はりこらむ　第21回「効果性の高い判断とは？ ～自分を含む多くの人が幸せになる判断～」

　ずいぶん前に読んだ「塩狩峠」という本にとても影響受けました。三浦綾子の本で、純粋な主人公が最後は、列車の脱線事故を防ぐために、カーブに差しかった線路に自分の体を投げ出して乗客を救うお話です。その後「氷点」とかも読むようになりファンになりましたね。

　三浦綾子の小説に出てくる主人公は、クリスチャンが多く純粋で自己犠牲の心の持ち主が多いです。塩狩峠をよんだ時に、確かに主人公は自分の命で多くの人を守ったけど、彼が死ぬことで悲しむ人もたくさんいるはずで、そこらへんはどうなんだろうと思いました。なんかその自己犠牲の心と行動に感動はしたものの、思い切り感情移入できない自分がいました。

　今年の新卒向けの研修で、スタンス研修というのを私がやってます。「7つの習慣」という本を題材に使っています。この本にはすいぶん自分も影響を受けていて、バイブルになってます。この本の中に、人生の今の状態は、すべて自分が行った判断の結果であり「人生において効果性の高い判断をする事」が重要だとあります。

　それは解るのですが、「効果性の高い判断」って、いったい何なんだろうと以前から思っていました。7つの習慣によれば、自分自身の生き方の指針である「自分のミッションステートメント」に照らし合わせて正しい判断という事になります。このミッションステートメントについては私も20年前に書いて、それを毎年加筆・修正して見直してきていますが、これについては次回以降に書きたいと思います。

　最近この新卒向けの研修テキストを作成するにあたり、効果性の高い判断という意味を自分なりに考えて言語化してみました。「自分も含めた、関わりのある多くの人が、それぞれの価値観に照らして幸せになると思われる判断」がそれです。

　これって考えるとすごく深くて、このメルマガの表題は、解りやすくする為に簡略化して「自分を含む多くの人が幸せになる判断」と書いていますが、例えば、「自分も含む多くの人」と「自分も含めた、関わりのある多くの人」では、意味が違います。映画ディープインパクトで、地球の人類を守る為に隕石に衝突をする判断をする乗組員たちは、もちろん地球上に人たちの為に死ぬわけですが、でも心中で本当に救いたいと思っているのは、自分の家族や親しかった人なのではと思います。ここらへんは自分の器の問題かも知れませんが、自分が具体的にイメージが持てる関わりあいのある人たちの幸せは真剣に考えられますが、（不謹慎かも知れませんが）地球の裏側に住む人たちの事を真剣に考えられるリアリティがありません。全世界の人々の幸せを考えて命がけで仕事している人たちもいますから、そこはリスペクトしてしまいますね。

　また、「幸せになる」と「それぞれ価値観に照らして幸せになると思われる」も難しく、そもそも幸せの価値観はそれぞれの人にとって違うと思うし、それを他人である自分が全部理解できるとは思えないからです。多くの人にとっての価値であると思われる、経済合理性だけに閉じて判断すれば確かに解りやすくなりますが、幸せの意味は、そういうものだけでもないと思います。であるなら、その時もっている情報で、最善を尽くしてそう思われるという判断をするしかないのかと思います。

　そして「自分も含めた」というところですね。これってそもそも自分が何を持って幸せという定義をしているのか、自分の命をなげうって他者の命を救うことが自分の生き方に即しているのなら、それはもう自己犠牲ではなく自分も含めた多くの人を幸せにする判断なのだと思います。

　自分自身は経営者として、また家族を持つ人間として、多くの友人たちとの関係において、自分自身の価値観も大切にした効果性の高い判断をしていきたいと思います。