テレワークの推進に伴う働き方改革が進むなかで、セキュリティ対策を目的として「VPN」を導入する企業が増加しています。しかし、多くのVPNサービスのなかから、どのVPNを選択すればよいか迷われている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、セキュリティ対策におすすめのVPNを徹底比較します。VPNを選ぶ際のポイントや、導入時のメリット・デメリットについても詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
VPNとは?
VPNとは、「Virtual Private Network(バーチャルプライベートネットワーク)」の頭文字を取った言葉です。日本語に直すと「仮想専用線」という意味があり、特定の人物のみが利用できるネットワークを指します。
通常、インターネットに接続する際には、万全なセキュリティ対策を取っておかないと、第三者から通信内容を傍受されたり、不正アクセスの被害を受けたりする恐れがあります。とくに、近年、企業で取り入れられているテレワークでは、自宅のセキュリティ対策がオフィスに追いついていないことから、上記のリスクが高まっています。
一方、VPNには、「トンネリング」と呼ばれるデータの送受信に仮想トンネルの技術を備えており、外部から通信内容を覗き見される危険性を防げます。在宅勤務やオフィスの外から、社内ネットワークにアクセスすることも増えているなかで、安全なセキュリティ環境を実現します。
VPNを導入するメリット
セキュリティ対策として注目を集めているVPNですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。企業で導入する際に得られるメリットを3つ紹介します。
テレワークの推進につながる
VPNの導入は、企業のテレワーク推進につながります。情報漏洩や不正アクセスなどのリスクが気になり、なかなかテレワークに移行できない企業も多いのではないでしょうか。
冒頭でも解説したとおり、VPNには「トンネリング」によって安全なインターネットの利用が可能です。自宅のセキュリティ対策を強化し、テレワークを含む多様な働き方を進められます。
モバイルデバイスでも安全に接続できる
VPNを提供するサービス内容にもよりますが、パソコンだけでなく、モバイルデバイスからの接続にも対応しています。たとえば、顧客先や移動中にVPNを接続して、社内ネットワークにアクセスする際にも安全です。
とくに、テレワークで働いている従業員にとって、自宅やカフェ、帰省先などで仕事をしたいという場合に役立ちます。場所に依存しない働き方が広がるなかで、セキュリティ対策を強化できます。
低コストで拠点間通信を実現できる
一般的な企業のネットワークでは、特定の拠点同士でしか通信できない専用線を用いていることがほとんどです。専用線でも安全な通信環境を整えられますが、構築時の初期費用や、定期的なランニングコストが発生します。
一方で、VPNは、仮想ネットワークを使用することになるため、従来の専用線と比較して低コストでの導入・維持が可能です。また、本社と支社をつなげるだけでなく、ほかの拠点同士での接続にも対応しています。
VPNを導入するデメリット
VPNは企業のセキュリティ対策に効果がある一方で、デメリットにも気を付けなければなりません。テレワーク向けにVPNを導入する場合に注意しておきたいポイントを3つ解説します。
通信速度が低下する可能性がある
VPNを使ってインターネットに接続すると、通常よりも通信速度が低下する可能性があります。これは、VPN専用のサーバーを経由する必要があるほか、同じサーバーを接続する利用者の過多が原因です。
また、VPNは、時間帯で通信速度が変動することもあるので、接続時の時間にも注意が必要です。通信速度が安定しない場合には、時間をおいて接続したり、ほかのサーバーを使用したりしてみましょう。
一部のWebサイトが閲覧できない
一部のWebサイトでは、VPNを経由したアクセスを遮断しています。Webサイト側の管理者が、VPNサーバーのIPアドレスをブロックしているのが原因で、ほかのVPNサービスでも同様に接続できない恐れがあります。
VPNでのアクセスが遮断されている場合には、通常のインターネット回線を経由してアクセスしなければなりません。どのWebサイトがVPNのアクセスを遮断しているのかを確認し、都度切り替えるようにしましょう。
