• 2021/09/01
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はりこらむ 第29回「相乗効果を発揮する時 ~新規事業開発における、主体性を持った人材たち~」

  • 萩原 張広  
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相乗効果を発揮する時

~新規事業開発における、主体性を持った人材たち~


⇒CEOが語る 第28回「リクルートで学んだ、マネジメント ~自分事としてみんなが主体的に頑張る文化~」はこちらから


  新しいサービスや事業の立ち上げを、エムエムでも何回かやっていますが、不透明な状況の中で、意見が拡散して迷い道に入ってしまう事もしばしば。そんな中で相乗効果的な感じが生まれて、うまく動き出す事もありますね。

 ビジネスの最初の立ち上げは、ある特定の人の(主にビジネスリーダーや社長とか)の発想から始まります。前にも書きましたが0→0.5のプロセスから0.5→1.0のマネタイズのプロセスに入ると、プロジェクトメンバーが様々な役割をやりながら、正解値を探す事になっていきます。なかなか見えない収益化への道筋、その中での不安や、迷い。これやってて本当に大丈夫なのかとか。日々起こる顧客接点や開発現場における事象に、振り回されて、何が正しいのかが解らなくなるってありますよね。

 それぞれのメンバーには、それぞれの意見があって、うまくコミュニケーションが取れないと、憤懣がチームの中に生まれたり、変な派閥みたいのが出来て、他者を攻撃するようになったりします。もちろんリーダーの存在は大切ですが、そこに関わるメンバーの主体性が試されるんだと思います。

 で、最近ちょっと考えたフレームがあります。主体性のある人とプロジェクトのミッション難易度の関係についてです。

 ここで言う主体性のある人とは、個人として自分の意見もちゃんと持っていて、その上で他者の違った意見もリスペクトしてコミュニケーションのとれる人の事ですね。自分の意見を持たず、他者の意見に対しては否定的なだけで、個人的な思惑のために、2面性を持ったコミュニケーションをとるタイプの人がその逆だと思います(ここでは主体性のない人たち)。

 また難易度の高いプロジェクトミッションとは、ゴール設定のレベルの高さと、資金やリソースの充実度ですね。新規事業プロジェクトにおいて相乗効果を発揮するには、主体性を持ったメンバーがどれだけいるかと、難易度の高いミッション設定というのが関係してくるのだと思います。

 このフレームで見ると、

 A主体性の低い人たちで、ミッション難易度の低いプロジェクト

 B主体性の高い人たちで、ミッション難易度の低いプロジェクト

 C主体性の低い人たちで、ミッション難易度の高いプロジェクト

 D主体性の高い人たちで、ミッション難易度の高いプロジェクト

 の4つに分ける事が出来ます。

 まずはAの主体性の低い人たちで、ミッション難易度の低いプロジェクトですが、これは、資金は潤沢にある大手企業の新規プロジェクトで起こる事があります。

 予算はあって、本業は利益が出ているので、最近流行っているテーマを新規事業として、立ち上げてみようみたいな感じですね。

 上司の指示や任命ではじまり、当事者がその事業に対して強い思いを持っていない事も多く、予算やリソースはあるけど、プロジェクトのミッション責任も不明確な場合です。以前私が直接コンサルをしていたある大手通信企業では、そういったプロジェクトの残骸みたいなサービスが死ぬほどありました。会社としては予算だけ消化して、人材の育成にもつながらないで終了。その予算で食べている人たちもいる訳ですから全部無駄とは言えませんが。

 そして2番目の、B主体性の高い人たちで、ミッション難易度の低いプロジェクト。
これも大手企業のプロジェクトや、多額の資金調達を行ったベンチャー企業にあるケースで、志を持った主体性のある人材はいるのですが、悪い意味で資金的な余裕や、リソースがありすぎるため、苦しくなった時にぶつかり合ってなんとか別な方法を考えるよりも、それぞれが十分な権限とリソースを持ってやれるようにしてしまい、どんどんお金がかかって行きます。

 結果事業が軌道に乗ればよいですが、そうでない場合はむしろ多額のお金が溶けていく事になります。プロジェクトに参加したメンバーはそれなりの経験値を積んでいく事が出来ますが、そういった人材は、だいたい外に出ていくので、事業が軌道に乗らなければ、出資者や会社には何も残りません。昨今の金あまり現象もあって、多くのSaaS系ベンチャーに多額に資金が入っていますが、そういった結末を迎える企業も出てくるでしょう。

 そして、C主体性の低い人たちで、ミッション難易度の高いプロジェクト。これは多くの中小企業または資金調達前のベンチャー企業で起こるケースですね。

 お金もリソースも少ない状態で、新しいビジネスの収益化を目指す。社長やビジネスリーダーはやる気があるのですが、他のメンバーは言いなりで主体性が育っておらず、そんな中、当然個々のメンバーには負荷がかかりますから、主体性を持ちえない人たちは途中で離脱しはじめます。そしてチームとして崩壊していく事になります。そう言った状況を機会として捉えて、主体的にプロジェクトに関わるメンバーが登場しはじめると変わっていきます。

 そして、最後のD主体性の高い人たちで、ミッション難易度の高いプロジェクト。この環境の時にはじめて相乗効果が発揮される可能性が出てくるのだと思います。

 ビジョンへの共感がありながらも、それぞれが主体性を持って意見を言う、他者の意見を否定とはとらえずに、一つの違う客観的なものとしてリスペクトできる。そういった人たちが、資金やリソースの限られた、ぎりぎりの状況の中で、ぶつかりあう事で、普通にはない1+1が2以上になるようなアイデアや革新が生まれ、実現していく。そしてビジネスとしての成長曲線を描くようになるんだと思います。

 今関わっているプロジェクトがそうなっていく様に尽力していきたいと思います。


⇒次の記事はこちらから



■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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