屋やCD屋といった業界でいうとスマートフォンのアプリなどが代替品と考えられます。本やCDそのものを購入しなくても、スマートフォンがあれば同じものを得ることが可能だからです。代替品がある=消費者の選択肢が充実している業界は参入の魅力が少ないと考えられます。上記の要因に加え、「市場の成長度合い」や「差別化のしやすさ」、「トレンドの変化のしやすさ」も一緒に考えるとより効果的です。
今や世界中の多くの人の日常生活に欠かせない生活必需品のひとつであるスマートフォンは市場のニーズが高く、売れ行きが好調なものですが、普及率の高さを考えると新規参入して顧客を得るためには、他社からの乗り換えユーザーを中心に狙うことになるでしょう。
使用感やデザイン、スペックでなにかしら差別化が打ち出せなければ、ユーザーの多くは使い慣れたシリーズに買い替えることが予想されます。そうなった場合、販売数を伸ばすためには価格での優位性を示さなければ顧客獲得が難しくなりがち。参入する業界としての魅力は低いと考えることができます。