必ずしも情報漏洩を防げるわけではない
VPNを導入しても、情報漏洩や不正アクセスなどの被害を完全に防げるとは限りません。とくに、インターネット型のVPNとエントリー型のVPNは、インターネット回線を利用していることから、VPNのセキュリティ網を破られる可能性があります。
また、VPN導入時に初期設定を誤り、セキュリティリスクを助長してしまう危険性もあります。VPNのサービスごとに仕様も異なることから、設定する際には十分な注意が必要です。ヒューマンエラーを起こさないためにも、VPNの使い方を熟知し、適切に取り扱える人材を用意しましょう。
VPNの種類
VPNを導入するにあたり、VPNの種類について確認しておくことが大切です。後述する選ぶポイントと合わせて、それぞれの違いを把握しましょう。
インターネットVPN
インターネットVPNは、通常のインターネット回線に仮想のネットワーク環境を構築するタイプです。Wi-Fiによるインターネット環境があれば利用可能で、専用のルーターを準備するだけで構築も難しくありません。
ただし、オープンなインターネット回線を経由することから、セキュリティリスクに注意が必要です。また、インターネットの通信速度が遅くなる可能性もあります。
エントリーVPN
エントリーVPNとは、光回線やスマートフォン向けのLTE回線を使ったVPNのことです。インターネット回線を経由しない「閉域網」に接続する方式を採用しており、インターネットVPNよりもセキュリティレベルの品質が向上しています。
しかし、通信速度は、インターネットVPNと同様で、Webサイトへのアクセスや容量の大きいデータをダウンロードする際に遅延が発生する可能性があります。
IP-VPN
IP-VPNは、通信事業者の閉域網を使い、仮想ネットワークを構築するタイプです。インターネット回線と異なり、MPLSと呼ばれる転送技術を用いることで、セキュリティの強度を高めています。
IP-VPNを構築するためには、通信事業者との契約が必要です。インターネットの通信速度や安全性のクオリティに優れている一方で、コスト面がかかってしまいます。
広域イーサネット
広域イーサネットは、IP-VPNと同じく、閉域網に接続して仮想ネットワークを構築します。接続時に使用するプロトコルに違いがあり、IP-VPNはIP、広域イーサネットはRIP、OSPFなどに対応しています。
また、広域イーサネットは、安全性の高いセキュリティレベルが特徴で、金融機関や個人情報を管理する企業で使われています。
VPNを選ぶ際のポイント
企業でVPNを導入する際は、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。業務に関わるセキュリティ対策や、VPNの使いやすさなど、5つのポイントを順番に紹介します。
インターネット速度
1つ目のポイントは、インターネット速度です。VPNのデメリットで解説したとおり、インターネットの通信速度が低下し、業務に支障が出る可能性があります。
インターネットに接続する目的にもよりますが、20Mbpsの速度が安定していれば、一般的なWebサイトの閲覧や書類のダウンロード、高画質の動画視聴も可能です。無料トライアルを活用し、業務を問題なくこなせる速度であるか確認してみましょう。
同時接続台数
会社全体でVPNを使用する場合には、同時接続台数もチェックしてみてください。VPNのサービス会社によって異なりますが、1つのアカウントで5〜10台の同時接続に対応しています。
また、接続台数に加え、利用可能なデバイスにも注意が必要です。テレワークや外出先からVPNに接続する機会に備えて、モバイルデバイスに対応したVPNだと安心です。
日本語対応
海外のVPNサービスを導入する際には、日本語に対応しているかも確認しましょう。ほとんどのVPNサービスでは、日本語の説明やマニュアル画面に対応しており、英語が読めなくても使用することができます。
ただし、カスタマーサポートも日本語に対応しているとは限りません。VPNサービスを契約する前に日本語サポートの有無をチェックしたうえで、非対応であればGoogle翻訳を使うことも検討してみてください。
使用可能なサーバー数・国
