この記事では、営業職として活躍していく上で重要なスキル、「ヒアリング力」について詳しく解説しています。これから営業職として就職や転職を考えている人、営業職としてスタートしたばかりの人にとって大きく参考になる内容になっています。ヒアリング力以外のスキルや営業に向いている素質についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
法人営業でも個人営業でも求められるスキルは共通している
営業職には大きく分けて法人営業と個人営業の2つがあります。法人に対して営業をかけるのが法人営業、個人に対して営業をかけるのが個人営業です。「法人」とはビジネスの世界では企業や会社を指します。法人営業とは法人、つまり企業に対して営業をかけるビジネススタイルのことです。一方で私たちが普段買い物をするスーパーや、食事をする飲食店、携帯電話ショップなどは消費者(=個人)向けに事業を営んでいますので個人営業となります。
法人営業と個人営業ではターゲットとする層が異なりますが、営業職として求められるスキルの多くは共通しています。法人営業を行う企業のことをBtoB企業、個人営業を行う企業のことをBtoC企業と言います。 BtoBとは「Business to Business」の略で、BtoCは「Business to Consumer」の略です。BtoB、BtoCはB2BやB2Cと表記することもあります。
営業職に最も重要なスキルはヒアリング力
営業で必要なスキルを1つだけ挙げるとすれば、ヒアリング力だと言えるほどヒアリング能力は営業において必須のスキルです。どんな業種であれ「何かを売る」のが営業の仕事ですので、商材をおすすめしてクライアントや消費者に「売る力」や「説得するためのプレゼン力」が求められるように感じますが、実はそうではありません。
これは普段の生活を思い返すとイメージしやすいです。相手の話を聞かずに自分の話ばかりする人に好感を抱いたり、助けてあげたいと思ったりする人はいないはずです。営業の世界でも同じです。自社の商品を「売ろう売ろう」とするあまり、クライアントのニーズをヒアリングできずに話してばかりの営業職には成績はついてきません。
ヒアリング力とは、相手の状況を理解する力だけでなく、「相手の見えない課題を発見する力」も含みます。クライアントが商品を購入しようとするのは「困っていることが解決できるから」に尽きます。当然のことではありますが必要がないものは購入してくれるはずがありません。相手にあなたが提案する商品に興味を持ってもらうために必要なのは商品をすすめる「話す力」ではなく、相手が気づいていないような深いニーズを探りあてる「聞く力」なのです。営業に求められる「ヒアリング力」以外のスキルも、すべてヒアリングの能力があってこそ活きてくるものです。
ヒアリングの基本
営業職にはヒアリング力が求められます。しかし、「ヒアリング力」、「聞く力」といっても相手の話を聞いているだけでよいわけではもちろんありません。ヒアリング力は、相手のニーズを聞き出す力。相手のニーズに合った商品をこちらが提案できるように、きちんとヒアリングを行うことが重要なのです。
ヒアリングの基本としては、まず「相手を主語にすること」が挙げられます。なかなか成果の出ない営業マンは商品を売ろう売ろうと気が焦るばかり「弊社のおすすめの商品は~」などと、自分を主語にしてアプローチしてしまいがちです。しかしこれはよほど相手と信頼関係を築いていないと通用しません。なぜなら、相手からすれば「どれがおすすめの商品かは興味がない」からです。相手のニーズを引き出すのに、主語が自分では相手から情報を得られません。自分を主語にするのではなく、「最近は〇〇のタイプの商品のご注文をいただくことが多いのですが、御社でもそのあたりに課題を感じていらっしゃいますか?」というように相手を主語にして話をすることを心がけましょう。
また、「商材よりも商材によって得られるメリットを先に話す」のも効果的です。自分の商品を売ることではなく、相手の課題を解決することを仕事だと考えるなら、相手にとって有用な情報から伝えていくのが効果的だと分かるでしょう。営業ツールやロールプレイング(練習)の通りに商談をすすめなくてはいけないわけではありません。相手が聞きたいであろうことから話すのが重要です。
さらに、特に慣れないうちはヒアリングシートを作成することをおすすめします。ヒアリングシートとは、相手から得たい情報を質問項目ごとに分けておき、質問漏れをなくし案件へと結びつけやすくするためのものです。たとえば、「現状」、「困っていること・課題」、「納期」、「予算」、「決済の流れ」といったものを書き出せるようにしておくとよいでしょう。
ヒアリング力のつけ方
相手のニーズをつかみ、適切な提案をするためには、ヒアリングを重視した会話が重要になります。会話のコツは、焦らないことです。会話とは「聞く」と「話す」があって初めて成立します。焦って早口になってしまうだけでも、頼りないという印象を抱かれてしまうこともありますので決して焦る必要はありません。
相手が話し終わるのを待って、こちらが質問する・話すということを心がけましょう。自分がクライアントを訪問してから商談を終えて会社を出るまでをスマホなどで録音しておき、後から聞き返すのも有効です。自分では「わりと上手くいった」と好感触でも、録音したものを聞けばそうではなかったということも多いです。自分のプレゼンを含め会話を客観的に聞くことで、改善点を見つけることもできます。聞く際には声のトーンやスピード、クライアントとの会話量のバランス(自分ばかりが話していないか)に注意してみましょう。
可能であれば営業成績の良い先輩や同僚に同行させてもらい、実際に商談の進め方ややり方を見せてもらったり、ロールプレイングといって上司や先輩に顧客役を演じてもらい、日々の営業と同じ設定でヒアリングを行い、その後に「よかった点」「改善するともっとよくなる点」をフィードバックしてもらったりするとよいでしょう。
おそらく先輩に同行する場合は「思ったより普通だな」という印象を抱きやすくことがあるでしょう。実はそれは当然のこと。先輩はヒアリング能力が優れているから結果を出せているからです。深く考えずに聞くと「普通に会話しているだけなのになぜ成約になるのか分からない」という印象を抱きやすいです。同行する際は、「どのような質問をどういった狙いでしているのか」を確認するという意識で臨むのがおすすめです。
