株式会社電算システム、決済サービス事業部事業部長、執行役員の辻本さんと、クロスチャネルセールスチームのチームリーダーとしてご活躍されている近松さんにお話をお伺いしてきました。 マーケティングに熱心に取り組みマルチチャネル型の営業組織を構築している同社も、ほんの数年前までは昔ながらの営業を行っていたそう。どのような経緯で組織変革に乗り切ったのでしょうか?
*現状のマーケティング活動概要と課題
*「旧態依然とした営業体制」に危機感を抱き、マーケティング強化へ
――お二人が所属されている決済サービス事業部と、近松さんがリーダーをお務めになられているクロスチャネルセールスチームについて教えてください。
辻本さん(以下、敬称略)
弊社、電算システムは収納代行サービス事業と、ソフトウェア開発・販売、SI等の情報サービス事業を展開している企業なのですが、その中でもコンビニや口座振替、クレジットカードといった収納代行サービスを担当しているのが当事業部になります。
近松が所属しているクロスチャネルセールスチームでは、Webや電話でお問合せのあった見込顧客や、アウトバウンドを通じて新規に獲得した見込顧客に対し、メールや電話といった非対面コミュニケーションをベースとして、案件確度の見極めや商談活動を行っています。
特徴的なのは、業種や企業規模によっては訪問による対面営業も担っていることでしょうか。それとは別に事業部内の対面営業チームも存在するのですが、非対面中心のクロスチャネルセールスチームで対応するのか、対面営業チームが対応するのかは一定の基準を設けたうえで分業を行っています。
――クロスチャネルセールスチームが設立される以前は、いわゆる「昔ながら」の営業をしていたということなのですが…
辻本
はい。私はもともと営業として2001年にこの会社に中途で入社したのですが、当時の営業体制は、紹介案件や問い合わせに都度対応してうまく行けばオッケー、うまくいかなければほったらかし。弊社のお客様というのは、同業者からの紹介や他事業部からの紹介など、いわゆる「人づて」が多かったんです。
当時は月に何件の集客があったのかもカウントせず、それを誰が担当しているのかも組織的な共有はされていなかった。「電話を受けた人がそのまま対応する」というような感じですね。
世間的な流れとして商談期間はどんどん長くなっていくのに、「今取れるか、取れないか」というところだけで判断している、昔ながらの営業でした。「この状況ではまずいよね」と思いながら結構な月日が流れてしまったのですが、2010年に私が事業部長になったのをきっかけに、営業体制を変えて、マーケティング強化のための様々な取り組みを始めました。
WEB集客施策を始めて新鮮な見込顧客を新たに集めたり、手着かずになっていた過去の見込顧客に対するアウトバウンドコールを行ったりといった活動がそれにあたります。
特に、見込み顧客とのコミュニケーションチャネルを強く意識するようになりました。
顧客の購買行動がオンラインにシフトしている中、従来の訪問による対面一択という活動では無く、Webからのお問い合わせに対して電話やメールでコミュニケーションを取るという新たな選択肢を持つことで、購買に繋げるためのアクションをよりスピーディーかつスムースに実現し、お客様側により適した対応をすることを目指しました。Webや電話、メールといった新たなチャネルを、訪問と同等に位置付けたうえで適宜最適な判断・選択をしながら活動するために立ち上がったのが、このクロスチャネルセールスチームになります。
*肌感覚からの脱却がもたらしたもの
――なるほど。チームを立ち上げ、どのような効果がありましたか?
