「サステナブル営業」の一翼を担うオンラインセールスの可能性

「サステナブル営業」の一翼を担うオンラインセールスの可能性

Profile

御池優 ベルフェイス株式会社

ホテル運営のベンチャーを経て、BtoB SaaSで法人営業としてのキャリアをスタート。同社では最年少かつ最短でマネージャーに。その後、縁あってベルフェイスへ入社し、現在はビジネスグループのセールスチームで金融機関を中心にフィールドセールスとして活躍。インサイドセールスやカスタマーサクセス部門の各職種と協力して、ターゲット業界や企業の選定から、プレゼンテーション、商談進行と成約後のアップセル、社内展開などを支援している。

目次

今回インタビューしたのは、オンライン営業ツールの開発・販売を行うベルフェイス株式会社でセールス業務を担う御池優さん。2020年5月に脳出血で倒れ、半身不随の体に。リハビリの末、2021年3月に復職。「半身不随の営業マン」としてメディアにも取り上げられています。現在、客先へ訪問せずオンラインでのセールスに従事し、ハンデを抱える人のキャリアの可能性を広げるために活躍を続けている御池さんにお話をお伺いしました。

SMB向けの営業チームでの活動

──まず、御社の事業内容について教えていただけますか。

所属しているベルフェイス株式会社は、オンライン営業システムbellfaceを提供している企業ですが、単にシステムを提供するだけではなく、インサイドセールス、オンラインセールスのコンサルティングも行っています。また、ユーザーのセールスビッグデータが貯まっていますので、その利活用も進めていますね。



──組織構成について教えてください。

営業部門としては、エンタープライズの金融系企業を管掌する金融営業本部が1つと、それ以外の民間企業(地域金融機関を含む)を担当している部署があります。そのように組織形態としては二分していて、私は後者に所属し、地域金融機関や証券会社をメインに担当しています。



──営業組織の分業化はどのようなかたちでしょうか。

組織には、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスのメンバーがいます。その中で、インサイドセールスにはいわゆるSDR(反響型のインサイドセールス)とBDR(新規開拓型のインサイドセールス)両方が在籍しています。

会社としてABM(アカウントベースドマーケティング)を推奨しているので、業界や個社ごとに戦略を立てて、場合によっては顧客の経営層宛に手紙を書くなどの活動から商談機会を創出する人間がBDR、セミナーやイベント・問い合わせから得られたリードから、より効率的に商談創出する人間がSDRといった切り分けになっています。

私は、フロントのセールス担当として所属しています。あとはカスタマーサクセスですが、現状ではオンボーディングやサクセス活動まで幅広い業務を一人ひとりのメンバーが担当し、リニューアル(契約更新)提案だけはセクションが分かれています。

営業チーム全員でMRR、ARRを追いかける!

──御池さんの役割について教えてください。

全社として取り組むABMのハブを担うセールスとして、インサイドセールスやカスタマーサクセス部門の各職種と協力して、ターゲット業界や企業の選定から、プレゼンテーション、商談進行と成約後のアップセルや社内展開などを支援しています。



──営業組織のKPIに関しては、それぞれの部門で決まっているのですか?

営業部門全体、全ポジションでMRR(月額経常収益)、ARR(年間経常収益)を追いかけています。よくあるインサイドセールスが商談件数を追ってフィールドセールスは受注金額を追うといった、分割された状況ではなくて、共通しているところが多くあります。また私個人でも、ミッションとしては通期、半期のMRRが目標値です。

コロナによって難易度が上がった営業活動

──営業活動において大変なところ、逆にやりがいを感じている部分はありますか?

直近で言えば、コロナ禍によってインバウンドも増えましたが、その分、他社のWeb会議システムと同じ土俵で比べられてしまう状況になりました。

その中で、セールステックのSaaSツールとして、顧客にどのような価値を提供できるかを試行錯誤していて、業界や各アカウントに対して、戦略設計して検証しながら、勝ち筋を立てていくことが難しいところだと思います。

単純にプロダクトを売るとか、インサイドセールスから入ってきた商談に対してプレゼンテーションすればいいというシンプルな業務ではなくなってきたので、難易度も上がっていますね。

PMFへのチャレンジ

──他社と比較して、御社の強みはどのようなところでしょうか?

