*マーケターにとっての「共通の言語」とは?
これは、SOWT分析でもランチェスター戦略でもなんでも良いのですが、要するに未経験から独学なり、誰かに着いて行ったりして「マーケティングを相応に学んできた人材」というのは、上司(私)から見ると「差」があります。ここでいう「差」とは、能力の優劣のことを指すのではなく「知識の偏り」という側面です。
この「偏り」という側面がある以上、同じ内容で何かしらのディスカッションを行っても、ある人間は「カスタマージャーニーマップを作ろう」と言い出し、あるメンバーは「3C分析をしましょう」となったりします。
なぜかというと、各人が頑張っているので「自分の知っている武器」で最大限の成果を出そうとするんですね。彼ら、彼女らの思惑としては、当然のはこびなのですが、なまじ多くの「知識だけ」を先に詰め込んでしまったがゆえに「使い方」の方がコントロールできていないことが多いです。
この状態で案件を進めると、自分の考え方を採用された人間はモチベーションが上がるでしょうが、他の人間がついていけなかったり、モチベーションが下がったりします。案件にしてみても、重視すべきポイントを「どれにするのか?」をそもそも決められなかったりで、最悪「結局案件が遅々として進まない」とか、「チームとしては全く連携が取れていない」なんてことも起こってしまいます。
*チームとしての「統制」を作るために「何をすべき」か?
ですから、私が配属されたときに最初に行うことは「この考え方と、この分析手法を、この目的で用いて、事を進めよう。現時点では、この手法を正としよう」と、チーム内で決めてしまっています。それが何の手法でも構わないのですが、大事なのはここで「やり方をそろえる」ということです。この行為は「同じOSをメンバー全員の脳にインストールする」という意味を持ちます。
こうしておけば、ナレッジの共有をするにしても、何かの議論を起こすにしても、かならず全員が「同じルール」で議論を進めることになるので、話がスムーズに進みます。そして、進んでみて「この方法だと詰まるな」となれば、その時に「新しい方法」を全員の頭にインストールしなおせばいいだけの話です。
要は「英語と中国語と日本語で、3人バラバラにしゃべっても進まないでしょう」とか「WindowsとMacOSで互換するのは大変でしょう」というのと、根っこは全く一緒の話です。とくに知識は外から見えませんから、先にメンバー脳内の「マーケティングのOS」をそろえてしまうことで「すれ違い」を未然に防止している…という事ですね。
どうしても、マーケティング部を率いる(それが部長であれ、リーダーであれ)となると、先に「成果を出そう」の方に目が行ってしまいがちですが、そもそも論、「同じ言語で、同じ理解になるようにチームが整っていますか?」のほうがずっと重要です。なぜなら、一度すれ違うと、修正する方がはるかに時間がかかるからです。これから管理職になるマーケターの方は、ぜひ心がけてもらうと、少し、マネジメントが楽になるんじゃないかなあと思います。