• 2020/07/31
  • 連載企画
  • キャリアチェンジ体験記

グラウンド整備スタッフからICT支援員へ。こんな自分でも「教育」の世界に入れた体験【キャリアチェンジ体験記】

  • マーキャリ会員  
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【キャリアチェンジ体験記とは】
働き方改革が施行されたことにより、会社の体制や制度が変わったなんて人も多いと思います。企業も個人も今まで以上にビジネスマンのキャリア展望に目が向けられている中、マーキャリ会員によるキャリアチェンジに伴った体験談をシリーズものとして連載していくのが本企画です。

今まさに自身の今後のビジネスライフに向けて働き方を変える動きをしている方もまだキャリアプランが漠然としている方も参考になる内容になっておりますので是非ご覧ください。

今回の記事投稿者:町田伸之介さん
⇒町田伸之介さんのバイオグラフィはこちらをクリック

自己紹介

町田伸之介と申します。

簡単な略歴ですが、
2007年地元(新潟県上越市)の高校を卒業後、10年間東京でフリーターとして過ごした後、縁もゆかりもない青森県弘前市で「人生で最も充実した1年」を過ごすことになります。このフリーターという一見不毛に見える「10年」と弘前市での「プラス1年」が私にとっていかに貴重な時間となったかをお伝えさせていただきます。

キャリアチェンジまでの流れ

大まかな流れとして、
・小学校~高校まで野球経験
・2007年高校卒業と同時に上京
・2011~2015年「明治神宮野球場」でグラウンド整備スタッフとして勤務
・2016~2017年青森県弘前市で「ICT支援員」として勤務

東京在住時はスキマ時間に、ドラマ撮影のエキストラなど変わり種も含めて20種類近いアルバイトを経験しました。
その中でもグラウンド整備スタッフとICT支援員の仕事は私の人生において非常に印象に残った時間です。
その後地元にUターン就職して今に至ります。東京・弘前での経験が、今の私の「何がしたいのか」を形成するうえで貴重な時間を過ごしました。

なぜ、そうしようと思ったか?

2011年から5年間勤務した明治神宮野球場(神宮球場)は学生野球の聖地とも呼ばれ、「夏の甲子園」に並ぶ学生憧れの球場です。私もその1人であり、偶然見つけたアルバイト求人情報に飛びついて運良く採用されて憧れの球場に足を踏み入れることができました。
プロ野球や東京六大学野球などのトップアマチュアの公式戦に仕事として携われたことで野球の面白さが一段と増した一方で、マイナスの衝撃も受けました。

それは、ある年の8月の夏休みシーズン。中学野球で最もレベルが高いと言われる「リトルシニア」の全国大会が神宮球場で開催されたのですが、この大会で上位進出した、ある「名門チーム」に驚かされたのです。
野球の技術は確かに全国トップクラスなのですが、

・指導者の選手への罵声や怒号
・中心(と思しき)選手の他の選手への罵声
・球場スタッフなどへの挨拶ができない
・多くの保護者がお茶出しなどの雑務に奔走している

これらの様子を見て、「こんなにも人間教育が蔑ろにされていて良いのか?」という強い疑念が生まれました。

個人的な事情で神宮球場の仕事を退職するのですが、知り合いの紹介で青森県弘前市で「ICT支援員」という仕事に就くことになりました。ICT支援員とは小中学校の先生がタブレット端末などの機器を使った授業をする際の支援をする仕事です。

実はこの仕事、あまり忙しくないので多くの「空き時間」が発生します。他の同業者は職員室に引きこもってネットサーフィンで時間を過ごすような人もいるらしいのですが、私はこの空き時間を「先生や児童生徒とのコミュニケーションの糸口にしよう」と思い、ひたすら授業見学に費やしました。授業中の教室に入っていくのは少々勇気が要るのですが、1年弱の期間で100人近い先生の授業とそれを受ける子供たちの反応を見ることができました。
そこで感じたことは

・「良い先生」「教え方がうまい先生」の共通項
・学校の先生の業務量の多さと「教育機会の均等」を図らなければならないことの不自由さ
・一般的には「友達以上先生未満」的な外部の大人との接触機会が児童生徒にとって少ない

ということです。
加えて、部活動にも参加させてもらう機会があったことで、改めて「野球を通した人間教育」を考える契機になりました。

元のキャリアのスキル、もともと持っていたスキルが次のキャリアにどう活かされたか?

