• 2020/12/16
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【DX Interview】株式会社東京ドアーズ・村山氏「DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する立場から見た『顧客の変化』とは?」

  • マーキャリ 編集部
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DX(デジタルトランスフォーメーション)の研修を国内大手ITベンダーにて行っている株式会社東京ドアーズ代表取締役の村山さんに大手DX推進企業の取り組みや中小企業のマーケティングにおけるデジタル化についてお話を伺いました(聞き手: エムエム総研取締役 河村 芳行)。

デジタル化への意識の変化

河村:行動や活動のあらゆる成果がデータ化されてきている中で、組織の意思決定やPDCAの変化も大きいですが、どのように感じられていますか。

村山:私はコンサルタントという立ち位置で企業のご支援をしていますが、確かにデジタルマーケティングが一般的になってCRMやSFA、MAを導入しようという機運はあります。しかし、デジタルを活用し始めているものの、それが組織横断的に部門間で上手く共有ができなかったり、協力が上手く進まなかったりして、効果が限定的になることに悩まれている企業が多い印象を受けています。

規模が大きい企業であれば、全社的に実施するマーケティング活動を共通認識させるための活動やデジタルマーケティングといったテーマで社内研修を行ったりしていますね。そのように特定の担当部門だけではなく「全社的に認知してもらう活動」を並行して行わないとデジタル活用は難しいでしょう。

河村:withコロナの中で、お客様の意識は大分変化していますか?

村山:変わってきています。「ネットで何かをしたほうが便利」ではなくて、「ネットでしなければいけない」という状況変化によって、ネットを介して効率的なことを行っていく意識が高まっています。

例えば、社員研修もそうです。私は講師という形でご支援をしていますが、ネットを通じて研修を行う際、これまでの集合研修を前提としたカリキュラムの講義や演習をそのままパソコンの画面を通じて行うのは技術的には可能ですが、教育効果の面では非常に難しいです。
こうしたWeb会議ツールの機能をただ使うだけではなく、より効果的に使うのであれば、PCの小さいカメラから相手にはどう映るのか、視線はどうしたらよいのか、相手の反応を引き出すには、といったように「ネット環境に最適化したやり方」を模索し、それをみんなで共有化することが求められていますね。


今回のインタビューはオンラインにて実施。

DX推進時の温度差

河村:村山さんがご支援されている企業は、どのような業種が多いのでしょうか?

村山:クライアントの約半分は国内大手ITベンダーとその関連会社(以後、A社)です。A社のトップ自ら、DXのリーダー企業になるという宣言をされ、DXに力を入れてらっしゃいます。そこで私は講師という立場でデジタルマーケティングなどの研修や社内教育のお手伝いをしています。

その中で感じるのは、DX担当部門は、非常にモチベーションも高く、社内でも旗振り役を推進されていますが、他の部門との温度差があることです。
温度の低い部門にしてみれば、自部門のシステムを運用して様々なタスクをPDCAで回していくのが大変な中DXとやらで、やれデータの共有だの統合化だのと言われても、そこからどんなメリットがあるのか、また顧客に対してどんな付加価値が提供できるかをイメージできないからです。

こうした問題はA社のみならずDXを推進しようとするどこの現場でも起こっているのだと思います。例えば100人、200人規模の会社であれば、さまざまな情報をデータ化し、データベースを構築して、それをもとに施策を進めるのは、それほど問題がありません。しかし、これが数百人~数千人を超える規模の会社になってくると、部門ごとの事情にもとづくデータベースを統合したり横断したりすることは、一筋縄ではいかないようです。



DXにより自分たちの仕事、顧客にどのような影響があるかを考えられているかが重要

河村:意思決定へのデータ活用や人材の育成については、どのように取り組んでいくべきなのでしょうか。

村山:30年近く前にCS(Customer Satisfaction)という概念が入ってきて、定着するまでさまざまな取り組みがなされてきましたが、この流れに少し似ているなと思っています。顧客接点に近いメンバーがCSの教育を受けたり、CSのためのシステム導入が進んだりしましたが、実はES(Employee Satisfaction)が大事だったのです。要はお客さんに満足してもらい、社員にも満足してもらうという、この二輪が上手くいってこそ、初めてCSが回り始めるのです。

DXも同じで、このDXの取り組みによって自分たちの仕事がどんなふうに変わっていくのか、お客様にはどんなメリットがあるのかというところまで落ちていないのです。そこに問題があると思います。

どうしてもデータドリブンばかりに目線が向いてしまっています。本当はその先にある付加価値ですよね。自分の仕事にどう付加価値が付いてくるのか、それによってお客さんにはどんな付加価値を提供できるのか。そこまでの発想がカチッとはまった時に、全社の中でDXはうまく回り始めるのではないでしょうか。

