• 2019/09/11
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「BADHOP」のマーケティング戦略と360度ビジネスの先駆者「矢沢永吉」

  • 森田 旭洋
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画像出典:https://badhop-breath.com/profile/

BADHOPという川崎出身の8人組HIPHOPグループが話題になっているが、ご存知だろうか。
彼らを象徴する歌詞に
「川崎区で有名になりたきゃ 人殺すかラッパーになるかだ」
とある通り、地元川崎での貧困や先輩とのしがらみがある環境の中、不良として育ちHIPHOPによって更生し成り上がった。

昨年11月には、HIPHOPグループとしては史上最年少の23歳での武道館公演を実施。
7000席あるチケットは3時間で売り切れるなど、アメリカのHIPHOPのトレンドジャンルであるトラップのリズムに、彼らのリアルなメッセージが重なったラップが、若者を中心に熱狂的な支持を得ている。
最近では、ダウンタウンの松本人志が出演するTBSの人気TV番組「クレイジージャーニー」において、
元ギャングのHIPHOPアーティストとして2週連続で特集を組まれ、さらに多くのメディアでもとりあげられている。

BADHOPのマーケティング戦略

そんな活躍が目覚ましい彼らの中心にいるのが双子の兄弟、YZERR(ワイザー)とT-Pablow(ティーバブロウ)。
中でもマーケティングに長けていると言われているのがYZERRだ。
高校生ラップ選手権というTV番組のラップバトルの大会において、兄弟ふたりともが優勝し、キャリアのきっかけとなっているのだが、その時のエピソードとして、普段着で参加しようとしたT-PablowにYZERRが40万円ほどかけて服を新調させたという逸話がある。

YZERRは次のように振り返っている。
“その40万円は後々、何千万~何億円になると思った”

出典:https://amebreak.jp/interview/7207/2
こうした自己ブランディング的な感性を持ちつつ、
その後も、戦略は大胆に行われていく。

例えば、
・無料ダウンロードのミックステープ(2016年3月)
・無料配布CD(2016年9月)
・大阪、川崎での、ワンマンフリーライブ(2016年11月、12月)


などがある。マーケティングやプロモーションについてずっと勉強していたというYZERRは、まずは間口を広く認知を高める戦略を一貫して行ってきている。
”言い方は悪いですけど、僕たちは音楽を『売ろう』とは思ってないんです。音楽を通して知名度を上げていけば、それに付随する商売がお金になるというのが分かってるんで”

出典:https://amebreak.jp/interview/7207/2
そのように語るYZERR。これらはアメリカのHIPHOPアーティスクト、チャンス・ザ・ラッパーが無料の音源リリースで知名度を高めグラミー賞獲得まで上り詰めたのと同じやり方だ。

BADHOPと360度ビジネスの先駆者、矢沢永吉

そして、彼らの言動や軌跡を振り返ると、日本では矢沢永吉(以後、矢沢)とその姿が重なる。
5万円をポケットに入れただけで広島から東京へ出てきた矢沢も貧困な環境からスターへと成り上がった。
当時の不良の音楽(ロック)、成り上がり方、ブレない姿勢に多くの若者が共感し、ロック・ソロアーティストとして初の武道館公演も行った。また当時の音楽業界では珍しく、自身のビジネス的な権利に敏感だったため、

・自ら音楽出版社を設立し、著作権を管理
・グッズ販売なども自社で管理し肖像権を守る


など、音源販売に頼るだけではなく、権利を持つことによって収益を得る
「360度ビジネス」の先駆者とも言われている。

BADHOPも同様に、大手の事務所には所属せず活動を行ってきている。そして、両者はともに不良に支持される音楽とバックボーンを持ち、ビジネス的なセンスをもつことで、成りがってきたのだ。

「俺は良いけど、矢沢がなんていうかな」という矢沢の名言にあるように矢沢は自身を客観的に見ている。そして、40万円で服を揃えたBADHOPもどう見られているか、どう見せるかを考えてきた。自分や対象を客観的に捉えることで、どう進むべきかという意思決定の基準ができるのだろう。

今後もBADHOPは何か大きいことをしてくれる。そんな期待を抱かせるのも彼らの仕掛けのひとつなのかもしれない。

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