従来のWeb会議システムは、社内でのコミュニケーションツールとして、またはウェビナーツールとしてはとても優秀だと思います。しかし、これらは予め参加者全員がツールの使用方法を理解し、環境をそろえることで「継続的に利用する」前提で設計されたサービスと思っています。我々の顧客の多くは、新規営業でbellFaceを活用しており、商談相手のITリテラシーを事前に把握することができないといったケースが大半です。 そのような状況では、「Web会議システム」を営業シーンで使うことは難しいという判断になると思います。

オンラインのコミュニケーションにおいては、本質的に今までと変わらない商談を目指すべきですが、それよりもツール導入が先行してしまうと、使い方をお互い覚えなければならなかったり、通信状況の悪化に伴い音声や映像が乱れたりすることで、どうしても元来とは異なる微弱なストレスを受けることになります。また、そのようにツールに慣れていない状態で、デリケートな商談の場面で使うと失敗してしまう可能性も出てきますよね。



──たしかに、おっしゃる通りですね。

何らかのトラブルで会議が止まり発生した数分のロスタイムは、成約率に影響がないとは言えないと思います。ですので、日本国内での営業活動の現状を考えると、日本人がみんな使っている電話をベースにしてサービスを提供する点が大きな違いになります。

また、接続時のハードルが大幅に下がることで、オフラインとオンラインにおける本来の大きな違いである「データの利活用」に最短距離で到達することができるんです。多くの企業が本来目指しているのはこのDX(デジタルトランスフォーメーション)により、よりよい経営へと昇華させることなのに、ほとんどの場合が「画面上でコミュニケーションをとること」のように解釈されています。ですので、より本質的な営業活動全体における負を解消するように、プロダクト・サービスともに進化し続けています。

そのように、どう戦略を持って普及させていくか、共感してもらえるか、PMF(プロダクトマーケットフィット)にチャレンジすることに面白さがあると思います。



──お客様やエンドユーザーに対して仮説を持って、戦略を立て営業していらっしゃるわけですね?

おっしゃるとおりです。今はツールが浸透したのもあって、他のツールの利用や認知がある前提のところから、bellFaceの特長と独自性をインプットしなければまず商談にはならないので、戦略を持ってアプローチを行っています。



──その中で、活躍されている方の特徴や必要なスキルについて教えてください。

営業職としてモノを販売していた。という方だけではないのが共通項かもしれません。私たちはツールを販売しているわけではなく、顧客の事業戦略を達成するために必要なピースを埋めることが仕事です。

それもあり、事業開発や商品企画、マーケティングなどの知見を持つ者や、若くして経営の経験を持つ者、驚くべきペースでパラレルワークをしている者など、幅広いバックグラウンドから多面的に物事を捉えられるメンバーが活躍しています。

また、ユーザーにとっては、新しい営業手法を立ち上げる感覚に近いため、その際に単純に「これ、便利ですので是非使ってください」と言っても絶対に伝わらないですから、業務設計やKPIを一緒に立てていくような感覚、知見を持っている人が、やはり活躍しやすいと思います。

ホテル事業からBtoB SaaSへのキャリアチェンジ

──続いて、御池さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

1社目は、ビジネスホテルを運営するベンチャーで、店舗開発や商品企画、一部法人向けの営業も行っていました、小さい会社でしたので、やろうと思えば全部できる環境でした。

そこで3年半ほど勤務をした後に、プロダクトを持つSaaSベンチャーに入り、BtoB SaaSのセールスに従事しました。いわゆるパートナー営業で、会計士、税理士からの紹介を受けて、SMBに対してMAやCMSなどのツールのセールスを行います。そこでデジタルマーケティング領域でかつSaaSプロダクトを持っている企業のセールスに初めて触れました。



──1社目から2社目に行かれたのは、どのような理由ですか?