DX浸透には中小企業とDXマインド教育がキーに

村山:世の中にDXが浸透するためには中小企業がデジタルをうまく活用する必要があると思っています。私がご支援している150人ほどの農業系企業では、何年か前に資本提携によりヨーロッパ企業の傘下に入り、そこからの指示でデジタル化の取り組みを急遽始めています。

ところが、営業メンバーは地元の農協などを回りながら、時には畑で立ち話の打ち合わせを行いながらリレーションを築くような営業スタイルでした。それを「CRMでデータ化を」との方針に対して、ある程度トレーニングすることでデータをシステム管理し営業に活用するということは形の上ではできると思います。

ところが実際は、そういう取り組みで自分の仕事にどんな付加価値が付けられるようになるのか、お客様には何かメリットがあるのか、社内の関係部門は協力してくるのかといった不安が先行していました。私はDXの普及や推進にはこうした不安を払拭し積極的に活用するための教育をしていくことが重要だと感じています。ですので、社内の人材育成という観点では、デジタル推進の専門家を育成する一方で、一般社員の「DXマインド教育」も必要なのだと思います。

河村:DXマインドを育てると同時に、彼らのこれまでをどう覆すかも難しいですよね。

村山:確かにそうですね。マインドを変えるのは、ある程度はできるでしょうが、それに伴って自分の行動も変えていくとなると大変だと思います。今まで顧客と繰り返し1時間の商談を行う中で人間関係を作っていたのが、オンラインで要件は30分ほどで済ませるようになる。それは大きな変化ですよ。もちろんその中で、いかに人間関係を作っていくかも考えていかなければなりませんので、個々の自立性が非常に問われてくるようになると思います。

河村:現場でも適応の差は出てきていますか?

村山:積極的に順応できる人と、分かってはいるけれど昔のやり方に後ろ髪を引かれながら、なかなか順応できない人。そういう振り幅がありますね。先ほどのA社ではリモートワークが進んでおり、シンクライアントで接続されたPCを開いたらいつ、どこで、何をどうしているかがシステマチックに管理されています。自分の行動が全てデジタル化されて管理されているわけですよね。ですので、自律して適応するしかないですね。

おそらく、他の企業もどんどんそういう状況になっていくと思いますので、上手く使いこなすか、やっとついて行けるかでは、仕事の質にも随分と開きが出てくるのだと思います。

コロナ禍で生まれた新たなWebの需要

河村:Web周りの制作やコンサルティング依頼の内容については、変わってきていますか?

村山:それで言うと、興味深い事例として当社のクライアントで食品会社のB社様です。そこの牛乳宅配部門ですね。東京だとあまり牛乳配達と言われてもピンとこないかもしれませんが、B社様の宅配契約件数は全国に約350万世帯もあり、それを支えている宅配業者さんが全国に二千数百店あります。

当社は、その宅配店のホームページを作るご支援をしていますが、二千数百店がある中、ホームページを持っている宅配店は、1割あるかないかぐらいです。小規模な宅配店であれば半径数キロといった商圏でビジネスを行っているためさほどWebの必要がない業界なのです。ところがコロナ禍の影響を受け、開拓営業の際に玄関先でじっくり話すのが難しくなってきているようです。

そのため、新規契約を獲得するために営業用の開拓チラシにQRコードを付けて、QRコードからアクセスした際に宅配の注文ができるサイトです。結果的に今それがすごく広がってきています。

数キロ商圏でビジネスを行っている宅配店さんは、ある意味ITから遠い業界ではありますが関心が高まってきています。やはり、コロナ禍で商習慣も変わり始めているのを感じますね。

河村:すごくイメージがつきます。当然、アクセスや契約率に差が出てきたら個別に改善したり、数字が良い場合は次の施策を打ったりと進めていかれますよね。

村山:そうですね。契約を取った後、クロスセル、アップセルのようにWebで提案していっています。「いまうちは牛乳をとっているけど、寒くなってきたからヨーグルト飲料も取ってみようか」とか「今は週4本で頼んでいたけれど、今度は6本に増やしてみようか」 といったニーズに関しても、ネットでできるようにする。今、そういった取り組みを進めています。

河村:なるほど。販売店の効率はすごく高まっていいと思いますが、雇用が変わりそうですね。

村山:そうですね。配達する人を集めるのがなかなか大変で、なおかつ営業する人たちも揃えなければならない状況ですから、デジタル化が進んで配達に集中できるようになれば雇用も変わってくると思います。

河村:それは地方の労働人口減少のひとつの解決策になるかもしれないですね。

村山:そうですね。今いろいろな仮説を立てているのですが、将来、配ること自体もドローンでできるのが当たり前になっていくのではないかと思っています。


編集:森田 旭洋
■編集後記
DXをテーマに社内教育や研修をされている村山さんに貴重なお話を伺いました。DX推進企業においても部門によってモチベーションが変わるのは、やはり自分ごととして捉えられているかにかかっているようでした。村山さんありがとうございました!


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