辻本
こういった体制を導入したことによるメリットは、数値が可視化できたことですね。それまでは、感覚でやっていたんです。「なんだか今月は調子がいいな」とか。最終的な受注社数はもちろんわかっていたのですが、そこまでのKPIがまったく整理されていなかった。それが、現在では数字に基づいて戦略を立てられるようにまでなりました。これは、WEB集客に取り組んだことで数値をしっかりと取れるようになった点と、受注に至っていない見込顧客を管理するデータベース(「見込データベース」)の構築と運用を始めたことが大きかったです。見込データベースはテレマーケティングを依頼しているエムエム総研さんに構築してもらったものになるのですが、それまでは管理すら出来ていなかった「今受注に至っていないが将来受注に至る可能性のある顧客」を一元管理するもので、これによりメール配信やWeb誘導、アウトバウンドコールやセミナー集客といったアクションを通じた育成を行うこととその成果を可視化することが可能となりました。
また、誰がいつどんなアクションを行いその結果どうなったか、が可視化されたことで、個々の仕事ぶりやミッション進捗が明確に把握できるようになり、管理面でも個々の業務の進め易さの面でも向上が見られました。これはクロスチャネルセールスチームだけの話ではなく、フィールドセールス部門の方でも、業務効率化を実感しています。弊社の一番大きなお客様はEC企業なのですが、フィールドセールスの各メンバーはEC企業以外にそれぞれの得意分野と言える業界があります。
例えば受験料、受講料などの学び系やチケット代金やファンクラブ会費などのエンタメ系などEC企業以外にも顧客となり得るセグメントが存在し、それぞれ商流や競合、課題やニーズが異なるため高い専門性が求められるのですが、EC企業向けの対応をクロスチャネルセールスチーム中心に担うことで、フィールドセールスがそれぞれの得意分野により集中できるようになりました。
*「効率」は非対面ならではの強さ
――チームリーダーの近松さんに伺います。クロスチャネルセールスチームでは非対面と対面の両方の対応をされているということですが、メンバーそれぞれ、非対面・対面による得意、不得意があったりするんでしょうか。
近松さん(以下、敬称略)
そうですね、チームの内部を見ていても、お客様の温度感をメールや電話で探るにあたっての得意、不得意というのは確かにあると思います。だから、効率性だけを見れば、きっとしっかりと担当を分けた方がいいのでしょうね。でも、非対面にしろ対面にしろ、根本的な考え方ややるべきことは同じだと思うので、両方経験することによる「個人の成長」も大事だと考えています。非対面で分からなかったことが対面を経験することで理解できて、非対面での活動に還元する。逆に、非対面での活動の経験が対面営業に活きるということもありますよね。
――日々お取り組みをされる中で、意識的に行っている改善や向上のための取組があれば教えてください。
近松
チームリーダーとしては、モニタリングを通じた対応品質チェックやフィードバックを通じた活動改善に日々取り組んでいます。個人的なところでは、案件が失注したり、ペンディングになったときの振り返りは時間をかけています。つい「商談プロセスをどうすべきだったか」という点にフォーカスしてしまいがちなのですが、もっと早い段階で見極めが出来ていれば、かけなくてもいいパワーを削減して、もっと有効にそのパワーを使えたかもしれませんよね。
そういった意味で、「そもそも取りに行くべき案件だったのか」に意識的に重点を置いた振り返りを行うようにしています。どこの企業でもそうだと思うのですが、Webやお問い合わせからの集客って「ぜひ取りたい」と「会ってまで取るべきではない」というものが混在していますよね。でも、一度お客様を訪問してしまうと「なんとか受注しないと」と思って頑張ってしまう。そうやって対応しているうちに、お客様からの期待値も高まって、結果、「お役に立てそうなお客様」以外にも大きな時間を割いてしまうということが結構あると思うのですが、そういった点で「切り分け」がしやすい、優先順位がつけやすいのは、非対面ならではの強みなんじゃないかなと思っています。
――なるほど。では最後に、今後マーケティングやインサイドセールスに従事される方に対して、メッセージなどあればお願いします。
近松
そうですね…正直な話をすると、私はこのチームに加入した当初、あまり「潜在的な課題」を意識した活動をしていなかったんです。非対面チームは、既にある程度課題が明らかになっている案件を効率的に受注につなげることがミッションだと考えていたので。でも、実際のところ、非対面での営業活動を行うなかでも、潜在的な課題を引き出す必要性を実感できる商談がいくつかあり、非対面での対応でありながらもお客様との関係性を深めることができると実感しました。
そのことに気づいた時から、単に受注に繋げるだけではなく、どうやって取り組むべきかを考えながら仕事をするようになりました。そうして現在ではチームリーダーになったのですが、裁量が大きくなったことで、自分が「面白そうだな」と思った案件に関しては自分で担当できるようになっています。毎日同じことを繰り返すだけではなく、新しい案件、スケールの大きい案件と相対し、そういうシチュエーションでないと聞けないような話を聞くことができるので、刺激になりますね。こういう風に、非対面のコミュニケーションがメインの仕事でも、しっかりと「本質」をとらえて業務に臨むことで、単なる「非対面営業」を越えて能力や裁量はどんどん広がっていくと思います。
辻本
以前は、商談の時間を取って会うことが重要だったし、会わなければお互いに情報を出さなかった。でも、WEBが普及した今では、対応のスピードや正確性の方に価値を見出すお客様も多いですよね。売る方としても、「必ず行かなければ」というマインドを変えて、それに見合った形の売り方を考えていくことが重要なんじゃないでしょうか。
―本日は、営業組織改革で大きな課題を解決した、その経緯についてうかがうことができました。
辻本さん、近松さん、誠にありがとうございました。