この記事では、市場調査で行われるデプスインタビュー(DI:Depth Interview)について詳しく解説しています。マーケティングに市場調査は欠かせませんが、どのような調査をしているかは詳しく分からない方が多いはず。 基礎的なところから解説していますので、ぜひ参考にしてください。
デプスインタビューとは
デプスインタビューは、実際にユーザーの声を聞き、商品やサービスについての心理を引き出すマーケティング手法です。 マーケティングは「売れる仕組みを作ること」。そのためには、データの分析が重要になります。デプスインタビューは、ユーザーと1対1で行うインタビューで、ユーザーの潜在的なニーズを探るのに有効な手法だとされています。
数値に表れない潜在的なニーズが重要
データには「定量的」なものと「定性的」のものの大きく分けて2つの種類があります。定量的なデータとは数値に表せるデータのこと。たとえば売上や顧客数などは定量的なデータです。一方で定性的なデータとは感情や意見といった数値化できないデータのこと。人の行動には潜在的な意識が大きく関わっていると考えられており、マーケティングではユーザーの深層心理を知ることが重要になっています。デプスインタビューは、ユーザーに直接インタビューする形式のため、潜在的なニーズを知るために、とても有効な方法だと言えます。
デプスインタビューのメリット・デメリット
インタビュアーと1対1の面談形式で行うデプスインタビューには、集団で同時にヒアリングを行うグループインタビューにはない特徴があります。デプスインタビューのメリット・デメリットについて確認していきましょう。
デプスインタビューのメリット
・ユーザーに詳しい話が聞ける
デプスインタビューは1対1のインタビューなので、一人に対してじっくりと時間をかけられます。企業側が知りたいユーザーが商品やサービスを購入した理由や経緯、どのような感情で購入に至ったのかといった詳細な情報を得ることができます。
・周りの意見に左右されずに本音が聞ける
グループで行うインタビューとは異なり、デプスインタビューでは周りの発言による意見の揺れが発生しません。周りの意見とは関係なく、本音を聞くことができます。
・相手が周りを気にせず話しやすい
グループインタビューでは言いづらいような、お金や健康に関する悩みなどでも相手の了解があれば踏み込んだ話が聞けます。
デプスインタビューのデメリット
・コストと時間がかかる
デプスインタビューは1対1で行うため、十分なデータを集めるのに時間がかかってしまいます。またグループインタビューと比較すると1人あたりの費用も高くなります。デプスインタビューを行うユーザーは10名ほどであるのが通常です。
・周りと意見交換をしないので議論が発展しづらい
グループインタビューと異なり、参加者同士で議論をすすめることがないので、会話をしながら気づきを得て議論が発展する期待ができません。議論が発展しないので、結果として意見が偏ることもあります。
デプスインタビューの注意点
デプスインタビューの目的は、ユーザーの潜在的なニーズや深層心理を探ることにあります。しかし、これらはユーザー自身も意識をしていないものです。つまり、商品を購入した理由やきっかけなどを直接的に質問しても、ほとんどの場合ユーザーは明確に答えられません。またグループディスカッションとも異なるので、相手の話に共感や違いを感じながら自分の考えを明確にしていくこともできません。デプスインタビューは、インタビューをする側の手腕が大きく問われる調査方法なのです。
また、デプスインタビューは数値化できない情報を知る定性的な調査であることにも注意が必要です。収集したデータが定性的なものであるため、それをどう読み解くか、分析するかもデータを見る人によって変動しやすいです。
デプスインタビュー実施の流れ
実際にデプスインタビューを実施する際の流れを確認していきます。
調査の目的を明確にして仮説を立てる
デプスインタビューに限らず、調査には仮説を立てることが重要です。なぜ調査を行い、何を知りたいのかを明確にし、課題解決にはどうすればよいのかといった仮説を立てます。調査を行って意見を集めるだけでなく、企業はこう考えているが、ユーザーはこう考えていたといった差異を知ることも重要になります。調査の前には必ず仮説まで立ててください。
質問内容や質問項目を決める
仮説をもとに、大まかな質問内容を決めていきます。デプスインタビューは相手の心理や感情を深堀りしていく作業ですので、予定通りに話がすすむわけではありません。あらかじめ用意する質問は最低限に絞っておき、その場に応じた質問ができるようにしておきます。
インタビュー対象者を決める
デプスインタビューは、費用や時間の関係もあり、何度も行えるものではありません。そのためインタビューの対象者選びは非常に重要になります。対象者の選び方は、立てた仮説に対して有効な回答が得られそうかどうかが判断基準となるでしょう。たとえばブランドや商品について率直な意見が聞きたいのならば、少なくとも使用するブランドや商品についてある程度の知識を持っている必要がありますよね。
インタビュー対象者を集めて、デプスインタビューを実施する
インタビューの対象者の集め方は、外部の調査会社に依頼する、社員の中から条件に近い人を選出する、SNSで呼びかけるなどさまざまな方法が考えられます。対象者を集める方法はコストに応じて使い分ければよいでしょう。