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田中次郎 クラウドサーカス株式会社
2008年、新卒でクラウドサーカス株式会社(当時はスターティア株式会社)に入社。営業チームのプレイヤーとして奔走し成果を上げた後、マネージャーとして活躍。その後、インサイドセールス部門の立ち上げや新規事業責任者を経験し、フリープランを提供するMAツールBowNowを国内No.1(国産MAツールで導入社数No.1)まで成長させることに大きく貢献。現在は、BtoB事業部を統括している。エムエム デジタルセールス・アカデミーの特別外部講師も務める。
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営業として新卒入社し、その後マーケティング、インサイドセールスの立ち上げ、事業責任者、と幅広い経験とキャリアを持つ田中さん。決して平坦な道のりではなく、様々な努力をされていたようです。今回、これまでの経験や現在注力されていること、今後の展望について詳しく伺いました。
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成果が出ない営業から一転、一気に売れるようになった
―これまでのご経歴について教えていただけますか。
2008年に新卒で営業職として入社しました。もともと父親が会社経営をしており、できるだけ経営層に近いところで仕事をしたり、チームを持つような仕事をしたりしたくて、ベンチャーでまず営業をやろうと思いました。入社後、営業からキャリアをスタートしていますが、最初の3年間は成果が本当に出ませんでした。人よりも2倍以上働いて努力しても成果が出ない期間が長かったですが、上司と同行してコツを掴んでからは一気に売れるようになり、プレイングマネージャーを経て拠点長などを勤めました。
―一気に売れるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
売れなかった時は、お客様への提案資料に力を入れすぎていて、他の営業担当よりも資料を倍くらい作りこんでいました。企画力はつくものの、営業力はついていきませんでした。
きっかけとなったのは、上長が変わった時に「感情で売るんだ」とダメ出しをされたことです。話を盛り上げる、緩急をつける、といったことができていないと指摘されました。
上長の商談にも同行させてもらったところ、目の前で感情を動かして即決で受注する状況を目の当たりにして驚きました。正直、提案自体は作り込んだものではありませんでしたが、感情を動かして納得してもらうことが重要なのだと実感できましたね。それを踏まえて営業をしていたら翌月から売れるようになり、以降はセールス現場では苦労していません。
―そこからどのようなきっかけでマーケティング職に移りましたか?
会社として単なるホームページ制作会社から、Webマーケティング、デジタルマーケティングの総合提案会社に方向転換する時期がありました。その際に社内の信頼も厚く舵をとれる人材が必要となり、最適な人材として選んでいただきました。
最初は、MAツールの営業企画として動いていましたが、成果が上がってきた頃、「MAツールのレベニューマネージャーをやってみないか?」という話を持ちかけられました。そこでマーケティングからインサイドセールスやフィールドセールス、カスタマーサクセス、コンサルティングまで全て管掌するようになったのは大きな転換点ですね。
独自のフレームワークでマネージャー・メンバーを育成
―その後、MAツールの責任者を経て、現在はBtoB事業部を統括されていますよね。組織も大きくなってきていると思いますが、現在の組織構成はどのような形でしょうか。
営業組織としてはBtoB、BtoP、BtoBtoC事業部の3部門で売り上げが構成されています。売り上げを創出するためのデマンドセンターとして、無料アカウントを増やすことを目的としたマーケティンググループ、無料アカウントを有料化するフリーCS(カスタマーサクセス)グループ、プロダクトCSを役割とするグループなどがあります。また、MQLリードを獲得するためのグループや、それらのリードを商談に変えていくようなインサイドセールスグループもいます。
私が担当するBtoB事業部のグループではオンラインセールス、フィールドセールス、DXに関わるCSの機能をもったグループが存在しており、他にもWeb製作やコンサルティングなどを本分とするクリエイティブ本部も担当していて、いわゆるセカンドラインのマネージャーのマネジメントを日々行っています。
―マネージャーに対しては、どのように教育を行われていますか? また1on1の様子についても教えてください。
マネージャーと1on1をしていて実感しているのですが、課題というのは数字上から見える課題と顔つきなど雰囲気から見える課題の2種類があると思っていて、そこを確認していきますね。また、進めてほしい業務が停滞している時など、私なりに仮説を持って確認することはもちろん、壁打ち相手にもなります。
