SaaS営業とは? 〜仕事内容・従来型営業との違いを解説〜

SaaS営業とは? 〜仕事内容・従来型営業との違いを解説〜

目次

この記事ではSaaS企業の営業の役割について詳しく解説していきます。転職を考えている方に参考となる内容になっています。ぜひ最後までご覧ください。

1. SaaSとは

SaaS(「サース」または「サーズ」)とは「Software as a Service」の頭文字をとった略称で、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。身近なSaaSの例としては、Googleが提供するGmailが有名です。

クラウドは、従来のようなパッケージソフトでの提供やオンプレミス型ではなく、インターネット経由でソフトウェアやデータを使うことが特徴です。そのためSaaSはスピーディーに導入でき、自社でのシステム保守の必要もありません。

他にもサブスクリプション型(定額課金型のサービス)のため安価で始めやすいといったメリットもあり、ソフトウェアの提供方法として主流になっていくと言われています

2. 求職者に注目されているSaaS業界

株式会社富士キメラ総研によると、SaaS業界の市場規模は2024年には1兆1200億円まで成長する見込みがあるとされ、この成長性のあるSaaS業界に転職したいという求職者が増えています

またSaaS企業の営業の場合、オンライン主体で効率的な営業活動を行うことや、リモートワーク主体で柔軟なワークスタイルを実現できることから、コロナ禍で従来型の営業活動に限界を感じている営業職からも注目されているのです。

3. SaaS営業に多い「分業型」

多くのSaaS企業の営業組織が採用しているのがThe Modelと呼ばれる分業型の営業組織です。 The Modelは営業活動を効率的かつ生産性を高め売上を拡大するために適した営業プロセスのことを言います。

具体的にはインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの3つに、マーケティング職も含めた計4つの職種に分業させる形がスタンダードで、企業によってはカスタマーサクセス組織を細分化してカスタマーサポートやイベント・コミュニティ担当チームを組み込むといったカスタマイズをしている企業も出てきています。

SaaS営業は、分業型の組織のため自分の得意領域を活かして働くことができるとともに、各職種ごとの高い専門性を得ることができます

4. SaaS企業の営業と、一般的な営業の違い

従来型の営業は「一気通貫型」と呼ばれる営業手法が一般的で、アポ取りから商談・クロージング、アフターフォローまで担当者一人が担っていました。しかし、先述の通りSaaS営業の場合は、各工程が分業されています。

SaaSはカスタマーサクセス文化

SaaS企業は基本的にサブスクリプション型と呼ばれる定額課金によるサービス提供が一般的です。サブスクリプション型では、サービスを解約されてしまうと売上に大きな影響が出てしまうため、チャーンレート(解約率)を重要な指標として捉えて、カスタマーサクセスが先手先手で顧客への支援を行います

また、そもそもサービス導入が企業にプラスにならない場合は無理矢理に売り込まないといった、顧客志向のカスタマーサクセス文化が根幹にあるのです

5. SaaS営業はSIer営業とも異なる

SIer営業は、IT関連のシステムによってクライアント企業の課題解決を行う、ソリューション型営業の一種です。SIer営業では、既存のシステムを売り込むだけでなく、顧客に合わせて独自のシステムを開発する場合や既存パッケージを組み合わせることも多いです

カスタマイズも多いSIer営業では、複雑な提案になることも多く受注までに時間がかかりますし、自社の開発力やシステム理解も必要です。一方、SaaSのプロダクトは一顧客のニーズによってカスタマイズするケースは少なく、均一なサービスを多数の顧客に提供する点がSIerと異なります

6. SaaS企業における営業の役割・プロセス

先述の通り、SaaS企業の営業組織の多くがThe Modelを土台とした分業型です。分業型では主に4つの職種が連携しながら営業活動を進めていきます。ここからは、それぞれの役割や具体的な業務について解説していきます。

7. SaaS企業におけるマーケティングの役割

SaaS企業の中で、マーケティングと言うと一般的にデマンドジェネレーションを指すことが多いです。 デマンドジェネレーションでは主に次の3つの活動を行っていきます。


  • 見込み客獲得(リードジェネレーション:Lead Generation)
  • 見込み客育成(リードナーチャリング:Lead Nurturing)
  • 受注確度の高い見込み客の絞込み(リードクォリフィケーション:Lead Qualification)

つまり、マーケティングは見込み客を獲得・育成し、インサイドセールスに有力なリードを供給していくのが役割です。具体的な手段としては、自社WebサイトやWeb広告、メールマガジンやオウンドメディア、ホワイトペーパーなどの媒体・コンテンツを通じて、お問い合わせやリード情報を獲得していきます。

8. SaaS企業におけるインサイドセールスの役割

インサイドセールスとは内勤型営業とも言われる職種です。電話やメール、Web会議システムなどを使い顧客と直接対面する以外の方法で営業活動を行うのが特徴で、近年アメリカから広まった営業手法です。

