働き方改革が施行されたことにより、会社の体制や制度が変わったなんて人も多いと思います。企業も個人も今まで以上にビジネスマンのキャリア展望に目が向けられている中、マーキャリ会員によるキャリアチェンジに伴った体験談をシリーズものとして連載していくのが本企画です。
今まさに自身の今後のビジネスライフに向けて働き方を変える動きをしている方もまだキャリアプランが漠然としている方も参考になる内容になっておりますので是非ご覧ください。
今回の記事投稿者:池田庸平さん
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飲食店経営を行う会社に勤め、約7年半という歳月の中でかかわったブランドは5種類、店舗数にすると20を超えるという状況の中で、私が築いてきたキャリアアップの方法をお伝えできればと思い、今回記事にさせて頂きます。
今回の記事をお読み頂くことで、同業種と思われながらも従事する側の立場で言えばブランドが変われば異業種ともいえる、飲食業界の中でのキャリア形成を大枠でもご理解頂ければと思います。
特にマネージメントを担当される方には参考にして頂ける部分が多いかと思いますのでお付き合いください。
担当したブランド
・大手ファミリーレストランチェーン(アジアン系)
・大手焼肉チェーン
・大手焼き鳥チェーン
・PVカフェ業態
・PV中華業態(高級志向)
*PV=プライベートブランド(自社ブランド)
最後に挙げた中華に関してはマネージメント分野のみでしたが、他の業態に関しては現場でのオペレーション(調理・ホール作業)はもちろん、マネージメント全般、社員教育も行っておりました。
まず最初に担当したのが、大手ファミリーレストラン業態でした。
こちらでは調理師として主に勤務しており、通常のメニューに加え、日替わりメニューや季節限定メニューの考案も担当しておりました。
そして1年ほどで新店立ち上げのメンバーに選ばれ、同ブランドでの初の異動となりました。
異動先ではキッチンの責任者、店舗の副店長として、チームをまとめるという責を初めて負うこととなります。
当時25歳の私にとっては従業員との年もまだ近く、先頭に立って走っていれば自然と周りも付いてくるというような状況でした。
その中で1年ほど他の従業員と切磋琢磨しながら、調理技術と接客サービスを考える機会を設けることが出来ました。
そして入社3年目に突入するという春、今回のテーマでもある異業種への挑戦となります。
ここまでで培ったものを軽くまとめます。
・レストラン業態での調理技術
・ホール業務全般
・サブリーダーとしての動き、考え方
本来は活かせる部分があるのですが、これがほぼ無駄になります。
それは私の経験の浅さから、判断を誤ることとなるからです。
この異動では、大手レストランチェーンからPVカフェ業態への異動となります。
それも年間売上1億円を超える店舗から、その半分以下の売上かつ赤字店舗への異動となりました。
これはそれまでの業績を評価され、赤字脱却を考えての会社側の判断ではありましたが、ここで一度大きな挫折を味わうこととなったのが、以後私の大きな成長のきっかけとなります。
そこでまず取り組んだのはメニュー開発です。
当時オープンして10年以上も経過した店舗であり、それぞれの店長が赤字脱却を目指して好き放題したというのが私の正直な感想でした。
そして不要なメニューの削除、粗利調整、新メニューの考案を最初に取り組むべき仕事と考えました。
しかしこれが大きな間違いでした。
初めての店長業務であり、既存店という難しさがそこにはありました。
前回の勤務店舗では新店ということもあり、全ての従業員が社員のことをまっすぐ見ておりました。そういった状況と同ブランドでの経験もあり、信頼を勝ち取るという本来は難しい工程で挫折することがありませんでした。
しかしながらこちらの店舗では赤字体質から脱却できずに会社としての対応もおざなりになっており、勤務する社員への信頼がほぼゼロという状態でした。
これに気付くのに私は最初の1ヶ月を無駄にすることになり、そのスタートの間違いからその後、約半年間を無駄にすることとなります。
これは今となれば簡単なロジックです。
・現場の温度感
⇒社員を信用していない
⇒新しいことへのチャレンジ精神がない
⇒改革に反対する既存勢力が存在する
つまりはこの既存勢力、よくいうお局さん的存在を攻略することが既存店運営の攻略のカギだったのです。
そこに20代半ばの若手店長がいきこんで改革の声を上げても誰も賛同しない、賛同できない土壌がそこにはあったのです。
ですので、2ヶ月目からは大きな方針転換を図る必要がありました。
それは企業マネージメントの肝となるリーダーシップ論の応用です。
実際に現場を取り仕切り、最前線での改善を試みた最初の一か月を反省し、自分以外のリーダーを立て、その方に改革を行っていただくという手法です。