以前、私が書いたnote(マーケティング思考の営業マネージャーの育て方)ですが、マネジメントのロジックを戦略、戦術、戦闘に分けたフレームワークを作り、メンバーとやり取りをしています。
出典:マーケティング思考の営業マネージャーの育て方戦略:
STP・商品コンセプト、事業計画、選択するビジネスモデル、販売戦略、組織体制、選択と集中などなど。
戦術:
どのリソースを、どんな役割で配置し、どのくらいの量こなすことで目標を達成するか?想定する量に達しない場合に目標数を達成させるための具体的なオペレーションを設計する。
戦闘:
大枠の戦略や選択したチャネルに沿った商談資料や商談シナリオの作成。確率を上げるために必要な知識の言語化と習得訓練
セカンドラインのマネジメントをする時はこの理論が非常に役に立ちます。どこまで話をしていたか、どこを依頼したかなど明確にするのに良いです。
この中で戦闘というのは、商談用のトーク資料を作るようなイメージですが、下図のレベル1は、上司が作った戦闘をこなし、プレイヤーが成果を上げている状態です。
出典:マーケティング思考の営業マネージャーの育て方レベル1:上司の考えた戦闘を完璧に実行する(守破離の守)
レベル2:戦闘の設計・修正を上司の力を借りて行う(守破離の破)
レベル3:提案内容の設計や売り方のチューニングを1から担当(守破離の離)
レベル4:戦術面での不足を補う案を上司と考え、その施策を実行する
レベル5:戦術面での不足を補う案を自ら考え実行に移す
レベル6:一から戦術を設計する(新商材や新年度の戦術設計など)
レベル7:戦略面で変更すべき点を発見し改善する
レベル8:目的達成に最適な組織やビジネスモデルを構築する
レベル9:世の中(顧客)に求められる商品コンセプトを作る
プレイヤーが戦闘の設計を行う、修正を行えるようになると、レベル3までアップしたイメージになります。全員このレベルを上げていけるように日々活動を行っています。
ファーストラインのマネージャーには、レベル4からレベル6が求められます。持っているリソースとチャネルで、どのくらいの受注が作れるか、足りてないところをどう埋めるか、いわゆる戦術面の設計をしますが、ファーストラインのマネージャーとの1on1では、ここを壁打ちするというイメージです。
次のレベルに引き上げたいメンバーがいた場合は「今このレベルに来てるから、今回は戦術設計部分から依頼するよ」という話をするイメージです。一方で「今、戦術面でパンクしていないか?」という話もフレームワークをもとに行っています。
―明文化されてわかりやすいですね。田中さんが営業のマネージャーだった時代は、辞めたメンバーがほとんどいなかったそうですが、マネジメントの際に何か心がけていたことはあるのでしょうか。
本人以上に本人の未来のことを一生懸命考えることしかないと思っています。メンバーとのキャリアパスを一緒に考えたり会話したりする際は、そういった視点でしか話しません。本人にとって魅力的な未来と会社の魅力的な未来が重なるようになると非常に良いなと考えて話をしていますね。
私の中では、現代表の金井が、上司として同じようにマネジメントしてくれたことが大きいですね。受け取った良い影響をメンバーに恩送りしていきたいと思っています。
今後の成長のためにはPLGに注力する必要がある
―御社サービスのCloud CIRCUSは10を超えるプロダクトがありますが、営業活動はどのように行っているのでしょうか。
まず無料プラン、いわゆるフリーミアムでユーザーを集めて、1個1個のツールを有料化するのがよくある最初のステップです。有料化していただいたら別の有料プロダクトをクロスセリングしていったり、同時にWeb制作やマーケティングコンサル、広告の提案を行ったりしています。
―いわゆるPLG※が御社の特徴ですよね。SLG※との兼ね合いや戦略はどうなっているのでしょうか。
現在はSLGとPLGが同居している状態で活動していて、ターゲット層によってアプローチを分けています。今後の成長を考えるとPLGに力を入れないと間に合わないため、PLG特化型組織の立ち上げも行いました。
ただ、課題となるのは我々がマーケティング・リテラシーの低いユーザー向けのマーケティング支援ツールを提供している中で、リテラシーが低い層ほど人から説明を聞きたい要望も多いため、PLGに向かない点です。そのため、シンプルに簡単に使い始められるようなUI/UXを作ってPLGを実現していくところが課題ですね。
※PLG(Product-Led Growth):プロダクト内部にセールス・マーケティング活動・機能を取り込む手法。無料版と有料版で機能を区切り移行を促している「Zoom」が世界的に有名。
※SLG(Sales-Led Growth):セールス組織主体でプロダクトを販売する手法。
カスタマーマーケティングを啓蒙し日本を変えたい
―組織やサービスの展望や、そのために現在進められている活動はありますか?
