• 2018/10/16
  • インタビュー
  • 突撃!となりのマーケター

「仮説を立てて、実証していく。」自ら築いたマーケティング

  • マーキャリ 編集部
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マーケティングリサーチを主軸に総合マーケティング支援事業を展開する株式会社ネオマーケティングで、マーケティンググループのマネジメントを担当している高倉さんへインタビューを行いました。3年前に自身でマーケティング部門を立ち上げてから、マーケティング部門を社内で確立していくために必要なポイントや営業との関わり方など、マーケティングスタートアップ企業に役立つお話を聞くことができました。

*現状のマーケティング活動概要と課題



*主軸事業であるマーケティングリサーチから伺えるBtoCとBtoBの違いとは? ―まずネオマーケティングの業務と魅力について教えて下さい。

高倉さん(以下、敬称略)
ネオマーケティングはマーケティングリサーチを主軸にサービスを行っているので、クライアント企業のマーケティング活動の後方支援を担っています。2000年に創業したのですが、当時は「効果測定の大切さ」や「データの大切さ」に注目が高まっている時代でした。現在では600万人を超える独自のアンケートモニターを有し、様々なマーケティングリサーチを行っています。また、リサーチデータを活用したPRも実施しています。主なクライアントはメーカーさんが中心で、市場の声を大切にしているという特性があります。

当社の強みは、特定の市場にターゲットを定めていないということです。弱みに聞こえなくもないのですが、ターゲット市場を定めないので様々な市場を横断するリサーチから知見を得ることができるということ。そうして得た知見を他業界のマーケターに伝播できることが大きな強みといえます。

――BtoC、BtoB、どちらのサービスも行っていますが、その違いについて思うことはありますか?

高倉
当社はBtoCも BtoBも両方のリサーチを行っています。BtoB案件の中にはBtoBtoCの案件も多くあります。両者を比較して思うことは、


やはり「BtoBは難しい」ということです。案件数はBtoCの方が多いのですが、BtoB案件は難易度が高いので経験値の高いメンバーを中心に動いています。そこを若手がサポートしてプロジェクトを回すといった形です。
当社のアンケート会員は600万人以上います。ただしBtoBに関するリサーチは、どうしてもリサーチの分母が少なくなる。特に経営に近い層は少なくなってしまいます。その中から良質なリサーチ結果を得なくてはいけないので、そこにはノウハウが必要になってきます。

営業やプランナーは、「クライアントが何を求めているのか?」「何がミッションなのか?」を的確にヒアリングして把握することを心がけなくてはなりません。また、ヒアリングした内容を的確にプロジェクトメンバーに共有することも大事にしています。当社のマーケティングはBtoBなので、常に意識しなくてはいけないポイントです。
*マーケティング組織を社内に認知させ、活動を軌道に乗せるため ――マーケティング組織とミッションについてお聞かせください。

高倉
当社の事業部は、管理系、システム系、営業系、運用系、マーケティング系に分かれていますが、私が統括しているのはマーケティンググループです。マーケティンググループは総勢5名ですが、3つのチームに分かれてミッションを遂行しています。ひとつはWEB制作チームでここではSEOやWEBマーケティングなどを中心に行っています。もうひとつが営業推進チームで営業のサポートが中心のチームです。このチームでは営業とマーケをつなぐような業務を担っているので、ここでは中途社員の教育も行っています。最後がマーケティングチームです。

このマーケティングチームでは、BtoBマーケティングで行うことの全般を担います。WEB(コーポレートサイトや会員サイト、オウンドメディアなど)の運用やコンテンツの提供、フォーラムの運営、そして休眠顧客のリストに対してMA(=マーケティングオートメーション)を活用したナーチャリングを行い、インサイドセールスを経て営業にパスを出すというような活動と多岐にわたります。業務内容に対して少数精鋭の構成ですので、他の部門からの支援を受けつつ運用しています。

――具体的な新規案件獲得の活動を教えて下さい。

高倉
新規獲得のマーケティング活動は大きく3つあります。1つ目はフォーラムでの名刺情報の獲得です。2つ目はWEBからの問い合わせです。これは直接運用しているWEBサイトに問い合わせしてくるものと、比較サイトなどのWEB広告を経由してくるものがあります。最後がオウンドメディアで資料ダウンロードしていただいた方へのアポイントです。これら3つの施策に共通しているのは、それぞれのリードが今どのフェーズにいるのかを可視化して管理し、MAツールを活用したナーチャリングを行っていることです。

――課題はありますか?

