この記事では、営業手法の1つである「反響営業」について解説しています。これから営業職を目指す方や、反響営業として働き始めたばかりの方に特に参考になる内容になっています。仕事内容や、大変なところ、成果を出すためのコツについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
反響営業とは
反響営業とは、新聞や雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットといったメディアを通した広告宣伝やダイレクトメール、チラシ配布などを行い、それを見て問い合わせをしてきた人を対象にして営業を行う手法のことを言います。こちらからどんどん営業をかけるのではなく、問い合わせをしてきた人に営業を行うタイプの営業手法です。
反響営業が多いのは個人営業?法人営業? 業界は?
反響営業は、広告の効果が出やすい一般消費者向けの事業を行っている個人営業の企業に多いです。そして、広告のコストが大きくかかる分、その費用を回収できるよう、扱う商材も高価なものであるのが一般的です。たとえば不動産業界や自動車業界などが反響営業の主な例となります。
他にも法人営業で、マーケティングをしっかりと行い問い合わせが来るように仕組み化している企業もあてまります。マーケティングに取り組んでいる企業では、ダウンロード資料やコンテンツをもとに、見込みのある顧客を集客しているので、そこから確度の高い顧客へのアプローチを進めていくことができます。
ちなみに、一般消費者向けではなく企業を相手に営業活動を行う企業を法人営業と言います。BtoB企業、BtoC企業といった言葉を聞いたことがあるでしょうが、これら2つの言葉はそれぞれ法人営業、個人営業を指します。BtoBとは「Business to Business」の略で法人営業という意味で、BtoCは「Business to Consumer」の略で個人営業を意味します。BtoB、BtoCはB2BやB2Cと表記することもあります。
反響営業は楽?
これまで接点のない企業を直接訪問したり、電話をかけてアポイントを取得したりする営業手法と比べて、相手は広告を見て問い合わせをしてきた時点で、ある程度自社の商品に興味がある段階から商談が始まります。そのため、デメリットはほとんどなく、アポイントが取れないなど精神的プレッシャーは比較的小さいと言えるでしょう。
反響営業の仕事内容
反響営業は大きく分けて2つの業務があります。1つはインターネットやテレビなどのメディアを使った広告企画、もう1つは問い合わせや来店する見込み客への対応です。広告企画では、マーケティングに関わる仕事、問い合わせ対応は営業に関わる仕事です。この2つは部署が分かれていることもあります。
(1)メディアを使った広告企画
反響営業では、その名の通り「いかに反響がある広告を打つか」が重要になってきます。現代では、単純にモノがよければ売れるといった時代ではありません。そのため自社の製品やサービスをいかに魅力的に見せるか、見込み客のニーズを刺激する広告にするか、徹底的なリサーチを重ねて、効果的な広告作りを行っていきます。
メディアを通して広告を打つ場合は、その規模が大きくなればなるほどコストがかかります。広告の良し悪しがそのまま問い合わせの数につながります。「待ち」の営業スタイルである反響営業だからこそ、広告を打つ際には慎重さが問われます。
(2)問い合わせ対応
広告を見て問い合わせや来店をしてくれる見込み客への対応が、反響営業における実質の営業活動です。問い合わせの数はそのまま商談のチャンスの数と比例しますが、いくら問い合わせがあっても、成約にならなければ意味がありません。広告に大きなコストをかけている分、いかにしっかりとチャンスを逃さずにものにするかが重要になりますので営業手腕も問われる仕事です。
反響営業と他の営業手法の違い
反響営業は多くの場合、リピーターに向けて営業を行うのではなく常に新しい顧客の獲得を狙っていきます。営業手法の大きなカテゴリーとしては新規開拓営業の1つと言えます。反響営業以外の新規獲得営業や、既存顧客に対して営業を行うルート営業との違いを確認しておきましょう。