大きな流れは先述のフリーPLG化です。そしてCSでクロスセリング、アップセルしていく流れを強化し続けなければならないと思っています。
そのためには、責任者が重要になってきます。先ほどのレベルで上位に行くためには、何かの責任者を担当し実行していかなければなりません。マネジメントの本をいくら読んで知識があっても、実際に行動しないと伸びないのと同じで、戦略設計、戦術設計も、実行しないと成長しないのです。
これまでは、サービスを増やすとともに責任者を育ててきましたが、これ以上サービスを増やせないとも思っていますので、業種特化のチーム立ち上げを考えています。例えば、製造業専門チーム、SaaS専門チーム、建材会社専門チームなどインダストリー特化のチームを作ることで、責任者を創出する方法です。
―まさに実行してもらい成長してもらうのですね。田中さんご自身の展望についても教えてください。
現在、クラウドサーカスは、アジアNo.1サービスを作ることをひとつの目標にしていますが、私個人としては日本が大好きで、日本を幸せにし、Well-beingな人の割合を増やしたいと思っています。
クライアントやチーム、目の前の人のために頑張ることが純粋にできる国民性だと思っています。しかし、今はGAFAも含めて外資系に押されている状態です。日本を強くするためには、マーケティングの価値を理解してもらった上で正当な価格で販売することが大事になると思います。まだまだマーケティングの有用性や価値を理解してもらうための啓蒙が必要ですから、マーケティング支援会社として今後はマーケティング人材の教育事業も絶対に行っていきたいと思っています。
もう一つの展望は、優秀な人が多い会社が勝つ時代から、いい人が多い会社の方が売上を上げ結果的に勝つ時代を作ることです。その答えは、我々が啓蒙している「カスタマーマーケティング」だと思っています。カスタマーマーケティングは下図のようにカスタマーサクセスが主軸となり、フリーミアム+フリーCSという無料の支援からスタートして、さらなる支援は有償化で提供していく手法です。日本には相手のために頑張れる人が多いですし、相手のために頑張れる人さえ集められればCS重視の構図はできるのではないかと思っています。さらに言えば、The Model型よりも日本企業に合っていると思っています。

カスタマーマーケティングの活動フロー図
この時代に活躍する人材が持つ「内省力」
―特別講師を務められているデジタルセールスアカデミーの印象についても教えてください。
寺子屋、松下村塾のようで素晴らしいですよね。ここで生まれた方々がまた新しい会社に入り、マーケティングの良さを実感し、それを広めてさらに輪が広がってく。意義があることだと感じました。
―最後に、御社の中でデジタルセールスとして活躍している人の特徴を教えてください。
内省力です。コロナ後の世の中で必須なスキルだと思いますが、いわゆる自己分析、自己修復する力です。今は、データが膨大にありますよね。先輩が成功・失敗している商談データ、自分の録画データなど、それを分析するような内省力さえあれば、勝手に戦闘力が上がっていくと思います。一人前になるまでの時間が早まること間違いないですね。
ここ2、3年でコロナ後に入ったメンバーで良く伸びているメンバーの特徴は、自分で考え、自分でそれを修復していく「内省力がある子」です。
ー新卒から多くの経験をされて、現在は会社だけでなく社会への還元・貢献を目指す姿勢が本当に素晴らしいですね。本日はありがとうございました!

「Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)」のWebサイトはこちら

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執筆者
マーキャリ 編集部