高倉
やりたいことや、やらなければならないことに対してリソースが足りません。多くの企業でも同じことが起きていると思うのですが、営業部門などと違いマーケティング部門はすぐにリソースを増やせないというのが課題だと思っています。必要なことは分かっているのですが、目の前のことを考えると営業を増やすことを優先し、マーケティング部門は後回しになってしまう。そこを改革するために、もっと数値的な裏付けを作っていく。そして役員を説得する。というような活動もマーケティング部門のミッションのひとつだと思っています。

ただし、どうしてもマーケティング活動は受注までに時間が掛かってしまうため、社としてマーケティング活動の重要性を理解してくれていても、一般社員の中には理解してくれない方もでてきます。この問題は、私が異業種交流会などでBtoBマーケティングの担当者とお話しすると、だいたい同じ悩みを抱えていて、皆さん同じ問題にぶつかっていると思います。

――どう対応されたのでしょうか?

高倉
こうした課題には、社内プロモーションが重要になってきます。「マーケが何をやっているのか?」を社内に伝える努力が必要です。これを怠ると組織として大きくなっていかないと思います。
特に当社は既存クライアントにかたよった売り上げ構成なので、マーケティング活動の成果が見えにくいということもあります。ただし、既存クライアントが永久に仕事を発注してくれる保証はありません。企業としてのリスクヘッジの側面や、営業が既存顧客に注力するためにも、未来の既存顧客となる新規顧客を獲得するマーケティング活動はとても大切です。この重要性を社内で伝え続けることが必要です。

当社では、営業会議や全社員を集めた会議の場で、しっかりとマーケティング活動と数値的な効果を伝えることを行っています。営業会議では数値的な報告。全体会議では活動報告。ここでの報告では「営業の●●さんはマーケティングからのリードに対して活動して受注しました」というように具体的に個人名を挙げて報告するようにして、現場のモチベーション向上も意識しています。

―社内の認知は向上しましたか?

高倉
数値の報告を行うことで一部のメンバーは動きが変わってきています。最初から全員の意識が変わることは難しいですが、まずは一部のメンバーの意識を変えることが重要だと考えています。
営業の中から「一緒にマーケティングの仕事がしたい」と言われるようになりました。中には、「BtoBマーケティングをやっていきたい!」とプレゼン行動を起こしたメンバーも出てきました。こうしたメンバーとは、今後一緒にマーケティング活動に取り組んでいくことが決まっています。
*マーケターに必要な思考プロセスをどのように身につけるのか ――高倉さんご自身のマーケターとしての経緯を教えて下さい。

高倉
前職も調査会社で、企画営業を担当していました。小さな会社だったので上流から下流工程まで全てひとりでやっていました。全ての業務に携われるので楽しかったのですが、リソースが足りずに数多くの案件に携わったり、複数案件の同時進行が難しかったです。
そこでネオマーケティングに転職したのですが、最初は調査のプランナーとして活動していました。そうした中で、いろんなクライアントの担当者と関わって、多くの方が広い視点で長期的に物事を捉えていることを知りました。これは正にマーケティングに必要な視点です。

特に当社のクライアントはメーカーさんが中心なので、先進的なマーケティングを行っている企業が多かったです。ペルソナを考えてライフスタイルを仮設するとか、購買行動を考えるとか。そうした考察からマーケティング活動をプランしていく。そして、その活動をちゃんと効果測定して、かつピンポイントの施策にならないようにつなげていく。こういうことを行っている人たちと関わっていくことで、自分ももっとマーケティングを突き詰めていきたいと思うようになりました。

でも当社には、私が就任する3年前まで専任のマーケティング担当はいませんでした。なので、自分からマーケティング部門を立ち上げたいと名乗り出ました。先進的なマーケティングを行っているクライアントさんに対して、私たちも専門的に応えていくことが重要だと考えるようになったこともあります。

――どうやってBtoBマーケティングの知識を高めたのでしょうか?

