ウェディングプランナーの共感力はカスタマーサクセスにも活かせる ~経験者が語る転職ストーリー~

ウェディングプランナーの共感力はカスタマーサクセスにも活かせる ~経験者が語る転職ストーリー~

Profile

岡田奈津子 colong株式会社 代表取締役

新卒でウェディングプランナーとして新規接客からプロデュース(企画提案〜挙式当日の運営)までを経験。3年間ほど勤めた後、IT企業にて法人営業を足がかりに、念願だったマーケティング職に携わる。その後、マーケティングの経験を活かしSaaSスタートアップ企業のカスタマーサクセスへ転職。現在は独立し、多種多様なカスタマーサクセスの支援を行っている。

目次

今回インタビューしたのは、ウェディングプランナーから未経験でIT業界の営業職へと転職し、その後カスタマーサクセス(CS)職に転向した岡田さん。未経験でIT系営業職やカスタマーサクセスへの転職活動をどのように進めていったのか、マーキャリNEXT CAREERでキャリアアドバイザーをつとめる正守かやが伺いました。

ウェディングプランナーからCSへ。転機は未経験で入社したIT企業だった

正守:初めに、これまでのビジネスキャリアについて教えてください。

岡田:新卒で入社したのは、ウェディング業界の中でも比較的存在感のある、オリジナルウェディングに強みを持つ会社でした。新郎新婦のお二人を新規接客時から結婚式当日までずっと自分で担当するため、結婚式遂行のためのあらゆる業務に携わっていましたね。
ウェディングプランナーを3年間経験した後に転職したのはIT企業で、全くの未経験から入社して4年半ほど勤めました。その後、カスタマーサクセスに出会うきっかけとなったSaaSスタートアップ企業に転職しました。現在は独立し、多くの日本企業のカスタマーサクセス支援に携わっています。

正守:ありがとうございます。ウェディングプランナーからIT企業への転職を目指したきっかけは何だったのでしょうか?

岡田:元々、どうしてもウェディングの仕事に就きたくて就職活動をしていたわけではありませんでした。どの業界でもよいので3年程度は現場で働き、その後、上流工程の企画職に就きたいと思っていたのです。
もちろん、ウェディングプランナーを続けて会社に残り、本社に異動するキャリアパスもありましたが、せっかくなら全く異なる業界も含めて挑戦し、マーケティング職・企画職を目指したいと思ったのが転職のきっかけです。


苦手だと感じていた営業経験がチャンスにつながった

正守:IT企業への転職の際に、最も重視した軸はなんですか?

岡田:やはり一番は、企画に携わりたいと思っていました。とは言っても、すぐに企画職には転職できなかったため、法人向けの営業職としてゲーム事業やメディア事業を持つIT企業に入社しました。実際の業務としては芸能人ブログの開拓で、主な営業先は芸能事務所でしたね。

実はウェディングプランナー時代に最も苦手だったのが、最初の契約をいただくまでの新規接客でした。一方で、オリジナルウェディングの企画提案や結婚式当日の運営部分はあまり苦労した記憶がありません。そのため、できれば苦手意識のある営業は避けたかったんです。しかし、当時の転職エージェントには、未経験の人材に企画の中枢を任せてくれる企業はないと言われました。
実際に、3社の転職エージェントを使い、IT企業も含めて数十社程書類を送りましたが、全然通りませんでした。実際に面接まで進んだのは、3社ほどですね。

正守:入社後はずっと法人営業をされていたのでしょうか?

岡田:半年ほどで異動し「編成」と呼ばれる業務に携わりました。編成とは、どんなコンテンツをいつユーザーに見てもらうかを決める仕事です。テレビ局にもありますね。私の場合は、自社で運営するWebサービスが対象でした。ユーザーにとって興味のあるコンテンツが表示されていなければすぐに離脱されてしまうので、長くサービスを楽しんでもらうために、画面の中のコンテンツを最適化していくのです。

正守:一気にWebマーケティング領域になりましたね。

岡田:そうですね。まさにWebマーケティング職になったのが楽しくて、4年ほど担当しました。ちょうど20代後半から30代をまたぐ期間で、その間にマネージャーとしてチームをまとめる経験もさせていただきました。

正守:仕事も充実していた中、なぜ次の転職を考えたのでしょうか?

岡田:Webサイトを改善・最適化するお仕事は、とても楽しかったです。しかし、インハウスマーケティングは、自社のことしかできません。そう考えていた時にちょうど、後の転職先となるSaaSスタートアップ企業から「今やっていることを多種多様なお客様のサイトでやりませんか?」と誘っていただき、転職を決意しました。

次の会社はマーケティング用のツールを提供しているSaaS企業でした。カスタマーサクセスとして、ツールの導入支援や根本的なWebサイトの設計支援をしていました。

当時2015年だったので、日本では「インサイドセールス」という言葉は辛うじてあったかと思うのですが、「カスタマーサクセス」はまだ知られておらず、転職してから初めて自分の仕事を「カスタマーサクセス」と呼ぶのだと知りました。


ウェディングプランナーのEQの高さはCSにも活かせる

正守:未経験でのIT企業への転職は、ウェディングプランナーのどのような経験が評価されたと考えていますか?