アメリカではインサイドセールスが契約手続きまで行うことが多いですが、日本では、主に電話やメールを使って見込み客にアプローチしアポイントを獲得し、実際に顧客と商談をするフィールドセールスに案件を引き継ぐことが大半です

このようにインサイドセールスはクロージングまで行うことは少ないですが、あくまで営業職です。マーケティングやフィールドセールスと連携を取り合って売上を最大化するためにとても大きな役割を担っています


9. SaaS企業のフィールドセールスの役割

フィールドセールスとはゴールである受注を獲得するために、対面での直接的な対話を通じて営業活動を行う営業職のことです。いわゆる「従来の営業職」に最も近いものといえます。フィールドセールスはアウトサイドセールスと呼ばれることもあり日本語では「外勤型営業」と言います。

インサイドセールスが獲得したアポイントをもとに直接訪問し商談、クロージングといった営業業務を担当するのがフィールドセールスです。コロナ禍によって外出は少なくなり、Web会議システムで完結することが多くなっています。


10. SaaS企業におけるカスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスとは、その名の通り顧客の成功体験へ向けて支援を行う役割です。自社サービスを顧客に継続して使い続けてもらうために、顧客が不満を抱える前に先んじて解決するのが主な仕事となります。一見、アフターフォロー役のようですが、営業職の1つとして考えられています。

カスタマーサクセスが実際に行う取り組み内容は、大きく3つに分かれます。


  • 導入支援(オンボーディング)
  • 活用・継続支援(アダプション)
  • クロスセル・アップセル(エクスパンション)

導入・活用支援で解約率を低く維持するだけではなく、クロスセルやアップセルなども行い売上向上にも貢献するカスタマーサクセスは、既存顧客に対して「攻めの姿勢」でアプローチをかける、新しいタイプの営業職です。

11. SaaS営業に求められるもの

分業型の営業組織では、一人の営業職としてではなく他のチームやメンバーと一体となって仕事を行う姿勢は必須といえるでしょう。時には、プロダクトをより良いものにするために開発チームとの連携も求められます。

そして、多くのSaaSでは採用面接時にカルチャーフィットするかを重視しています。なぜなら、チームでの共業やカスタマーサクセス文化があるため、同じマインドを持って働くことが重要だからです。他にも、自律型で自分で考えて行動できる人材は、ベンチャー・スタートアップのSaaSでは重宝されます

12. SaaS営業に向いている人

SaaS企業が営業職に求めるスタンスを大きくまとめると下記となります。


  • 数値目標に意欲的に取り組む人
  • 個人よりチーム主義
  • 顧客思考を持つ
  • 自律型で行動力のある人

逆に言えば、個人プレーが好きで、自分がやりやすい仕事の進め方をしたい方、自身の成果だけを追い求めて年収をあげてきた方は、あまり向いていない可能性もあります。 転職を考えている方は、ご自身の適性を見極めることが重要です。

13. SaaS営業に必要なスキル

SaaS営業に必要なスキルは、企業や業界、インサイドセールス、カスタマーサクセスなどの職種毎によって異なるものもありますが、基本的なベースのスキルとして必要になってくるのが次の3つのスキルです。


  • コミュニケーション能力
  • 論理的思考力
  • 分析能力/仮説思考力

営業として顧客と折衝することはもちろん、社内でもさまざまな方と協力や調整が必要となってきますので、コミュニケーション能力が求められます。またSaaSの営業職では気合一辺倒の営業スタイルや売れればよいという考えとは真逆です。KPIからボトルネックを探し出したり、顧客から本当のニーズを引き出し、最適な提案をするといった高度な営業活動を行うため、論理的思考力や分析能力/仮説思考力が求められるのです

14. SaaS営業のその後のキャリア

SaaS企業の営業職は、成長業界であるSaaSで働いた貴重な経験と、新しい職種であるインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの経験とスキルを得ている点で、希少価値の高い人材です。また、スタートアップのSaaSで、営業組織の戦略策定、KPI管理や人材育成などを、立ち上げの段階から経験できていれば、経験を活かして管理職を目指すことも可能です。

その後のキャリアとしては、次のように幅広い選択肢があるのもSaaS営業で経験を積むメリットだと言えます。


  • 同じ職種の管理職へ昇進や転職
  • 他の営業職種・部門へ異動や転職
  • SaaS業界以外の無形商材の営業職へ転職
  • 外資系SaaS企業へ転職

同じ職種の管理職へ昇進や転職

SaaS営業の各営業職のプレイヤーとして成果を出した後、リーダー、部長へと昇進していくことはもちろん可能です。 転職の場合、マネジメント経験がなくともポテンシャル採用で、リーダー候補を募集している企業もあります。現在、プレイヤーの方でも、KPI管理をしっかりと行い着実な成果を出していけばキャリアアップのチャンスはありますので、営業職としての成果を出すことと、チームに貢献してきた実績を作っていくことが大事です

