2021年6月9日、株式会社クリエイティブホープと株式会社エムエム総研の共同で【デジタル営業の未来~分業化における営業の専門性について~】というテーマのオンラインセミナーを開催し、弊社からは、マーキャリサイト運営責任者兼キャリアアドバイザーの河村が登壇した。
今回のセミナーでは、労働人口の減少、採用母集団の減少に反して転職手段が乱立し、良質な人材を計画通りに獲得する、といった採用活動が極めて困難な時代の中で、組織がより効果的に良質な人材を獲得するためにすべきことや、うまく人材獲得を進められている企業とそうでない企業との差について、セールス分業組織での採用のポイントや最新のトレンドを紹介し、デジタル営業の未来について解説した。
参加者の満足度も大変高いセミナーとなった。その概略をレポートする。
なぜセールスの分業化がトレンドとなったのか?
これまでのBtoB有形商材などの売り切り型モデルの場合、営業の仕事は購入してもらうことがゴールだが、サブスクリプション型モデルの場合は、購入してもらうまでは通過点であり、購入後、どれだけ継続してもらえるかがカギとなる。
よって、サブスクリプション型モデルのセールス組織の場合、購入までの生産性を高めつつ、購入後に継続してもらうことの2つにフォーカスする組織を作らなければならないと言える。
転職市場でもSaaS企業への人気が集中
「SaaS企業への人気がかなり上がっておりまして、ビズリーチの2020年の検索トレンドワードでも、2019年に全く上がってこなかった『SaaS』というワードが2020年度ではトップに上がってきています」(河村)
SaaS系企業(サブスクリプション型)は働く人にとってもメリットがたくさんあり、主に以下が考えられるという。
・「顧客にとって本当に有益なサービスを提供したい」という想いを持って働けるため社会貢献感アップする
・専門特化し、特定領域のプロフェッショナルとしてのキャリアを歩める
・分業化して目標が細分化され、ワークスタイルが柔軟になった
出典:https://www.bizreach.co.jp/pressroom/pressrelease/2020/1223.html
デジタルセールス職の採用トレンド
「我々が考える『デジタルセールス』は、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの3職種を主に対象にしています。最近、ニュースなどでもよく目にするキーワードですが、SaaS業界ではかなり一般化しています」(河村)
「企業側としては、良い人材を計画通り"ラクに安く"獲得しようとしても、デジタルセールス分野は市場の母集団がまだまだ少ないです。採用のバーを上げても良質な求職者が来ないなど、大手のSaaS系やメガベンチャーの企業様と話していてもうまくいっていないのが実情です」(河村)
現在、転職手段の乱立から内定承諾率の低下や母集団の低下から良い人材を計画通りに採用できない。また、採用手段・工程が複雑化していることで、採用単価やリソースを投下しないとなかなか採用は難しいという。
では、SaaS企業はデジタルセールス人材の採用においてどこに力を入れているのだろうか。
「経験人材は希少なので、競争が激化していることもあり、法人営業職のIT/無形商材やセールス・マーケティングベンダーの経験者が積極的に採用されています。法人営業職の中でも有形商材やBtoCの営業販売系の人材は企業が積極的に採用していない領域ですが、2022年以降、ここまで層を拡大しないと、事業成長が事業の変革に追いつかない時代が来るだろうと予想します」(河村)
分業組織の推進と事業成長にデジタルセールス職未経験者層の採用は不可欠となるという。
また、経験の有無だけで採用することには、リスクもあるという。
「求職者視点で見ると各業種ごとに業務細分化がされているため、スキル・経験が求職者によって異なるので、経験者という理由のみで採用するとギャップが起こりやすく、ミスが多発します。成功のためには、優秀なマネージャーの存在が不可欠であり、目利きできる人材が不可欠となります」(河村)
人材採用の優先順位
「デジタルセールスの分業組織の成功は、優秀なマネジメント人材の獲得がスタートラインとなります。社内プレイヤーを実行レベルで転換することでは上手くいかないケースが多く、組織や採用成功は、優秀なマネジメント人材をどう獲得するか、がかなり重要になります」(河村)
営業の分業組織やデジタルセールス組織の成功の可否は組織のあるべき像(文化・方針策定)や、目標・指標の策定で9割決まるという持論から、これを理解しているマネージャーの獲得が重要となるようだ。
組織方針、文化形成の重要性
なぜデジタルセールス組織において、方針や文化形成が重要なのだろうか。
「セールス組織の生産性は、過去の経験などから、『活動量だけ』で語りがちな部分が多く、プレイヤーが作業量などの活動量だけを追い求める企業では顧客の役に立てている実感がわかないなどの理由で『顧客のロス』が生じ、結果的に経営全体にも評判・ブランドに傷がつくなどの『経営のロス』につながります。そのことで、現在、とても重要視されている『カスタマーサクセス』の考え方と逆行した活動になってしまいます」(河村)
活動量のみで語ると、優秀な人材は育たず、顧客は離反し、業績も組織も育たない結果になってしまうという。
「Triple Win」の考え方
そこで重要になるのが、顧客にとってのWinを定義し、活動に落とし込んで徹底することだという。
顧客にとってのWinをかなえることで、プレイヤー、経営の3者のWin = 「Triple Win」にもつながる。
「定性的なミッションやビジョンの上で指標・活動目標を設定するという勘所がわかるマネージャー人材の採用が重要です。こういった組織文化が形成できれば、未経験でもプレイヤーが成長する土壌が出来上がるので、未経験者の育成にもつながります」(河村)
自社にとっての「Triple Win」を定義し、求職者に対して自社のデジタルセールス組織について発信し、カルチャーフィットを作ることが重要だと語る。
「通常の採用活動では、全社のカルチャーについて語る企業は多いが、デジタルセールス職・マーケティング職採用におけるデジタルセールス組織のカルチャーの発信が重要だと考えます」(河村)
まとめ
「採用を考える前の土壌の作り方で組織の成功は9割決まります。その後の採用の優先順位として、まず行うべきことはプレイヤーの社内転換よりも優秀なマネジメント人材の採用です。プレイヤーの採用では、経験者層の採用はリスクがあるため、若手未経験者層の採用は不可欠と考えています」(河村)
デジタルセールス組織ができたからといって、顧客の成功を考えるのはカスタマーサクセスだけではなく、実際にはセールスやマーケ組織全体が、カスタマーサクセス文化や思考を持たないと成功しない。
むしろ、セールス組織のマネージャーを起点として、カスタマーサクセス文化を創っていくことが理想と言えるだろう。