• 2020/06/12
  • 連載企画
  • キャリアチェンジ体験記

「副業」から「複業」の時代へ。パラレルキャリアという働き方【キャリアチェンジ体験記】

  • マーキャリ会員  
article-image
目次

【キャリアチェンジ体験記とは】
働き方改革が施行されたことにより、会社の体制や制度が変わったなんて人も多いと思います。企業も個人も今まで以上にビジネスマンのキャリア展望に目が向けられている中、マーキャリ会員によるキャリアチェンジに伴った体験談をシリーズものとして連載していくのが本企画です。

今まさに自身の今後のビジネスライフに向けて働き方を変える動きをしている方もまだキャリアプランが漠然としている方も参考になる内容になっておりますので是非ご覧ください。

今回の記事投稿者:佐藤彩さん
⇒佐藤彩さんのバイオグラフィはこちらをクリック

こんにちは。筆者は都内近隣で暮らしている30代前半の女性です。
2018年より現在まで、フリーライターと季節労働の有期社員、アルバイトの3本柱で生計をたてています。1つの仕事に絞らない、いわゆる「複業」というワークスタイルです。

さらに業界も、20代はIT業界、30代は旅行業界と全く違う業界にいたので、「IT」と「観光」の異なる2つの業界を掛けもっています。

テレワークの導入などにより、働き方はより多様化しています。
私のような働き方の事例もありますので、選択肢の1つとしてキャリアチェンジの参考になれば幸いです。

自己紹介

北海道出身の私は、自然が豊かで、ほどよく都会である札幌でのびのび暮らしていました。そのまま地元で就職を望んでいましたが、さまざまな出来事が重なり、大学を卒業後、上京をしました。
東京に憧れをもって上京する人も多いかもしれません。でも私の場合、もともと札幌が好きだったので、上京をするなど一度も考えたことがありませんでした。
家庭の事情や、そこにリーマンショックの不況も重なり、新卒で思うような活動ができなかったため、就職活動で関東へ引っ越したのです。

新卒のカードがない私には、地元での就職は相当厳しいと考えました。

上京後は安いアパートに住んで、1年間アルバイトで生活し、合間に就職活動をしました。
その後、IT関連の中小会社に契約社員として就業が決まりました。
「もともとITが好きだったの?」とたまに聞かれることがありますが、ITとかパソコンとか、難しいことは苦手でした。

当時、社会に出たことがない私には、自分は何かやりたくて、どんな仕事に向いているかわかりませんでした。接客や事務などの仕事にも応募したのですが、他のお仕事は決まらなかったのです。唯一決まった仕事が、IT業界の営業職でした。

IT業界で働いた20代

はじめてのIT業界はインターネット通信

IT業界なんかで働けるのかな?と最初は不安でしたが、私が思っていたより、IT関係のお仕事はとても楽しくやりがいのある仕事でした。
家電量販店に派遣されて、光回線の導入提案をする営業職でしたが、量販店や、メーカーの社員さんと常に協力・連携しあって業務を行います。社員さん達のサポートもあり、家電や回線に関する知識は2ヶ月ほどですぐに覚えることができました。

当時はADSL回線の家庭もまだ多い時代でしたので、インターネット通信はどんどん拡大している業界でした。
ノルマが厳しかったのと、さまざまな店舗を回るので、遠方の店舗に配属になった場合、引越しをしなければならなかったのが大変でした。それでも頑張れば頑張るほど、給与もつりあがりましたので、それがやりがいでした。

しかし、スマートフォンの登場によって、「一家に1光回線」の時代が終わり、業務縮小が現実味を帯びてきました。
3年後にはクライアント先の仕事がなくなり、契約満了を会社から言い渡されました。

2度目のIT業界はクラウド・コンサルティング

はじめての失業は自分にとってショックが大きく、「次は絶対に正規雇用を目指そう」と考えました。
会社の上の人は、他のお仕事も紹介してくれましたが、断って退社を決めました。紹介された仕事がアパレルや美容だったのですが、私はIT業界が好きだったので、次もIT業界で働きたいと考えました。

退社後、80社近く会社に応募し、2ヵ月後にやっとIT会社のクラウド・コンサルティング営業職の正規雇用が決まりました。
決まったときは「やっと正規雇用で働ける」と嬉しい気持ちでした。

しかし、入社した会社はかなりの厳しい会社でした。

マイクロソフト社からさまざまな業務の委託を受けていた中小会社で、クラウドとテレワーク導入を、法人企業へ提案することが主な業務です。
業務自体は楽しかったのですが、創業メンバーの家族経営のような会社で、かつ、典型的トップダウンの社風でした。同僚は全員辞めてしまいましたが、せっかく正社員で入社できた会社だったので、必死に仕事を頑張りました。

