成功体験を整理分析する事~伝説の営業の真実~
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営業の世界で働き始めてもう40年以上たちます。長くやっているので営業成果において、自分でチャンスを掴んだり、会社の業績に大きく貢献したりした事があります。
リクルートでアルバイトとして営業を行っていた時代、正社員へ昇格する試験を受ける権利を得るために達成しなければならない業績目標がありました。当時扱っていた求人広告で500万円ほどの金額の受注を、期末ギリギリで頂く事が出来て無事に達成し、社員試験を受けて正社員になりました。また会社をはじめて2000年頃法人営業コールセンター系の事業を始めた時に、あるベンチャー系のセミナーに参加して、話している講師の社長と名刺交換をしてメールで連絡をとり、2回目の訪問で5000万規模の受注を取りメンバーからびっくりされた事などがあります。こういった話は、営業の世界では伝説化して伝わる事も多いですね。
私も営業を始めたばかりの頃は、先輩たちの伝説を憧れの心で聞き営業の経験を積んで来ました。私の営業力によってこういった難易度の高い状況での受注が出来たように見えますが、実はすべてお客様側に発注すべき必然性がちゃんとあったのだと思います。そういう本質的なニーズがある顧客にタイミングを合わせてアプローチして、相手の立場に立った提案が出来た事は営業力と言えるかもしれません。本来ニーズのないお客様に無理やり営業して結果が出る訳ではありませんね。
SNSで受注率100%の営業コンサルの広告を見た事がありますが、どこに営業にいっても全部受注してしまう営業はありえないのだと思います。昭和的な営業文化では、ニーズがないお客様から大きな金額を短いリードタイムで受注する事がかっこよく伝説的に語られ話が盛られる事も多くあり、本質とは違った認識が共有されている可能性もあったかと思います。難攻不落のお客様を落としたなどの場合も、多くはなんらかの理由でそのお客様は今まで発注していなかっただけです。例えば社長が変わったとか、業界の環境が変化したとか、環境の変化やお客様側の事情により発注する事になっただけで、その時にタイミングよくその受注シーンに立ち会う事ができた営業パーソンが伝説化される訳ですね。もちろんそのタイミングにいる事が重要です。これはセンスのあるサッカーのフォワードみたいなものです。シュートを打てる場所を想定してそこに居るという事ですね。
一方以前私がコンサルティグを行っていた時のお客様である営業責任者の中には、昭和の成功体験(伝説的な話)を引きずっていて、なぜのその成功が起きたのか、現状との違いはどうなのかなどをきちんと分析もしないで、とりあえず手法だけその時のイメージのままやってしまおうという方も多かったです。もちろん時代が変わっても普遍的に通用する知見やノウハウはあると思いますが、全く同じ状況はありえないので、応用できるものとそうでないものを冷静に分析しておくことが必要ですね。成功体験があった時にただの伝説にしてしまうのではなく、成功要因を分析して再現性のある事とそうでない事に分けて整理しておく事がとても重要だと思います。
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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。