つまりはお局さんを攻略し、自分の代わりとなって改革を進めてもらうという方向に舵を切ったのです。
ここを攻略するのに異動から半年もの期間を費やすこととなりましたが、そこからの改善スピードは目を見張るものがありました。
当然タクトを振るのは私ですが、実行部隊としては全従業員を巻き込むことに成功し、個人の力では成し遂げることが出来ないスピードでの改善に繋げることが出来たからです。
そして店舗の売上・利益ともに大きな改善を図ることが出来ました。
結果、店長就任後1年足らずで年間収益がゼロというラインに到達し、次期店長への引継ぎを十分に行い、私はまた新たな挑戦となります。
それがPVカフェ業態から大手焼き鳥チェーンへの異動です。
そしてここでの挑戦が私の確固たる自信へと繋がります。それは前回の大きな失敗から学んだ「店舗に合った改善の手法、段取り」というものを考えるところから始める事が出来たからです。
そしてこちらの店舗では改善が異動当初から順調に進み、同FCブランド内で月間売上全国2位まで売上を伸ばすことに成功しました。
異動から半年がたったころでした。
既存店であり、こちらも前のカフェ業態の店舗と同じく開店から10年以上の店舗です。売り上げは低迷気味で、私が就任する前までの売上は右肩下がりの傾向にあり、利益も同様でした。
ここで取り入れたことはたった二つ。
・既存の従業員を最大限活かす
・レストラン、カフェ業態で顧客ターゲットにしていた層を取り込む
ここで前回の失敗が活きます。
もともと人手が不足しがちな店舗ではありましたが、中心メンバーから声をかけ続け、既存メンバーの営業に対する意識改革を進めました。これを行う事によって、平日の営業レベルであれば自分がおらずとも安定した営業を行う事が出来るようになりました。
結果、営業外では販促活動に集中し、新たな顧客層を取り込むことに集中することが出来るようになりました。
そして地域の居酒屋業態では圧倒的な客数・売上を残すことが可能になり、全国2位の結果を残すことが出来ました。
このように業態が違う店舗に異動や、独立・開業されている方が違う分野の飲食店を行うことはデメリットばかりではありません。
業態が違うからこそ、お客様ニーズを多角的に捉えることが可能になり、本来はターゲットとは考えにくい層も狙っていく事が出来ます。
またチーム運営に関して大事な部分はまず「人」、それも「既存のメンバー」の運用が重要となってきます。
この後も色々な業態を担当することになりますが、基本はこの二つの応用です。
もちろん店舗毎の難しさはそれぞれありますが、チーム運営の重要な考え方の一つとして、一人で出来ることの限界を知ることはリーダーシップを取る上で非常に重要なこととなります。
最後に私のように飲食業界でキャリアアップを重ねていく上で、重要なことをまとめて締めとさせて頂きます。特に業態をまたぎ、専門的な知識や技術がなくても必要となってくることですので注意してご覧ください。
〇異動前に出来ること
・引継ぎ
⇒自分がやってきた実績をしっかりと現場に形として残してください。
これをしっかりと行う事で、自分が異動したのちにも自然と自分が残した功績が一人歩きで評価を高めてくれることになります。
・異動先の数値把握
⇒どのような店舗なのか、どのような売上・利益体質なのかを数字の部分から明確にしておくことで、どの様な改善が必要か見えてきます
〇異動後にすること
・人心の掌握
⇒店舗の規模にもよりますが、小規模であれば細かな部分まで。中規模以上であれば核となるメンバーの把握、掌握が必要。
*この「把握」を間違えると大きな失敗となりますのでご注意ください。
・改善を取り組み始められる時期の判断
⇒改善の程度にもよります。小さな改善なら特に新人さんを巻き込みながら外堀からも攻められます。
大きな改善であれば、チームの中核を担うメンバーの選定、場合によっては育成が必要となります。
技術の習得は営業に参加していればおのずとついてきます。
改善に確固たるリーダーシップが必要であれば営業の中心に立つ必要がありますし、すでにリーダーが存在している場合で言えば、その方を味方につけることでその必要性は低くなります。逆にその状況で自分が力を発揮しすぎるとチームとしてのバランスが不安定になってしまうこともあります。
今回私の経験から特に飲食店において異業種間でのキャリアアップを記事とさせて頂きました。
しかしながらチーム運営という観点からは、決して飲食業界に関することだけではないかと思います。キャリアを作る上で重要なことはどのような足跡を残せるか、その足跡が大きければ大きい程、後々の自分の評価に勝手に繋がるものだと私は考えています。
今回の記事が皆さんのキャリアアップの一助となれば幸いです。
最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。