神宮球場時代

高校まで野球部に在籍してグラウンド整備の最低限の知識があったのですんなりと業務に入っていけました。
職場環境は非常に良かったのですが、それには理由があります。相手に明確に伝わる挨拶を習慣化できていたことです。「球場を使用する人はすべてお客様」であり、職場内もお客様も大多数は体育会系に属している又は属していた人ばかりなので「たかが挨拶ひとつ」ではありますが円滑な人間関係を構築できた最大の要因です。

ICT支援員時代

私自身が小中学生時代に生徒会役員などを経験する機会が多かったので、その時に「書く力・話す力」がついてICT支援員での業務にも役立ちました。小学生時代の担任の先生からは文章作成に関しての手厳しい添削指導を受けたことで文章の構成・表現方法を鍛えてもらいました。その甲斐あってか大学入試の模擬試験でも「小論文」だけは難関校からも常にA判定(高評価)をもらえました。

他にも、過去に準社員という扱いで「営業職」での経験も役に立ちました。新規の顧客獲得をする営業だったので見ず知らずの相手に話しかけることから始めなければいけないので非常に勇気が要りました。しかしそれを経験したからこそ授業中の教室に(授業の邪魔にならないように気を付けて)思い切って入っていったり、先生方に自分から話しかけることができました。

キャリアチェンジで最初大変だったこと

「ICT支援員」という職業の存在すら知らなかった頃は、高卒で教員免許を持たない私が教育に携わるとなると「学習塾」しか思い浮かびませんでした。しかし、一般的な学習塾は現役で通う大学生や大学卒業生が優先されるので私にはハードルが高かったです。実際何件か応募したのですが全て不採用でした。 そもそもやりたいのは教科の個別指導ではありませんから、学習塾自体に魅力を感じませんでした。

それでも教育に関する仕事に興味を持ちつつ「どうしていいか分からない」と悩んでいた時期に小学校時代の同級会が開催されました。その席に、当時の担任の先生も出席していたので他の同級生そっちのけで相談したところ、ICT支援員の仕事を紹介してもらいました。聞いたことの無い仕事であるうえに、縁もゆかりもない青森県弘前市での生活は若干不安がありましたが思い切って「やります」と即答しました。

両親や何人かの友人知人にそのことを報告すると、誰もが「そんな仕事、そんな遠くでの生活、大丈夫なの?」と心配そうにしていましたが私の性格上、周囲の心配や反対意見が多いほど不思議とやる気が出ました。

成果をだせたこと

教員免許すら持たない身である私が小学校・中学校に仕事で通えるようになるとは夢にも思いませんでした。通常業務は「先生方から依頼・要望された業務」を遂行するのですが、実際に依頼や要望を受けるケースは少ないです。そこで自ら行動し需要を喚起しようと思い、授業中の教室に飛び込んでいったり、教育のプロともいえる学校の先生を相手にした研修の計画実施することにしました。最初は緊張しましたし、不安があって実行することを躊躇しましたがそれを乗り越えるたびに度胸がつきました。教室に頻繁に顔を出すことによって小学生・中学生とも次第に打ち解けていき、彼らとの接し方について自分の中で方法が見つかりました。

成果をだせたことの道筋

ICT支援員は小学校・中学校での勤務ですが教員(先生)では無いので授業もしませんし、「指導」をする立場ではありません。しかし、小中学生からすればICT支援員である私は「先生と親以外の大人」という珍しい生き物です。そんな彼らと学校で接しているうちに小学生・中学生の手助けになる方法について自分の中で見つかりました。やることは大きく3つあって、

・ひたすら小中学生の話を聴く
・ひたすら小中学生達本人が気づいて無さそうな良いところを見つけて褒める
・小中学生の前で「完璧な大人」を演じない

というものです。これによって小中学生たちは先生でもなく、親でもない私に徐々に心を開いてくれるようになりましたし、現在やっている少年野球や中学の野球部のコーチでもこの経験は活きています。

まとめ(キャリアチェンジ希望者へのアドバイス)

まず今回の私の場合、

・教育に興味があるが教員免許がないか学校の先生にはなれない
・そんな人間が教育に携わるには塾講師くらいしか方法がない
・でも高卒だから採用されないから結局自分は教育に携われないのでは・・・

と固定観念にガッチガチに縛られて半ば諦めていました。
ですが、たまたま参加した同級会で同級生そっちのけで同席したかつての担任の先生に質問をしまくったことで、思ってもみなかった方法で教育の世界が切り拓かれました。

「思ってもみなかった方法」は、可能な限り多くの人と話し聴くことで急に見つかりました。
見つかったらあとは思い切ってその世界に踏み入れてみる。それだけで私の人生観が変わりました。
当初は「なんのスキルも無い」とも思っていましたが、10年近く20種類アルバイトを経験したことで思いがけず身に付いていた強みもありました。
このことからも、

・目の前のことに全力を尽くすこと
・なにかしらきっかけを作ってモノの見方を変えてみる

たったこれだけで自分の望んだあるいは望んだ以上の展望が見えてくるかもしれません。

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