1社目でさまざまな業務をやる中で、「そういえば、営業としてのキャリアをきちんと築かずに3年ぐらい経っているな」と、ふと思いました。自分の中で、物足りない部分があったのだと思います。



──そこで、法人営業としてのキャリア形成のために、2社目のBtoB SaaSに行かれたのですね。

そうです。法人営業を経験したいという思いが、まずありました。決め手となったのは、クラウドサービスを提供している企業で、個人向けではなく、関わる人が多い事業者向けだったことです。

その中でも、パートナーセールスで、かつ士業とその先のクライアントが顧客だった点にも惹かれました。遅れてしまった3年を、全く違う経験値で一気に巻きかえせると直感しました。

その後は、Fintechスタートアップ企業に転職して、金融機関向けアライアンスと営業企画を担当していました。

着実に進めてきた法人営業としてのキャリア

──前職で成果を出したり、何かを達成したと感じたりしたことはありますか?

当時、2社目で最年少かつ最短でパートナー営業部門のマネージャーに昇格しました。また、営業成績としても非常に大きな成果を出せたのと、社内のSFA、CRMの導入プロジェクトを推進したり、セミナーに登壇したり、営業活動以外の経験も積めたと感じています。



──営業としてはどのような経験を積まれたのでしょうか。

当然、プロダクトを売るだけではなく、戦略設計、リード獲得施策をマネージャーとして経験できました。他には、商談進行を効率化するためにデジタルツールを用いて運用面をスムーズにしていく観点をその時に養えたのが、今でも活きていると思っています。

また、税理士や司法書士を始めとする士業の方々や、さまざまな形態の組合などの非営利組織、信用金庫などの地域金融機関との関わりが多かったのですが、彼らの意図することを理解できるのは現在の仕事にも良い影響があると思っています。

彼らは経済合理性よりも、地域の持続可能性や地域との親和性を追求する性質を持っているため、その分目標を達成するにあたってのマイルストーンが非常に複雑で、かつビジョンや大義名分の方が重要だったりします。そんな顧客に相対するには難易度の高いコミュニケーションが必要になると思います。

例えば、事業者向けの支援だけで見ても、彼らは広義の「お金」に関わるメイン業務だけでなく、その地域に存在する企業が抱えるさまざまな課題を支援しています。後継者問題や販路拡大、業務効率化、デジタル化など、経営そのものに影響を及ぼすものもあるわけです。そんな方々と日常的にコミュニケーションをとれること自体が非常に大きな経験になりました。



── 一方で、現職において、前職との違いはありますか?

関わる方が非常に多くなりました。チームとしてミッションを追う中で、1人では成し得ないことが多くなったからだと思います。社内はもちろん、ステークホルダーが広がりましたね。営業活動自体も全体で共通した目標を持ちながら、全員で目標達成を目指しています。そのため、日常的にメンバーとコミュニケーションを取りながら情報共有して進めていく環境に変化しました。

実行している戦い方は正しいか、風向きは読み通りか、相手の反応はどうか、など、毎回の対外的なコミュニケーションに対して互いにフィードバックをすることが日常になっています。これによって、必要であれば躊躇なく戦略を変えられるようにもなりましたし、結局は顧客や市場から必要とされることが正となるでしょうし。

それに、地域金融機関や非営利組織向けのプロジェクトには自然とアサインいただけることが多くなったので、これまでに積み上げられた経験のおかげだと思っています。



──現在、仕事をしている中で大切にされていることがあれば教えてください。

商談であっても、社内のやり取りであっても、自分ではない誰かと物事を進めることになるので、主語を相手にするようにしています。「あなたにとってどうしたいか」「あなたがどうするために」など、“私”や“私たち”ではなく、相手を主人公として捉えるようにしています。

運命的なベルフェイスとの出会い

──転職活動で意識されていた点やエピソードについて教えてください。

自分の経験を抽象化していましたね。同業界、同製品でない限り転職先企業と経験・スキルが完全に重なることはないと思うので、自分の業務内容や経験を、できる限り抽象化して、何か共通点を見つけられるようにとまとめていました。また、私は転職をネガティブには捉えていなくて、スキルを得てキャリアアップして年収をあげるチャンスであったり、新たな経験を得る機会だと考えています。

