会社で働く人には誰しも役割があります。働くうちに成果を上げて昇進して職位が変わっていくと、立場が変わるので求められる役割が変わります。よくスポーツの世界では「名プレーヤーが名監督になるとは限らない」などと言われることがありますが、これはビジネスの世界でも同じです。トップ営業マンだったからといって営業部長として成果が出せるかは、また別の話です。人は役職や立場によって求められるものが変わる。それを分かりやすく体系化したのが「カッツ理論」です。
この記事ではカッツ理論の全体像に関する解説と、それぞれのステージで求められる能力について紹介しています。昇進をして初めて部下ができたといった段階の方や、部長やマネージャーといった管理職として働いている方に特に参考になる内容になっています。ぜひ最後までご覧ください。
カッツ理論とは
カッツ理論はハーバード大学の教授であったロバート・カッツ氏により1955年に提唱されたビジネススキルと人材の関係性について述べた理論です。現在でも人材育成や人事評価で活用されています。カッツ氏は人材を「トップマネジメント(経営者層)」、「ミドルマネジメント(管理者層)」、「ロワーマネジメント(監督者層)」の3つに、ビジネススキルを「コンセプチュアルスキル」、「ヒューマンスキル」、「テクニカルスキル」の3つに分類しました。
カッツ理論を表す図
カッツ理論を理解するために、以下のような3色に色分けされた図を用いると分かりやすいです。縦軸が人材を、横軸が必要なビジネススキルを表しています。この図を見ると、トップマネジメントに近づくにつれコンセプチュアルスキルが重要になり、ロワーマネジメントであればテクニカルスキルが求められることが分かります。次の章ではそれぞれのスキルの詳しい説明をしていきますので、この図を適宜確認しながら読み進めていってください。
https://media.mar-cari.jp/article/detail/788
それぞれの人材に重要なスキル
「テクニカルスキル」、「ヒューマンスキル」、「コンセプチュアルスキル」とはどんな能力なのかについて解説していきます。
テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、業務を行うにあたって必要な知識や技術のことを指します。経理や財務なら会計の知識、エンジニアならプログラミングスキル、営業ならプレゼンテーション能力や商品知識などが該当します。
「トップマネジメント(経営者層)」、「ミドルマネジメント(管理者層)」、「ロワーマネジメント(監督者層)」の3つの人材において、テクニカルスキルが最も重要となるのはロワーマネジメント(監督者層)です。ロワーマネジメントとは、製造現場なら現場監督、店舗なら店長、会社なら主任や係長といった立場を指します。いわゆる現場でリーダーシップを発揮するためには、現場で業務を行うための知識やスキルが重要だということです。
コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは、「概念化能力」と訳されることが多いですが、少しイメージしづらいですよね。これはコンセプチュアルスキルが特に求められるのがトップマネジメント層(経営者層)であることから考えれば理解しやすいです。経営者の仕事は、ビジョンを打ち出すこと。たとえば売上を200%アップというビジョンを打ち出すのが経営者の役割です。会社の未来像や、抜本的な改革などを描く能力と言えます。ミドルマネジメントに求められるコンセプチュアルスキルは、チームメンバーへ経営者の理念を浸透させることや、チームにとって必要な教育制度を整えるなどが挙げられるでしょう。
どの人材にも求められるヒューマンスキル
カッツ理論を表した図を確認するとコンセプチュアルスキルやテクニカルスキルは、人材によって重要度が変わるのに対し、ヒューマンスキルはどの層においても重要度の変化がありません。ヒューマンスキルとはどのようなスキルなのか、少し掘り下げて確認していきます。
カッツ理論におけるヒューマンスキルとは、対人関係に関する能力のことで、言い換えれば他者と信頼関係を築くためのスキルのことです。どのマネジメント層においても部下はもちろん、提携企業やクライアントとの関係を築くことが求められます。ヒューマンスキルには「コミュニケーション能力」や「交渉力」、「プレゼンテーション能力」、「リーダーシップ」などが挙げられるでしょう。
社内の人間に限らず、相手と信頼関係を築くにはコミュニケーション能力が欠かせません。相手の意思や伝えたいこと聞き取る力や理解する力、こちらの意見を誤解なく伝える力がコミュニケーション能力です。
カッツ理論を人材育成に活かす
カッツ理論の図は、職位ごとにどんなスキルが重要になるかが一目で分かります。企業研修を行う際にはカッツ理論を活用すれば、より効果的な教育が行えるでしょう。自身で学習をすすめる際にもカッツ理論が活かせるはずです。部下をマネジメントする上ではどの層においてもヒューマンスキルが重要でした。たとえば部下にどのような声かけをするか1つで相手のモチベーションは変わってきます。まずはヒューマンスキルを磨くところから始めてみてはいかがでしょうか。