私の会社はパブリックカンパニーを目指しているので、会社の中にコーポレートガバナンスを考えたルールや監査の仕組みなどが増えています。会社がまだ小さくて10人くらいの時は、最低限のルールしかなくて、後はその都度みんなで話して決めてやってきました。
会社が成長して人数も増えていろんな部門ができて、企業としてのリスクが増えてきます。当然ルールも増えますね。自分が若い時は、理解が足らず ルールに縛られて働く大手企業や役所には 漠然とした嫌悪感をもっていた気がします。
24歳までは、社員数50名以下の中小企業でしか働いた事がなく、当時転職して入ったリクルートがはじめての大きな組織だったと思います。リクルートは当時も社員数は5000名ほどいて 規模的には大企業と言えると思いますが、自由な文化があって、もちろんきちんとしたルールはありましたが、あまり縛られている感じはしませんでした。
その後私が在職中にリクルート事件が起こって、セキュリティ対策や労働時間管理みたいな事が増えていった気がします。私自身もマネジャーに昇進して管理職になっていたので、 管理体制の重要性について、そのプロセスで認識を上げてきました。独立して会社をつくると、経費精算の仕組みとか当初作ったルールはリクルートをモデルにしました。会社として一番に決めたルールは、最初のオフィスが普通のワンルームマンションだったので、朝はゴミ出しの必要があり、社長の私もアルバイトの女性も含めて、順番に朝出社して時間までにごみ出しをしなければならないというものでした。
その後、私の会社にもたくさんのルールができて現在に至ります。ルールって、だんだん形式化してきて、そのルールが何のためにできたのか、何を目的にした内容なのかが忘れさられて、ともかくルールだからという感じになりがちですね。もちろん日常的にはそんな深いことに考えを及ぼす暇はないですし、ルールがあるからそこを考えずにやることでリスクを回避できるというメリットがあるかと思います。でも新しくルールを作る時、見直す必要がある時は、会社の成長や、従業員やステークスホルダーにとって一番成果の出る状態を作ること、起り得るリスクを最小限にして成長機会と脅威のバランスの最適値を探すなど、本質を考えることが重要だと思います。
以前、ある大手居酒屋チェーンの役員の方が「居酒屋ってどうしても現金を扱う商売なので、あってはいけないことなんだけど従業員による不正が起きてしまう時があるんですよね。ちゃんとした監視体制をつくってそういった不祥事を起こさないようにすることは、実は従業員を守るためなんです」と言っていました。罪人をつくらないような仕組みを作ることは、結果的に従業員を守ることになるのだとその時に理解しました。これも本質ですね。
大きな意味では性善説の会社を創って行きたいと思っていますが、人間の本質を理解して、その上で関わる人みんなを守れるようなガバナンスや監査の仕組みを作っていきたいと思います。
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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。