ヒアリング以外に求められるスキル
ここからはヒアリング力以外にあると望ましいスキルを紹介していきます。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングは、特に法人営業において求められるスキルです。論理的思考と訳されるロジカルシンキングは、抱えている問題を分解して整理し順序立てて考えることで結論を導きだすという思考法です。ひとことで言うと「筋道を立てて考えること」となるでしょう。法人営業の場合は、1つのものを購入するまでにたくさんの人を介します。そのため個人で買い物をする際のような衝動買いはありえません。つまりは、感情としてはいくら惹かれていても商品を購入することで課題が解決すると思ってもらえないことには購入には至らないのです。企業では感情よりも理論が優先されますので、法人営業では「なぜこの商品を購入することが課題解決につながるのか」について、論理立てて説明できなくてはいけません。その際に重要となるのがロジカルシンキングです。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力が高いということは、なにも「おしゃべり上手」であるということではありません。口下手だから営業に向いていないという話はよくありますが、口下手であることと営業に向いていないことはイコールではありません。コミュニケーション能力があるかどうかは一言でいうと「会話のキャッチボール」ができるかです。
例えば面接などの緊張感のある場面で面接官の質問に対して返答をしているつもりが、話が長くなり、結局言いたいことが伝えられなかったといった経験がある方は多いはず。これは会話のキャッチボールができていない典型的な例です。相手の質問に対して的確な返答ができる、相手に適切な質問ができるというコミュニケーション能力は信頼関係を築いていく上でも非常に重要なスキルと言えます。
時間管理能力
営業に求められるのは、「営業力」だけではありません。営業には「目標」や「数字」と呼ばれるようなノルマがあります。成績は月ごとにリセットされてゼロからスタートとなりますので、必然的に営業職は1つのクライアントだけでなく複数のクライアントに同時にアプローチをかけていくことになります。
会社にもよりますが、クライアントとのアポイント取得から契約後のアフターフォローまで1人の営業職が担当するということも少なくありません。経験を重ねて自身が抱えるクライアントが増えれば増えるほど、新規開拓する時間がなくなってしまうことになります。単発ではなく継続して契約を取得できるような営業マンになるためには、仕事の効率化のためにきちんとスケジュールを立てて行動していく時間管理能力は必須のスキルです。
営業に向いている人の素質・マインド
スキルに続いては、どのような人が営業に向いているかについて少し深堀りしていきます。人にはそれぞれ性格がありますので、営業向きの性格というのももちろんあります。
スピード感をもって行動できる
営業はスピードが命です。スピードはそれだけで大きな武器になるのです。営業の仕事のシーンで当てはめて考えてみましょう。自分が営業マンだとして商品についてお客様に質問されたとします。上司の指示を仰ぐような場面でなければ、一旦持ち帰らずに、その場で電話をしてしかるべきところに確認することもできますよね。
スピードを大切にするというのは、回答を早め早めに行うことを指します。もちろん想定される質問に対しての答えをあらかじめ用意しておくことも重要ですが、時間を置くのではなくスピーディな行動を行うことがお客様にとっては信頼感につながるのです。ですので、あいまいな答えをするのではなく、分からないことに対しては分からないとはっきりとさせた上で、いつまでに回答するかなどを伝えることも重要です。スピードはメールのレスポンスなども同様です。回答までに時間を要する場合は、時間をいただくことだけでも返信しておくと相手の印象は大きく変わります。レスポンスだけでなく行動するスピードをあげることが、数字を追う営業にとって重要な行動量へとつながります。
相手にニーズがなければ踏みとどまれる
数字に追われる営業マン。どうせなら目標達成のために少々強引でも販売契約を結びたいものですよね。しかし、デキる営業マンはこれをしません。現代ではモノがあふれています。同じようなものは他の会社からも買うことができるのです。そのため、どこで買うかよりは「誰から買うか」が重視される時代となってきています。必要であるものを購入してもらうから価値があるわけで、必要でないものを買ってしまったらお客様としては「ハズレ」なわけです。
つまり、無理に買わせようとすれば、一回は買ってくれたとしてもリピーターになることはありえませんし、場合によってはクレーマーとなってしまうことさえ考えられます。自社の商品がお客様の課題を解決できるようなものでない場合は、無理に契約を迫る必要はありません。それでも「一回でも買ってくれるなら」と思うかもしれません。現代は口コミの時代。悪い噂はすぐに広まってしまいますよ。
数字にこだわって行動できる
これは、なにがなんでも目標を達成することだけにとどまりません。結果というのは、いきなり何もないところから生まれるものではありません。月末にいきなりウマい話が舞い込んできて目標達成なんていうラッキーはそうそうあるものではありません。すべては日々の自分の行動の積み重ねが結果につながるのです。
たとえば、目標を達成するためにはアポイントが必要です。するとアポイントをとるための行動が必要になりますよね。それは既存顧客への電話なのか、リストからの架電なのか、対象エリアの住居への直接訪問など方法はさまざまでしょう。たしかにアポイントとは相手あってのものなのでスケジュールが上手く組めないこともあります。しかしデキる営業マンとは、「今日はアポイントの電話を何件かけよう」などと数字で管理しているものです。アポイントを取得する方法は電話には限らないでしょうが、契約につながるアポイントの数に、デキる営業マンはこだわっています。