企業であれば複数の事業を同時に運営していることも多いです。経営者や企業には必ず将来に向けたビジョンがあり、それを実現するために事業を興しています。またはビジョンを実現するための利益確保として本来とは別の事業を始めることもあるでしょう。複数の事業を同時に運営するとなると、何か上手くいっていないような違和感を覚えることもあるはずです。経営が順調であったとしても、事業が複雑化すれば、経営者がやりたいこと・かなえたいことである「ビジョン」と合致しているのか分かりづらくなります。
そんなときに役立つのが「バリューポートフォリオ」という手法です。バリューポートフォリオは、経営戦略に用いられるフレームワークの1つ。バリューポートフォリオは、事業の撤退や再構築について各事業の分析をするために非常に有効な方法です。この記事ではバリューポートフォリオについて、マーケティングの初心者でも分かるように分かりやすく解説しています。専門用語についても都度解説をしていますので、バリューポートフォリオについて学びたい方や、マーケティングについて知りたい方の参考になるはずです。
バリューポートフォリオの意味とは?
企業の販売戦略や経営戦略に関わる全般のことを指すマーケティングには、さまざまな手法があり、ビジネス上の専門用語も多いです。そもそも「バリューポートフォリオ」という言葉に聞きなじみがなければ、イメージをつかむことも難しいですよね。バリューは「価値」という意味。「ポートフォリオ」はデザイナーなどのクリエイター業界では「作品集」という意味で使われることが多いです。ポートフォリオには、投資や金融業界で使われれば「金融資産の一覧」という意味もあります。
どちらも「まとめたもの」である共通点がありますね。バリューポートフォリオについて理解しやすくするように、あえて日本語にするならば「企業が行っているそれぞれの事業に対しての価値を、さまざまな視点で評価しまとめること」と言えるでしょう。さまざまな視点と言いましたが、実際には2つの評価基準を軸としていますので、意外と単純な構造となっています。
バリューポートフォリオの2つの評価軸
バリューポートフォリオは、ボストンコンサルティンググループが考案したフレームワークです。2つの評価軸をもとに、企業が抱えている事業の価値を分析します。2つの評価軸とは、「ROI」と「ビジョンとの整合性」。ROIとは「株主視点」のこと。その企業に投資している株主からすれば大事なのは利益です。逆に経営者は元来自分が描くビジョンの達成のために事業をするのですから、経営者からすれば大事なのはビジョンです。つまり、「利益を優先したい株主視点」と「ビジョンを優先したい経営者視点」のバランスを分析する際に用いられるのがバリューポートフォリオです。ここで注意したいのは、ビジョンは年商や売上高などの数字で表すものとは異なる点です。事例で言えば食品メーカーなら「安心安全でおいしい食品で日本中の家庭のテーブルを幸せにしたい」というような抽象的な「将来ありたい姿」のことを指します。
バリューポートフォリオでは、それぞれの事業について会社が目指す「将来ありたい姿=ビジョン」と方向性が一致しているか、株主が期待する利益もかなえられているか、の2軸で総合的に分析していくものとなります。