岡田:転職後に尋ねたところ、評価されたのは「ガッツがありそう」という部分でした。ウェディングプランナーは、とにかくハードな仕事です。労働時間も長く、金土日はなかなか休めません。もちろん大型連休も休みづらいです。担当の結婚式の日付もお客様次第になるため、同じ週末に連続して3組のお客様の結婚式を遂行するケースもありました。それでも、お客様にとっては一生に一度の大切な結婚式ですから、疲れを顔に出すわけにはいきません。その経験に何か感じる部分があったのかもしれません。

2社目のIT企業へ入社した際、部署内に転職者自体は多かったのですが、私ともう一人の新卒の子だけ未経験で、その他の転職者は法人営業の経験者でした。

正守:カスタマーサクセス職に活きている経験やスキルはございますか?

岡田:ウェディングプランナーのお仕事で今の仕事に活きていることは沢山あります。最も大きいのは、お客様に共感する力です。ウェディングプランナーにはEQ(Emotional Intelligence Quotient)が高い人が多いです。お客様の感情を想像できたり、それに対して共感したり泣いたりできる力というのは、なかなか育みにくいスキルですが、ウェディングプランナーとして業務をする中で自然と強化されたようにも感じます。
ウェディングプランナーをやりたい人には元からEQが高いタイプの人が多いでしょうし、お客様の心情に寄り添えるのは、どの職種でも共通して大事ですよね。

正守:ウェディング業界にも業務の目標はありましたか?

岡田:あります。まずは新規接客したお客様からいただける成約の数ですね。結婚式はお客様からの問い合わせ数がそもそも多くない商材なので、高い成約率が求められます。
また、成約から挙式当日までの間には販売目標もありました。ウェディング業界では、成約後の解約がほとんどないので解約率の目標はなかったです。


正守: BtoBのSaaS企業では営業の分業モデルを取られているケースが多くありますが、ウェディングプランナー職では、一人の担当者が一貫して業務をするのでしょうか?

岡田:基本的にウェディング業界も分業です。ほとんどの会場・ホテルで、契約までの担当者、契約から結婚式までの担当者、結婚式当日の担当者がすべて異なります。ただし、私の所属していた企業の場合は、一顧客一担当制だったので、一気通貫で全ての業務を担当していました。

正守:なるほど、分業組織での連携経験や売上目標など、アピールの仕方によってはウェディングプランナーからカスタマーサクセス職や法人営業職も目指せそうですね。

岡田:そうですね。カスタマーサクセスの顧客マネジメントは同時に担当できるお客様の数も重要になります。それはウェディングプランナーも同じで、担当するお客様の中には来週挙式する方もいれば、1年後に挙式する方もいます。

お客様にとっては一生に一度の舞台であり、担当してくれるウェディングプランナーは一人しかいません。前に話したことを覚えてくれていなかったり、約束を忘れられたり、電話に出てくれないどころか折り返しもしてくれなかったりすると嫌ですよね。「あなた専属のウェディングプランナー」という気持ちを持ってお客様一人ひとりと接するので、同時並行で複数の顧客をフォローし続ける力も鍛えられました。

未経験でも、Excelができなくても想像以上に何とかなる!

正守:岡田さんは、SaaS企業に転職後、フリーランスに転身し法人化されましたよね。その理由についても教えてください。

岡田:理由の1つとしては、多種多様なカスタマーサクセスと関わりたくなったためです。
カスタマーサクセスの形は様々で、商材が違えばお客様の悩みやニーズも変化します。色々なカスタマーサクセスに関わるためには、1社に属すのではなく、パラレルで進めたほうがよいと思い、独立しました。

正守:今後の展望についてはどのようにお考えですか?

岡田: 自分自身でサービスを作りたいと考えています。お客様に対して一生懸命向き合い、お客様に喜んでもらえることが大好きなんですよね。
今後はカスタマーサクセスの方々を支援するだけではなく、お客様の幸せに直接貢献できることもやっていきたいと思っています。


正守:最後に、IT転職を考えている方にアドバイスをお願いします。

岡田:今までとは違う業種で、違う言葉やツールを使って仕事をすることに不安を感じるのはよくわかります。私も転職したばかりの頃は、IT用語も分からず、PowerPointやExcelの使用経験もなく苦労しました。それでもスキル的な部分は、後からどうにでも巻き返せるものです。

しかし、お客様と一緒の目線で何かを目指すマインドセットに関しては、後から習得するのはあまり簡単ではありません。ウェディングプランナーにはお客様のことをずっと考え続ける中でそうしたマインドが身に着いていると思いますし、「お客様との関係を保ち、真摯な姿勢で企業として向き合っていく」という現代のビジネスモデルにはもってこいだと思いますよ。

正守:岡田さん、本日はありがとうございました。





マーキャリ 編集部

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