飛び込み営業
一般的に営業活動をする際には、訪問先からアポイントを取得して訪問をするものですが、飛び込み営業では、電話やメールなどでアポイントの日程を決めてから訪問するのではなく、アポなしで直接企業や個人宅を訪問して後日のアポを取得したり、場合によってはその場で商談を始めたりします。業界としては生命保険や融資・証券の金融系業界などハードルが高いものから、MR(医療情報担当者)など飛び込み営業がしやすい業界もあります。
相手からすれば約束もなくいきなり訪問されるので、基本的には「招かれざる客」となります。そのため相手に迷惑がられたり、怒られたりすることも珍しくありません。 一見非効率な営業手法におもえますが、訪問した企業にたまたま困っている問題があり、自社の製品やサービスで解決できそうなものなら話だけでも聞こうかとなるものです。
法人営業では、決裁権を持つ責任者との関係を構築することが重要です。最初の担当者といくら話がはずんでも、決裁者がNOといえば購買にはつながらないからです。しかし、ダイレクトメールやWebサイトなどのツールだけでは成約への道筋が開けない場合は少なくありません。飛び込み営業でタイミングよく決裁者が会ってくれれば、電話でのアポ取りもツールづくりも広告も必要なく、スムーズに契約と結びつけられるというメリットがあります。
テレアポ
飛び込み営業がいきなり企業を訪問するのに対し、テレアポではあらかじめ電話でアポイントを取った上で訪問する営業手法です。移動時間がないので効率はよいですが、これまで取引がある相手ではなく、新たに顧客を獲得しようとするものなのでなかなかアポにはつながりません。また、電話口で決裁者につないでくれることはまずないので、こちらも数が重要になってきます。架電リストをもとに1日100件単位で電話をかけてもアポが取れないといったことも珍しくありません。
ルート営業
ルート営業とは、既に取引がある相手を対象とする営業方法です。決まった顧客を周るため「ルート」が決まっているという意味でルート営業と呼ばれます。 既存顧客に対して現状のニーズをヒアリングしたり、新商品を提案したりするのが主な仕事です。
ルート営業と新規開拓営業の最も大きな違いは、「既に取引があるかどうか」です。ルート営業ではいわば相手とある程度の信頼関係が築かれているところから商談がスタートしますが、新規開拓営業では、接点を持つところから始める必要があります。
また、営業スタイルだけではなく、ルート営業と新規開拓営業では収入面にも違いがあることが多いです。新規開拓営業では、目標の達成率に応じてインセンティブと呼ばれる臨時ボーナスのようなものが設定されていることがあります。各人に設定されている目標が達成されると翌月分の給与やボーナスに上乗せされる仕組みです。
ルート営業にももちろん目標の設定はあり、目標の達成率は自分の評価につながってきます。ただインセンティブ設定で大幅に収入をアップするということは難しく、地道な積み重ねが求められます。
反響営業の大変なところ・やりがい
反響営業には、他の営業と同様にノルマがあります。ノルマという言葉ではなくても、営業であるからには必ず数値目標が設けられています。目標の達成率がそのまま自分の評価に直結することは、営業ならではの厳しいところであると同時に、努力次第で自分の評価や給与を上げやすいとも言えますのでやりがいにつながるところでしょう。
反響営業の場合、相手が自社の商品やサービスにある程度興味を持ってくれている段階から商談が始まります。そのため、「ニーズがなかった」という言い訳は通用しません。他の営業手法よりも特に営業力が問われるのは、反響営業ならではでしょう。
反響営業に向いている人
反響営業に限った話ではありませんが、仕事には必ず向き不向きがあります。営業職としてバリバリ結果を出していきたいという憧れも重要ですが、どんな適性が必要なのかもきちんと知った上で、就職・転職をすることをおすすめします。
反響営業は広告を出す業務と問い合わせに対応する業務の2つがあります。広告は個人の権限で出すものではありませんが、商品やサービスを購入する側の心理やニーズを掴むためにリサーチや情報の分析が重要になります。感情やセンスでなく、きちんと論理や計画を立てて実行できる人が向いているでしょう。