エピソードとしては、実は2社目の時にbellFaceのユーザーだったんです。ベルフェイスという会社は、自分の今までの経験の中で感じていた「営業の負」を解決することをミッションとしていたので、転職活動の途中から他の企業の面接・内定はすべて辞退して、最終的にはベルフェイスだけで選考を進めていきましたね。

また、市場が開かれていない状態。つまり、これからキャズムを超える必要があり、PMFする必要がある。それを作り上げる過程なら、職種を問わず価値のある経験を得られやすいでしょうし、足元を固めた現実的なプロダクトだと感じたのもベルフェイスに絞った決め手です。

脳出血からの復帰を可能にした「オンラインセールス」

──脳出血で倒れられて、10カ月後に、復職されたお話をニュースで拝見しました。復職後に大きく変わった点や苦労されているについて教えてください。

業務自体は大きく変わっていません。これはプラスの話で、以前と変わらずに復職できたということです。

実業務の中で苦労していることとなると、脳神経疾患の後遺症があるので、できるけど時間がかかることがたくさんありますね。左手が上手く動かないので片手で業務している状態に近いです。

あとは、目が複視と言ってですね、相手の顔がダブって見えているんです。ですので、画面を見ながらオンラインで営業を行えるのは、いい環境ではあるものの、非常に目が疲れます。細かい文字を見たり入力したりとか、片手でやりながらとても見にくいので、時間がかかるところが大変ですが、それでもやはり従来の営業職では必須と考えられている訪問を短縮できるメリットのほうが大きいですね。



──なるほど、オンラインセールスがない状態は考えられないですね。

本当にそうですよね。「ベルフェイスに入っていなかったらどうしていたのだろうな」と思います。また、肢体不自由という身体障害を抱える私にとっては、客先に訪問するということ自体が負担になります。その行動が不要になる、または大幅に少なくなるだけでも大きなメリットがありました。

また、先ほどお伝えしたように、目がちょっと見にくかったり、他にもずっと顔がしびれていたりするので微弱なストレスがある状態です。そこから、さらに商談内容を毎回記憶してレポーティングするとなると大変です。

オンラインセールスだとデータが貯まるので。細かい情報を覚えなくとも後で見返せるんですよね。その開放感はすごくストレスフリーな業務推進につながっていると思いますね。

サステナブル営業、「キャリアの持続性」を啓蒙したい

──それでは最後に、今後のキャリアビジョンについて教えてください。

能力があるのに、抱えたハンデが影響してやりたい仕事や物事に取り組めない方が増えていると感じています。私のように身体障害者ではなくとも、小さなお子さんを育てるワーキングマザーや、家族の介護で地元に戻る必要のある方など。そのように、何らかのハードルやハンデを抱えるビジネスパーソンにとっての、持続可能なキャリア開発に貢献したいです。

これは、ベルフェイスが掲げるテーマ「サステナブル営業」におけるキーワードでもあります。サステナブル営業とは、「六方*良しの経営を実現する営業組織の構築」を目指すことで、そのうちの1つキーワードが「キャリアの持続性」です。
*六方…顧客、従業員、仕入先、社会、環境、株主・投資家

ベルフェイスが掲げる「あたらしい営業組織の世界観“サステナブル営業”」
出典:https://bell-face.com/sustainable-sales/

また、新たな事業の開発や、商流の構築にも関わりたいです。このような身体状況でも、環境整備と会社の制度構築や理解を得ることによって、私個人では営業職としてそれなりに通用することも実感できたので、社会全体に対してより根元からその環境を作ることに携わりたいです。



──直近の、弊社の経営目的も「意志ある人材への成長機会の創出」を掲げて、デジタルセールスを推進しているので近しいものを感じました。

そうですね。デジタルでの営業活動やインサイドセールスは本当に画期的だなと思います。その概念を知らない方がまだまだいらっしゃると思いますので、インサイドセールス、オンラインセールスの概念や考え方、捉え方が当たり前になればいいと、すごく感じますね。




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マーキャリ 編集部

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