もともと体力があるほうではなかったのですが、入社2年後あたりで、会社の人間関係などに悩み、体調不良が続きました。

なんとか我慢して働いていましたが、3年後に、さらに大きなショックが襲います。
会社が倒産(※事実上の倒産で、現在は大手会社の小会社に合併・吸収)したのです。

今の道を選ぶ大きなきっかけとなった、2度の失業経験

人生の中で困難なことは必ず起きますが、中でも失業経験は、本当に辛いものです。
私の場合、1度目の失業は、業務縮小による契約満了でしたので解雇ではなかったですが、2度目の失業は、精神的にも相当なダメージを受けました。

会社の倒産理由は、創業メンバーの独立による、赤字転落でした。
よく倒産の前には前兆があるといわれていますが、私は1年前から顧客先へ出向していたために、⾃社へ戻るのは⽉に2⽇程度しかありませんでした。そのため、社内で何が起こっていたのか把握できず前兆に気づくことができませんでした。

会社側は、解雇を会社理由ではなく自己都合理由にして私を追い込もうとしました。
正社員を会社理由で解雇すると、行政から雇用助成金を受けられなくなってしまうことが理由でした。法律相談なども行きましたが、結局、交渉できたのは退職金のみで、自己都合退職の要求には応じるしかありませんでした。

解雇に応じた日を出勤最終日にされたため、上司や後輩に挨拶すら叶わなかったことも、自分にとって大きなトラウマになりました。会社は存続の道を模索していたので、残った社員に知れ渡らないようにリストラの事実を隠蔽しようとしていました。

そのため、退職の挨拶は禁止され、社内アカウントもロックがかかり、まるで存在しなかった社員のように扱われたのです。

IT業界から観光業界へ転身した30代

その頃私は30歳でしたが、退社後はもう何もする気がなくなり、体調不良も悪化したため、退職金で2ヶ月ほど療養生活に入りました。
ダメージが大きすぎて、とてもすぐには就職する気にはなれなかったのですが、家賃や光熱費などの固定コストは、毎月のしかかります。
そこで、心身をリフレッシュさせるために、リゾートバイトで、前から大好きだった関西の観光地へ住み込みで数ヶ月働きに行くことに決めました。
食費も寮代も光熱費も無料だったので、当面の間は支払いの心配事は忘れて、大自然の中でのびのび過ごしました。

県外にはあまり知られていないひっそりとした観光地でしたが、大自然の景観が素晴らしい場所でした。そのとき初めて、日本にはたくさんの観光資産があることを知り、東京に戻ったら、旅行業界で働くことに挑戦してみよう、と考えました。

リゾート派遣が終わった後、ちょうど旅行資格を取得できる職業訓練校の募集が始まっていました。その頃、2020年の東京オリンピックに向けて、観光人材の需要が高まると言われていました。
私はすぐに応募をして、失業手当をもらいながら半年間の長い訓練を受け、旅程管理主任者資格を取得しました。
その後は、大手旅行会社にて、派遣社員として就業が決まりました。

こうしてIT業界から旅行業界への転身をスタートさせました。

旅行業界からフリーライターへ。さらなる転身

旅行資格を取得した後は派遣社員として、誰もが知る大きな旅行会社に入りました。旅行業界に入ってまずびっくりしたのは、年配の人が非常に多いことです。

正社員は若い人が多かったですが、契約社員や派遣社員で、特に添乗員さんは20代から50代後半の人まで、幅広い年齢の人が活躍していました。

年齢制限の厳しいIT業界から転身した私にとって、この事実は驚きでした。いくつになっても働ける業界はあり、必ずしも年齢で悲観する必要はないと感じました。

ただ雇用は派遣で不安定だったため、今後どうしていくかのキャリアについてはずっと悩んでいました。
正社員を目指すにしても、年齢の問題もあります。仮に正社員になれたとしても、今は正社員が安泰という時代ではありません。次も解雇されるかもしれないし、私は自然が大好きで、東京の人ごみや空気が苦手なので、東京方面に引っ越したくないと考えていました。
正社員ならある程度、転勤も覚悟しなければなりません。

今現在、関東近隣に住んでいますが、都会から少し離れているので自然も多く、とても気にいっています。大学卒業後、私はさまざまな事情で住む場所を転々としてきたので、将来住む場所は自分で決めたい、とずっと考えていました。
そこで、旅行会社で働きながら、クラウドソーシングで、在宅のライティングの仕事に挑戦することにしました。
収⼊源を複数持っておくことで、今後の経済損失のリスク分散にもつながると考えました。

フリーライターで大変だったこと

旅行会社で夜遅くまで働きながら、休みの日はライティングに明け暮れる生活が続きました。
初心者で、会社で働きながらだと、ほとんど週末しか時間がないため、記事を仕上げるまでに時間がかかります。そのため、納期条件が厳しく、単価が高い仕事は受注できません。さらに、メールの返信もしなくてはなりません。旅行会社でくたくたになるまで働き、終わった後もメール返信や仕事、仕事の毎日でした。