高倉
案件ごとに蓄積されていく知識や引き出しはありましたし、書籍やWEBで調べたりもしました。しかし、当時は特にBtoBマーケティングに関しては情報が少なかったです。一般的なマーケティング概念は書籍やWEBで手に入るのですが、BtoBの実践に落とし込んだものは皆無でした。そこで、営業に同行してクライアントのマーケターに話を聞きに行ったりすることが多かったです。
気になる企業との商談をチェックして、担当営業にお願いして同行していました。やはり実際にBtoBの現場でマーケティングを思考錯誤している人の話を聞くことが最も勉強になりました。担当営業も、場が盛り上がるので喜んでくれていました。が、人によっては「商談の邪魔だよ」と言っていましたが(笑)

でも、こうした営業同行から、BtoBマーケティングの顧問契約やBtoBマーケティングの講座という、営業が当初予想していなかった案件まで発展したお客さんもいるんです。

――マーケターとしての失敗体験を教えて下さい。

高倉
社内に前例がないことを行ってきましたので、失敗体験は多いです。特にWEB広告では効果が出ないという苦い経験があります。これは、競合がやっているからやってみよう。とか、広告販売の営業トークに乗ってやったことが原因でした。フォーラムでも失敗したことがあります。自治体の観光やPR担当者向けのフォーラムでは、事前調査が足りずに我々のサービスと来場者のニーズがマッチしなかったりと。これは役員からも怒られました。

――一方、成功体験を教えて下さい。

高倉
いま実際にやっている活動で、オウンドメディアからリードを獲得したり、休眠顧客をナーチャリングしたりしているのですが、この活動は多くの結果につながっています。
この活動に関しては、最初は自分でテレアポのコールまでやりました。資料ダウンロードした100件のリストに対して自分でコールして、アポ率を出して訪問までしました。そこから商談化率を把握して…、他のメンバーの協力もあって結果5件の受注を獲得することができました。これをKPIとして以降のマーケティング活動をスタートさせたことがあります。

過去に、マーケティング活動で獲得して営業に渡したリストが放置されていたということを経験していました。何もマーケティング活動をやってきていなかった組織にリストだけ渡したとして、それがいくら優良なリストであっても動けないんだと思います。そこで、自分で動いてKPIを作る。それがベースになったのでその後の活動がやりやすかった。というのが成功体験です。

――今後マーケを目指す人へメッセージやアドバイスはありますか?

高倉
マーケティングにはゲーム的な面白さがあります。「仮説を立てて、実証していく。」ということを繰り返して下さい。失敗はあるでしょうが、成功した時の面白さを味わうことができます。そしてその成功には数字がついてくる。誰にも出来ないことをやったという感覚もあります。

この「仮説設定する」ということがとても大切です。仮説設定ができなくてはマーケティングになりません。私は、常に新聞、雑誌、ニュースなどから情報収集を心がけています。そして収集するだけでなく未来予測を行う。考える癖をつける。今のトレンドから次の市場を予測するように。こうした仮説設定する思考が、日々のマーケティングに変換されていきます。
社員と飲みに行く時もそういう話をしますね。嫌がる奴もいます(笑)

――マーケティング活動のスタートアップで多くの企業が抱える課題を解決してきた高倉さん。
そのお話からはチャレンジ精神を垣間見ることができました。失敗を恐れずにチャレンジすることこそが、高倉さんがマーケティング組織を社内に定着させた源泉となったのだと感じました。
本日はありがとうございました。


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