はりこらむ　第79回「どんな経営者になりたいか？ ～社長になって得られるもの～」

　20歳くらいから、夢は社長になる事でした。当時働いていたスナックに来ていた社長さんに憧れたのがきっかけですが、どんな社長になりたかったかと言うと、当時はそこまで具体的にイメージ出来ていませんでした。

　でもその社長さんが社員の人を何人か連れてその店に飲みに来ていたので、はじめから個人事務所のような感じではなく、組織のある会社の社長をイメージしていましたね。そういった背景もあり、マネージメントを経験したくてリクルートに入りました。今の会社をスタートする時も、私の他に社員2名とアルバイト1名の4人体制でした。当時から、かみさんは自宅勤務ですが、手伝ってもらっていたので実質5人ですね。

　その後リクルートにいた仲間が4名くらいジョインして人数も増えていくのですが、当然リクルートのようなお給料は払える訳はなく、みんな年収が半分くらいでも来てくれたと思います。あとは出来高制にしたり。私の影響もあってか、誘ったみんなもいずれは経営者になりたいと考えていました。

　当時経営についてちゃんと勉強した事もない私は「自分自身がこれから経営者として学んで行く事を、全部オープンにして伝えていくから！」と話して、それが価値と思って来てくれたようです。その頃のメンバーは、すでにみんな卒業して、それぞれ経営者をやっています。当時ちょっとだけ兄貴分だった私が、解らないながらも学びつつ社長をやっていって、それをみんなでシェアしていました。

　会社を創ってすぐにバブルが崩壊して、苦しい時代もありましたが、キャッシュフローを重視するリアルな感じとか、売上でなくて粗利を重視する考えはそんな中から生まれてきた思想で、卒業したみんなも規模の違いはあれ、それぞれなんとかやっているようです。みんなとは今でも懇意にさせてもらっています。

　最近は会社のメンバーや若い人から自分も経営者を目指したいと相談を受ける事も多いですね。そんな時にいつも考えるのは「経営者になって何を手に入れたいか」という事です。一言で「経営者（社長）」と言っても、個人事業主という形もあるし、オーナーシップを持たないプロ経営者もいます。最近、自分なりに考えて経営の目的を整理すると、「自由、お金、影響力」なのかなと思います。もちろん全部実現できるのが素晴らしいのかもしれません。自由に事業や経営が出来て、経済的にも豊かで、そして世の中への影響力（社会貢献、知名度なども含め）も強い経営者ですね。

　一方で、自由と経済的な豊かさだけを求めるなら、今の時代はむしろ社員を雇って、組織を作るより、個人事業主か、もしくはフリーランスをネットワークした方がよいかもしれません。自由に経営をする事より価値ある事業に関われてコミットしていくのがよいのなら、オーナーシップにそんなにこだわる必要はないかも知れません。どういう状態を目指したいのかによって、勉強する事や経験すべき事も違ってくるかと思います。

　当時を振り返ると私はそこまで具体的に考えきれておらず、やりながらリアリティを上げてきたと思います。企業や経営者になるのを考える事は、本質的に自分が何をしたいのかを考える事になるのだと思います。