広告企画を担当する場合には、広告の戦略や問い合わせを効率的に対応できる仕組み作りを考える力が必要になりますし、問い合わせ対応を担当する場合には、なんと言っても購買へとつなげる営業力が求められます。
反響営業に必要なスキル
反響営業として身につけたいスキルについて、特に重要となるものをピックアップして紹介していきます。
最重要なのはヒアリング力
営業はセールストークが上手でなくてはならないというイメージがある方は多いでしょうが、「おしゃべり上手」であることは必須ではありません。口下手であることと営業に向いてないことはイコールではありません。
その理由は、営業手法に関わらず営業担当に最も求められるのはヒアリング力だからです。 どんな業種であれ「何かを売る」のが営業の仕事ですので、商材をおすすめしてクライアントに「売る力」が求められるように感じますが、実はそうではありません。
営業の世界では、自社の商品を「売ろう売ろう」とするあまり、クライアントのニーズをヒアリングできずに自分が話してばかりでは成績はついてきません。反響営業の場合は、ある程度相手が興味を持ってもらっている段階で商談が始まりますが、そのことにあぐらをかいてきちんと相手のニーズを捉えることを怠れば、成約にはつながりません。
ヒアリング力とは、相手の状況を理解する力だけでなく、「相手の見えない課題を発見する力」も含みます。クライアントが商品を購入しようとするのは「困っていることが解決できるから」に尽きます。当然のことではありますが必要がないものは購入してくれるはずがありません。相手にあなたが提案する商品に興味を持ってもらうために必要なのは商品をすすめる「話す力」ではなく、相手が気づいていないような深いニーズを探りあてる「聞く力」なのです。
ロジカルシンキング
論理的思考と訳されるロジカルシンキングは、抱えている問題を分解して整理し順序立てて考えることで結論を導きだすという思考法です。ひとことで言うと「筋道を立てて考えること」となるでしょう。人は得をしたいという感情よりは、損をしたくないという感情の方が強いです。そのため、ほとんどの人はものを買う際には、説得させられて買うのではなく納得した上で買いたいと思っています。論理立てて説明できる能力は、相手に納得してもらうために重要なスキルです。
反響営業として成果を上げるためのコツ
反響営業を行う業界の一例である、不動産業者で考えてみましょう。家を買おうとか建てようと思っている人で、「絶対この業者にお願いする」と考えている人は稀です。ほとんどの場合はどこで買うかよりも、どんな家を買うか、どんなデザインの家を建てるかが重視されているはず。
そのため、よりよい物件探しのためにひとつの不動産業者ではなく、複数の業者を周るのが通常です。場合によっては同時に複数の業者に声をかけることもあります。それゆえ、反響営業では、問い合わせを受けた際に「どこよりも早く返答すること」が重要になります。
人によっては一番初めに返信があったからといった理由で成約につながることもあるほどです。いかに迅速に電話やメールの返信ができる事務体制を作れるかが、営業活動を成功させるために欠かせない要素となります。
反響営業への就職・転職事情
反響営業を含めた営業職は全般的に、就職・転職しやすい職種だと言われています。会社の売上を上げるのは営業職の仕事ですので、そのための人材はほとんどの業界・業種で必要としています。実際に反響営業も、その他の営業職も正社員の求人が多いです。応募の際に必須の資格がない場合がほとんどですので、応募もしやすいです。
反響営業に応募する際は、実際にどの業務を担当するのかをきちんと確認しましょう。反響営業とひとくちに言っても広告宣伝と問いあわせ担当の大きく分けて2つがあります。そのどちらも担当するのか、それとも片方だけなのかで仕事内容は大きく変わります。仮に広告宣伝の業務を担当するのなら、マーケティング職のような立場になります。顧客と商談をして成約につなげる仕事がしたいという場合には、きちんと営業担当であるかどうかをチェックすることを忘れないようにしましょう。