今回の記事では有名な問題解決のためのフレームワークとして知られる「なぜなぜ分析」について解説します。「なぜを繰り返していくだけ」と考えていると正確な分析や問題解決の方法を見出すことはできません。この記事を参考にして、なぜなぜ分析のコツをつかんでください。
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析はトヨタ自動車の元副社長である大野耐一氏の著書『トヨタ生産方式』によって広まりました。トヨタ生まれのフレームワークのため「トヨタ式なぜなぜ分析」とも呼ばれます。「なぜ?」を5回繰り返すという方式のため英語では「5whys」と訳されています。
なぜなぜ分析は、課題の発見・解決のために行うフレームワークです。有名なフレームワークのため、聞いたことがある方や、実行したことがある方も多いでしょう。しかし、なぜなぜ分析を単純に「なぜ?」を繰り返すものだと認識していると、上手くいかないことの方が多いです。効果的ななぜなぜ分析のやり方を確認していきましょう。
なぜなぜ分析の4つのコツ
なぜなぜ分析は以下の図のようになぜをツリー状につなげていくフレームワークです。
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1. 解決したい課題を明確にする
なぜなぜ分析を行う上での最初のポイントは、解決したい問題を明確にすることです。逆に言えば抽象的な課題については、その原因を「なぜ?」と深めていってもさらに抽象度が増してしまい、根本的な課題解決につながりづらいです。抽象的な課題の例としては、「職場の雰囲気が悪い」、「〇〇さんの勤務態度がよくない」、「ミスが多い」などが挙げられるでしょう。
職場の雰囲気というもの自体がそもそも抽象的なものなので、はっきりとした解決策を見出すことが難しいです。また、ミスが多いについては、誰がどのタイミングでどんなミスをしているのかを明確にしなければ、「ミスが出ないように注意しよう」などといった中途半端な行動指針が出て終わり、ミスの再発は防げないでしょう。
2.なぜ?への回答との直接的なつながりを意識する
なぜなぜ分析では、課題に対して「なぜ?」を重ねることで解決策を模索していきます。課題に対する一つ目のなぜ?に対する回答を「なぜ(1)」、なぜ(1)に対してのなぜ?に対する回答を「なぜ(2)」としてつなげていきます。ここで、注意するのは課題となぜ(1)、なぜ(1)となぜ(2)のつながりです。それぞれが原因と結果の関係になっているかは、なぜなぜ分析を行う際に注意が必要です。
たとえば、「朝10時からの会議に遅刻してしまった」という結果への直接的な原因は「家を出るのが遅れたこと」です。寝坊をしたことや、忘れ物をしたことなどは、家を出るのが遅れた原因ですよね。ここを間違えないようにしてください。この場合、寝坊をしたことや忘れ物をしたことは、なぜ(1)ではなくなぜ(2)となります。ちなみに、なぜ(1)に対するなぜ(2)やその後のなぜ(3)以降については複数あることは問題ありません。むしろ複数出ることが通常です。
3.なぜ?への回答を複数の要素が集まったものにしない
なぜ?に対する回答が、複数の要素からなるものだと、そこからさらになぜ?をつなげていく際に抽象的なものになってしまいます。なぜなぜ分析で解決を狙う問題を明確にしたのと同様に、なぜに対する回答も具体的なものにしましょう。家を出るのが遅れたことに対する回答として、朝の準備に時間がかかったからとしてしまうと具体的ではありません。家を出るまでのどんな準備に時間がかかってしまったのかが明確でないので、具体的な解決策が出せません。
4.なぜ?の回数や止めるタイミングを明確にする
なぜなぜ分析は元々、なぜ?を5回繰り返すものでした。しかし、なぜなぜ分析を行う目的は問題の再発防止や課題を解決することです。そのため、5回という回数にこだわり過ぎる必要はないでしょう。もちろん5回以上なぜ?を繰り返しても構いません。
なぜ?を止めるタイミングとしては、はじめに決めた問題に対する解決方法が論理的に説明できる段階に達したときです。解決方法が分かったのにそれ以上になぜ?を重ねる必要はありません。しかし、2回程度だと、その場しのぎの解決策となることも多いですのできちんと「根本的な解決につながるか」は意識してください。最終的には、問題解決のための質問として「なぜ?」ではなく、「どうすれば?」と投げかけることで具体的な行動指針が導き出しやすくなります。
また、なぜ?に対する回答が自分たちではコントロールできない範囲に及ぶときも同様です。自分たちでどうもできないことに対しては、改善策を打ちようがありませんよね。少し極端な例を言えば、遅刻した原因が時計の故障でアラームが鳴らなかったことにあるとしても、「壊れない時計を作るべきだ」という対策は自分たちではできません。複数のアラームをセットするなどとして、なぜなぜ分析を終えるべきでしょう。
なぜなぜ分析を行うことで、特定の人物のミスが明らかになることがあります。しかしなぜなぜ分析を行う目的は、問題が起こることを防ぐことです。問題の原因を人為的なものとしてしまうと、結局は「その人が気をつけるべきだった」となり解決にはなりません。また、ミスは誰でも起こすものです。誰がミスをしたのかではなく、なぜミスが起こったのかに焦点を当てることで、効果的な分析を行ってみてください。