【CAが語る】SaaS/IT ベンチャーのリアル

【CAが語る】SaaS/IT ベンチャーのリアル

目次

SaaS/ITのサブスクベンチャー企業が、どんな職場環境でどんな文化で成り立っているのか、という点については皆さんも気になるところだと思います。

最初に結論を言ってしまうと、企業は個人が創業し個人の集まりで成り立っているもののため千差万別です。

しかし、大手企業や老舗の製造業など、他の全く違う企業属性と比べてSaaS/ITのベンチャー企業にどういう傾向があるか、という点で言えば共通点はしっかりあります。

今回はそこに踏み込んでいきたいと思います。

1. 多くのベンチャーがSaaS型のビジネスモデル

本来であれば、SaaSであることとベンチャーであることで文化の整理は異なるところです。

ただ、現在のベンチャーの多くがSaaS型のビジネスモデルです。 そのため、この記事のなかでは、ベンチャー企業をSaaS型のビジネスモデルを提供する企業と定義して解説していきます。

2. ベンチャーには成長目標がある

ベンチャー企業について考える上で、最も重要なポイントは「成長目標」を持っていることです。 そしてベンチャーだと掲げている企業はほとんどの場合「高い成長目標」を設定しています。

なぜこのことが重要かを述べていきます。

2-1. 高い成長目標を掲げる意義

成長を続けていくためには、 高い成長目標に対して常にギャップ(未達成)の可能性を抱えながら運営していく必要があります。

そのため、成長目標を実現するにはさまざまな課題に迅速に対処しなければなりません。 だから大企業にあるような圧力や人間関係のいざこざで課題解決が組織として求められなかったり、目立った行動が嫌われたり、といったことはまず起こりません。ここには大きな文化の違いがあります。ベンチャーの場合は、管理職から1メンバーに至るまで、一人一人が大なり小なり毎日のように課題解決を求められます

そういう意味でベンチャーでは、自然と課題解決へ対応しやすい協調的でフラットな文化が形成されやすいのが 特徴になります。

2-2. ベンチャーが個々のメンバーに求めること

メンバーには課題に対して自分自身が向き合いどう解決するか、といった強い主体性が求められることになります。ですので、個人の裁量性が高い文化が作られています。

また、課題の解決手段には最適解があるわけではないので、チャレンジ機会に対しても柔軟です。 その反面、目標の達成や課題解決に対してのプレッシャーも必ず存在しています。

ただ、個の責任として強く求められるというよりもチームとしての責任として、メンバー全員が等しく責任意識を持っているので、一人で抱え込まなきゃいけない、というわけでもありません

3. SaaSはカスタマーサクセス文化



SaaSの大きな特徴は、定額課金型でサービスを顧客へ提供するモデルであることです。そのため導入障壁が低い反面、解約されたら収益につながらないというデメリットも抱えています。 解約(Churn)を防ぐのが大きな目標になるので、先手先手で策を講じるカスタマーサクセス的な文化が自然と形成されます。

また、BtoBの場合は市場に存在する、自社がターゲットとする顧客数には限りがあります。そのため一度解約されたら業績を取り戻すのに時間がかかる、という側面も持っています。

SaaSは業界業種横断型の「Horizontal(ホリゾンタル)」業界業種特化型の「Vertical(バーチカル)」と大別されますが、Verticalは特にその傾向が強いです。

つまり、SaaS企業には短期的な視野で売れればよい、という視点で顧客と向き合っている会社は1つもないわけです。どの会社も、自社の製品やサービスを通じていかに顧客のビジネス成功へ貢献し、長く使っていただくか、という強い顧客視点を持ってビジネスを展開しています。

そのためSaaS型企業は傾向の強弱の差はあっても、顧客主導の文化となりやすく、顧客にとっての成功が常に語られ、顧客のためにどういう行動をとるべきかを追求する組織になるわけです。

その結果、社内メンバーは自社製品やサービスに対する愛着が強く、どうしたら自社サービスの素晴らしさが顧客に伝わるかという視点でコミュニケーションをとろうとすることが多いです。

4. SaaSのデメリット

これまで文化としてはポジティブな側面を多く書いてきましたが、SaaSにはデメリットも存在します。それは、SaaSはサービスの特性上、商品やサービス開発が組織の中央にあるため、 セールスマーケティング組織が主導の文化ではないことが多いことです。

これは従来の大手企業や非SaaS企業にはない特徴です。 また、プロダクト開発が必要ということは、開発するだけのコストをかけてまで参入する価値がある市場である ということでもあります。そのため、レッドオーシャン化しやすく、自社サービスが陳腐化し、競合の脅威にさらされやすい、という側面もあります。

そのため、終身雇用がなくなりつつあるとはいえ大手企業と比べると、安定性は低いと言えるでしょう。

5. 最後に

大手企業やベンチャー企業、また商材属性によってももちろんメリット・デメリットは存在します。しかし、今後ものづくり大国だった日本が経済成長をしていく上でサブスク型のビジネスモデルが重要になっていくことは明白です。

ぜひ、ご自身のキャリア形成の1つに「SaaS/IT ベンチャー」というキーワードも手札として考えてみてはいかがでしょうか。

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河村 芳行

執筆者 (MMSKawamura)

河村 芳行

株式会社エムエム総研

2008年に法人マーケティングのパイオニア企業である株式会社エムエム総研に入社。インサイドセールスからデジタル領域まで多岐にわたり、マーケティング活動全般のプランニングを担当。外資系、国内大手IT企業に対して多くのプランニング実績を積む一方、ITproマーケティングなどセミナーにて登壇者としても講演。さらに2017年にはビジネス書籍『少人数チームからはじめる失敗しないBtoBマーケティングの組織としくみ』を同社経営陣と共に出版。BtoBの組織作りと仕組みを解説した同書は多くのマーケターに支持されている。

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