単価は高くなくても、仕事の受注は増えてくるようになりました。私は思い切って旅行会社を退社して、アルバイトに切り替え、執筆時間を増やそうと決めました。
周りからは、「会社員を辞めるなんて、絶対にやめたほうがいい」と反対されましたが、迷いはありませんでした。

それでも実際に大変だったのは、やはりお金の問題と確定申告です。
単価を上げるため、クラウドソーシングだけでなく企業に営業をかけに行ったのですが、受注後に担当者が変わり、報酬未払いなどが起こりました。
また、自分で業務委託契約書を作成しなければならなかったり、1年の総所得と経費を確定申告で算出する作業も、とても大変でした。

今までは会社が年末調整をしてくれましたが、開業をするということは、1年の総所得と経費を、すべて自分で計算しなければならないのです。

主体性を持って働くことで、まわりに感謝ができる

フリーランスに興味を持っている人の多くは、「好きなことを仕事にしたい」と考えているかもしれません。

私の場合もそうでした。
まず組織が苦手なため、どこに行っても人間関係では苦労をしました。満員電車での通勤、嫌々参加する会議や飲み会に、何の意味があるのだろうと昔は毎日考えていました。好きなことを仕事にできたら充実感が得られるはず、とも思っていました。

でも、個人で仕事を請け負うことが増えてから、その考えは変わりました。
面倒な人間関係や窮屈な社会のルールは、実は私たちを守っているものだと気がついたのです。
毎日通勤があれば、嫌でも私たちは規則的な生活を送りますし、トラブルが起きて上司から罵声を浴びせられても、とりあえずは会社の誰かが助けてくれます。
辛抱していればその日の給料も入ります。

フリーで働けば、朝も夜もよくわからないような生活になり、生活リズムも乱れがちになります。
生活が乱れれば、仕事の精度が落ち、さらに体調不良で納期が遅れても、責任を取るのは自分自身です。
ほとんどの会社が、借金をしてでも社員を雇ってくれています。多少赤字になっても、社員の社会保険料を会社は負担していますし、毎月の給料は払い続けなければなりません。

私はキャリアチェンジで会社員から離れたことで、皮肉にも会社員の環境が、いかにありがたいかを実感しています。好きなことがあることは素晴らしいことですが、人の役に立たなければそれは仕事として成り立ちません。逆を言えば、どんなに嫌な仕事でも、人の役に立っているならそれは素晴らしい仕事です。

倒産した会社の役員を含め、今では関わったほとんどの人に感謝をしています。

フリーライターをサブに戻し、パラレルキャリアへ

以前はライターメインの活動をしていましたが、今現在は旅行業の派遣と、IT企業でのアルバイトの掛け持ちをメインに戻しています。フリーライターは縮小して、サブ活動として継続しています。
収入を安定させるためですが、同時に会社に雇用されれば、厚生年金などにも加入させてもらえるからです。

忙しい毎日ですが、会社員と異なり平日にお休みを取れるので、役所や郵便局に行けたり、まとめて用事を片付けられるところがメリットです。
また、私は体力があるほうではないので、週5・8時間以上労働必須のルーティンを強要されないことも生産性アップにつながっています。

異なる業界を掛け持っていることで、リスク分散にも対応しています。

今回のコロナ禍により旅行業界は大打撃を受けましたが、幸いIT企業でも働いているため、経済損失を最小限に抑えることができています。
IT企業の多くは日ごろからテレワークの体制を整えています。私のいるアルバイト先も、正規社員だけでなくパート社員を含め、全員がすぐにテレワークに切り替わりました。
さらに、細々とではありますがライティングのお仕事も請け負っているため、原稿の副収入もあります。

キャリアチェンジで失敗しないために

メジャーな働き方ではないかもしれませんが、紆余曲折を経て現在の働き方に行き着きました。
今思えば、20代のうちに最新のITシステムを使ったテレワーク導入提案に関わっていたことが、フレキシブルな働き方につながっています。

これからキャリアチェンジに挑戦しようと思っている人へ、伝えたいメッセージがあります。

「こんな仕事をしたい」という希望や理想は大切です。でも、よほど嫌な仕事でない限り、最終的には相手の役に立つことで、どんな仕事でも大きな満足につながっていくと思います。
そのために「どのような環境なら、自分は最大限に力を発揮できるのか」という「動機づけ」も、しっかり自己分析することをおすすめします。
福利厚生や賃金などの待遇により動機づけられる人もいれば、社会貢献度などに意味を見出す人もいます。動機づけは会社が与えるものではなく、自分にしかわからないことです。

自分なりに分析をしっかり行えば、「思い描く理想と現実が一致しない」というミスマッチは最小限に抑えることができると思います。

私の事例が、キャリアに悩んでいる人のために少しでも役に立てば嬉しいです。

「マーキャリNEXT CAREER」無料キャリア相談実施中

マーケタースキル診断公開中!!

関連記事

検索条件を変更する

フリーワード

記事カテゴリ
タグ