他の営業職種・部門へ異動や転職

インサイドセールスからフィールドセールス、フィールドセールスからカスタマーサクセスなどと他の部門の営業職に異動することは珍しくありません。そのため、カスタマーサクセスを希望していたがインサイドセールスしか受からなかったという場合でも、最初にインサイドセールスでしっかりとキャリアを積んでからカスタマーサクセスへキャリアチェンジすることもできます。未経験からSaaS企業へ転職する際は、転職時のキャリアだけでなく、数年後にどうなっていたいかが明確であれば、面接でも好意印象ですので、その後のキャリアについても考えることがオススメです。

SaaS業界以外の無形商材の営業職へ転職

SaaS営業は無形商材の営業職としてのキャリアになるため、他のIT業界やWebマーケティング業界、コンサルタント業界や人材業界など、無形商材の営業職とも親和性が高いです。SaaS企業の営業として一定の経験を積んでから、マーケティングの知識を取り入れるためにWebマーケティング業界へ転職したり、興味のある業界へ転職したりと、可能性は数多くあります。

外資系SaaS企業へ転職

外資系SaaS企業への転職ももちろん選択肢としてあります。外資系SaaS企業が提供しているツールを利用していたり、近いサービスを提供していた場合などは親和性が高く転職可能性も高くなるでしょう。外資系の場合は、国内の企業とはカルチャーや制度が違う場合も多いですが、知名度が高い企業で平均年収もあがるとなれば、大きなキャリアアップとなるはずです。 日本のBtoBマーケティング支援会社のMAツールの営業からセールスフォース・ジャパンへ転職された広瀬さんは次のように語っています。下記インタビュー記事も参考にぜひ見てみてください。

営業の数字へのコミットメントという点ではやはり並々ならぬ“すごさ”を感じましたが、営業のスタンスという点では本質的なところは一緒だと感じました。セールスフォースで当初配属されたSMB領域では、マンスリーマネジメントを行い、営業数字を各KPIに落とし、目標に対する件数を細かくブレイクダウンしチェックしていましたが、これも前職時代も変わらずに行っていたことだったので違和感はありませんでした。

https://media.mar-cari.jp/tenbo/article/1755

15. SaaS営業が知っておきたいSaaSビジネス用語

SaaS企業では、さまざまなビジネス用語が飛び交います。広く使用されているものを中心にピックアップして紹介します。

MRR(Monthly Recurring Revenue)

MRRとは顧客から毎月得られる収益のことを指します。一定期間のデータを蓄積することで、ビジネスが成長しているかの判断材料になります。

ARPA(Average Revenue Per Account)

ARPAは1アカウントあたりの平均売上金額のこと。平均売上金額は特定の顧客ではなく、顧客全体で高めていくのが理想です。

Customer Churn Rate(顧客解約率)

一定期間内に解約した顧客の割合を表す指標です。収益ではなく顧客数をベースにした解約率です。

ARR(Annual Recurring Revenue)

毎年得られる1年間分の収益のことで、「年間経常収益」と呼ばれます。

LTV(Life Time Value)

LTVは「顧客生涯価値」と言われ、顧客が取引開始から終了までの期間でサービスや製品に使う金額の総額です。LTVは、1アカウントあたりの平均収益であるARPAに、平均継続期間を掛けて算出します。

16. SaaS業界の現在と今後

近年、リモートワークの普及によりバックオフィス系のツール導入が進んできました。実際、SaaS業界の売上高ランキングを見てみると、経理や人事などのバックオフィス系のSaaS企業が上位に入っています。

バックオフィス系のSaaSの浸透が進めば、今後は攻めのSaaSと言われる売上拡大のための営業・マーケティング系ツールの成長も期待されています。他にも、独自システムを採用していた製造業や建設業などのレガシー企業への浸透も進んでおり、業界特化型であるバーティカルSaaSにも注目が集まっています

多くの企業がSaaSの開発、導入を進めることになれば、求職者にとっては自身の営業経験を活かしつつ、SaaS営業として多くの業界へチャレンジできるようになってくるとも言えます

さいごに

SaaS営業の中でも、インサイドセールスとカスタマーサクセスはどちらも特定の営業業務に特化した専門職で、求職者からのニーズが急拡大している状況にあります

その理由は、多くのSaaS企業が頭角を現してきたことと、サブスクリプション型、SaaS型のビジネスの市場が今後も拡大していくためです。

人気があるため当然倍率は高く、選考を進めるためには自分の経歴をしっかりとアピールする必要があります。「自分がSaaS企業に転職できるかどうか知りたい」「SaaS企業の書類・面接対策を知りたい」といった方は、SaaS/IT特化の転職エージェント「マーキャリNEXT CAREER」にぜひ、ご相談ください。

マーキャリ 編集部

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