• 2020/08/06
  • 連載企画
  • はりこらむ

はりこらむ 第7回「キャリアチェンジ!夢のために自分を変える」

  • 萩原 張広  
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キャリアチェンジ!夢のために自分を変える

~なりたい君に明日からなればいい、

だって君を知っている人は誰もいないのだから~


⇒第6回「多くの命を守るということ ~本当の意味のヒーローとは?~」はこちらから


営業・マーケティングに関わる仕事をもう40年以上やっていますが、最初から営業の仕事を目指していたわけではありません。高校までは、どちらかと言うと人と積極的に話をするタイプではなかったですし。でもなんか将来は独立したいみたいな漠然とした夢はあって、高校卒業後、手に職をつけようと技工士の見習いとして横浜の歯科技工所に就職しました。入社したものの工場で日々入れ歯を研磨する仕事が全然楽しくなく、早々に退職。「技術がだめなら営業の仕事かな」と思い、英会話カセットの販売会社を受けに行ったのが営業の世界に入るきっかけでした。

そして面接。明るく快活に話せてなかったと思うし、前職が技工士の見習いということで、面接官に「なんで営業の仕事がやりたいの?」と聞かれました。
「正直、営業の仕事が好きとは思いませんが、技術の仕事をしてだめだったし、将来は独立したいと考えているので、営業の仕事を通じて成長したいし自分を変えたい」
すると面接官が「どんな風に変わりたいの?」
「もっと積極的に人と話が出来て、いろんな人に影響を与えられるようになりたい」
それに対しての答えが

「なりたい君に明日からなればいい、だって君を知っている人は誰もいないのだから」

要は採用ということらしい。
後でわかりましたが、この会社、完全歩合給制で、給料は1円も出ず、社員採用でもなんでもないので、よっぽどだめでなければ、みんな合格みたいな感じでした。でも、この言葉は自分に大きな力を与えました。だって、今までの自分を知っている人の前で自分を変えるって難しいじゃないですか。確かに新しい人たちの前なら変わることが出来るかもしれないと思いました(人生を斜めに見ていましたが、真理には素直だったので!)。

入社初日は、大きな声で「おはようございます!」と言って入っていきました。その後も、歓迎会に備えて、当時まだ苦手だったカラオケを前日一人暮らしのアパートで練習したりもして。「今度の新人元気なやつだな!」みたいに今まで言われたことがない感じになりましたね。

その会社では、毎朝新興宗教みたいな感じの朝礼がありました。カーネギーとかナポレオンヒルの文章を全員で唱和したり、掛け声上げたり、社歌歌ったり。そして前日の受注者の発表と表彰があり、朝礼だけで1時間半くらい毎日かけていましたね。特に「ポジティブシンキング」というのがキーワードであり文化の象徴でした。あいつはポジだとかネガ(ネガティブの略)だとか使われていました。要はどんな時も前向きに考える。後ろ向きな発言はしない、みたいなことなんですが。ネガの発想や発言しているともう人間じゃないみたいな扱いをされて、一種の洗脳みたいな感じでした。でも今思えば、そうやって無理やりモチベーションを維持しないとできない仕事だったのだと思います。

BtoCだったので、個人宅に一日100件アポ取り電話をして、お客様とは喫茶店で商談をします。3件アポイントが取れて、3件ちゃんとプレゼンできると1件売れるのが基本のシミュレーションでした。40万円くらいする英会話カセットの教材を1セット売ると、5万円の歩合給がもらえます。

この時いろいろな営業話法の技術を学びました。
Yes but法やYes If法、ブーメラン法とか。これは応酬話法の基本で、お客様がNOを言った時にどうやって返すかですね。基本的には、お客様の言うことを否定せずに一度受けて、その上で「しかし」や「もし」で返す。また質問してきたときに、「お客様はどうお考えですか」とそのまま返しちゃう。場の設定では、喫茶店で座る時に、自分の後ろに壁があって他の景色が見えなくて、お客様が集中できるところに座る。信頼を勝ち取るために、人をほめる奴に悪い奴はいないということで、「私は上司を尊敬しています」「あのお客様に感謝しています」と言う。クロージングの時は、相手の片目を両目で見る。2対1になるから心理的数的優位になるらしい。本当かなと思ったけど、やってみると結構これで心が優位に立てたりする。あと私は英語が全然できなかったのですが、あるフレーズだけ発音も含めて死ぬほど練習しました。お客様と話している時に、先にさらっとそのフレーズを口ずさむ。そうすると、「萩原さんは英語できるんですか?」なんて今さら聞かれませんね。

一緒に入社した人は、売れなくて3か月でだいたい辞めていきましたが、私は1年後には100人くらいいるオフィスで3番目に売上を上げる営業マンになっていました。まあ、予備知識も既成概念もなかったので、素直に言われたことをちゃんとやり続けただけなんですけど。10代の後半からの1年半くらいですが、この期間に学んだことが、そのあとの営業マンキャリアの礎になったと思います。いろんな営業技術を身に着けたことも大きいですが、一番大きかったのは「ポジティブシンキング」という考え方ですね。ただ明るく振る舞うとか大声出すとか言うことじゃなく、最後まで陽転思考で可能性を追求するということですね。どんな状況の中でも、受注にいたる可能性を想像して、それを具体的な行動にする。どんな時も考えればやれることってたくさんあるんですよ。それを実際にやるかやらないかだけ。

このあと建材会社の営業や、リクルートに入って求人広告の法人営業をすることになる訳ですが、ベースとなる営業スタンスを身につけられたので、その後はそれに技術と経験を足していく感じでクリアーできたような気がします。新しい職種や仕事にチャレンジする時って、技術やスキルに目が行きがちなんですが、実はその仕事に必要なスタンスとか考え方があって、そこをどう身に着けていくかが重要ですね。

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■萩原 張広Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる

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