VPNを選ぶ際には、使用可能なサーバー数や設置している国を確かめることも重要です。たとえば、日本から海外のWebサービスを利用したい場合に、特定国のサーバーがないとIPアドレスで弾かれてしまいます。
また、それぞれの国で用意しているサーバー数が多いほど、インターネット速度も安定します。業務で頻繁に海外サーバーに接続することは少ないかもしれませんが、プライベートで利用を考えている方は要チェックです。
ノーログポリシーの対応
ノーログポリシーとは、利用者の個人情報を保護することを目的としたVPNサービスの方針です。VPNを介してインターネットに接続すると、VPNのサーバー側にアクセス履歴や個人情報が記録されてしまいます。
ノーログポリシーを掲げているサービスであれば、利用者の接続情報を保存していないため、情報漏洩の危険性を防げます。業務で安全に使用するためにも、ノーログポリシーを徹底したVPNサービスを選びましょう。
おすすめのVPNを徹底比較
それでは、おすすめのVPNサービスを徹底比較します。テレワークや日常的なセキュリティ対策に便利なVPNを5つ紹介します。どのVPNサービスを選べばよいか迷われている方は、導入時の参考に活用してみてください。
1位:NordVPN
出典:https://nordvpn.com/ja/
おすすめ1位のVPNサービスは、「NordVPN」です。世界60ヶ国に5400台以上のサーバーを用意しており、海外出張や海外駐在中のセキュリティ対策に使用できます。また、1つのアカウントで最大6台のデバイスに接続可能なほか、モバイルデバイスにも対応しています。インターネット通信とVPN接続を隠す難読化サーバーを設置し、第三者による通信傍受を防げます。
2位:ExpressVPN
出典:https://www.expressvpn.com/jp
第2位は、「ExpressVPN」です。ノーログポリシーを掲げているVPNサービスで、利用者のアクセス履歴や登録した個人情報をしっかりと守ってくれます。
モバイルデバイスへの最適化も特徴で、スマートフォンやタブレット専用のアプリは利便性に優れています。30日間の返金対応を実施しているため、VPNを接続した状態での通信速度やカスタマーサポートなどを十分に検討できます。
3位:Surfshark
出典:https://surfshark.com/ja/deal/brand
第3位の「Surfshark」は、セキュリティ対策を重視したVPNサービスです。第三者による通信内容の傍受を防ぐために、「AES 256 GCM」と呼ばれる強力な暗号化技術を採用しています。
また、Webブラウジング中に表示される有害な広告をブロックすることで、誤って悪意のあるサイトへのアクセスを防げます。1つのアカウントで無制限のデバイスに接続できるため、部署やチームごとに導入する際にも便利です。
4位:CyberGhost
出典:https://www.cyberghostvpn.com/ja_JP/
第4位は、「CyberGhost」です。ノーログポリシー、DNSとIPアドレスの漏洩防止、256ビットAES暗号化といったセキュリティ対策を搭載しており、外部への情報漏洩のリスクを抑えられます。
導入時に通信速度やUIの使いやすさが気になるという方向けに、最大45日間の返金保証を提供しています。世界に7800台を超えるサーバーを設置したVPNサービスで、日本から海外のWebサービス、海外から日本のWebサービスを利用する際に役立ちます。
5位:PureVPN
出典:https://www.purevpn.com/jp/
第5位の「PureVPN」は、最大同時接続10台まで対応しています。パソコンはもちろんのこと、スマートフォンやタブレットからの接続も可能で、テレワークにも利用しやすいのが特徴です。
ノーログポリシーを掲げたセキュリティ対策も万全で、ユーザーの行動履歴が保管されることもありません。256ビットAES暗号化を搭載し、インターネット空間における匿名性を維持します。
まとめ
VPN導入は、自社の機密情報や個人情報を保護するために欠かせないセキュリティ対策の1つです。自社でのテレワーク促進につながるほか、インターネット接続時における安全性を構築できます。
多くのVPNサービスがあるなかで、セキュリティ性能だけでなく、通信速度やアプリの使い勝手、同時接続台数などを比較することが大切です。本記事で紹介したVPNを比較し、最適なサービスを導入しましょう。