• 2018/10/16
  • インタビュー
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「これからのBtoBマーケティングと、必要とされる人物像」

  • 橋本 しおり
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マーケティングの重要度は益々高まってきています。BtoCで先行してきたマーケティングの潮流は、いまではBtoB領域にも拡大しています。
今回は「BtoB市場における人材市場の未来」について、人材ビジネスで活躍される株式会社 ビースタイル 代表取締役会長の三原邦彦 氏(以下敬称略)とエムエム総研 代表取締役CEO 萩原張広が対談を行いました。

*マーケティング人材市場について

――それではまず、各社の業務内容について伺わせてください。

萩原
エムエム総研がBtoBマーケティングエージェンシーを名乗ってから10数年が経ちました。以前はコールセンターを中心とした営業支援を中心に活動していました。リーマンショック以前に外資系のお客様を中心にマーケティング支援の依頼が増えていましたが、一方で国内のお客様からのご依頼は非常に少なかったです。まだまだ営業職が主体となってビジネスを作っていくスタイルが主流だったんです。
そこからさらに遡って、1998年。ニューヨークのビジネスを視察に行ったことがあります。その当時、すでにアメリカではマーケティングの部門があり、予算もあり、リードの獲得から育成を担う人、商談化以降を担う営業の分業が確立していました。マーケティング部門には、アナリスト、Web系、コールセンター系など細分化された専門人材もいました。

――なるほど。

それから時代が経つにつれて、日本国内も産業構造が変化したり、グローバル化の波があったり、昨今では人材不足の問題があったり、営業の生産性をいかにして上げるかが大きな課題となってきました。そうした中で、国内のBtoB市場でもマーケティングのニーズが高まっています。
また、外資系企業が国内に来るときに、一気に市場を席巻するというようなことがありますが、あれは正に高度化されたマーケティングの為せる技で、その様子を見てきた国内企業にも、マーケティングに対する機運が高まってきました。
日本企業では、まだまだ「マーケター」と名乗られてはいませんが、現実では営業企画や営業アシスタントであったり、Web担当であったり、別の呼称でもマーケティング領域を担当する職種のニーズが高まってきています。
例えばWebサイトの構築にしても、昔のようにデザインとコーディングだけでは出来ません。MA(マーケティングオートメーション)とつなげて、いかにしてリード獲得のPDCAを回していくのか?といったマーケティング的な知見が無くては作れなくなっています。既存の職種の呼び方はそのままに、マーケター化していく、とういことが起こっています。

――「マーケター化していく」、BtoB市場のマーケティングニーズの高まりを強く感じる一言ですね。ありがとうございます。
では続いて三原さん、よろしくお願いいたします。


三原
ビースタイルでは様々な人材を提供していますが、マーケティング関連の人材ニーズは確実に高まっています。昔はシンプルに「名刺を管理する」とか「DMを送付する」とかいう単一的な業務だったものが、いまは全ての業務が「データ」に紐付いてきています。
保有する顧客データをどう活かしていくのか?データに対してどのようなタイミングでどのようなアプローチを行うのか?といった、正にマーケティングの設計というものが求められています。データ自体も様々なチャネルから流入してきますし、ビジネスのサイクルの難易度が上がったという印象があります。その分面白みもありますが。

昔は新規営業活動が中心だった企業も、多くの業界で競争が過熱し、競合他社にどのようにして勝つか?という視点が重要になってきています。
そして、獲得した1社のお客様に対して、どのようにしてクロスセルしていくか?ということも重要です。「売り上げを上げていく」という方法自体が単純では無くなってきています。
また、一つ一つの分野の「深さ」も深化しています。BtoBの「ネット」という分野にしても、カスタマージャーニーを描いた上で、コーポレートWebサイト、SNS、オウンドメディア、リスティング広告などを包括的に捉え、お客様が望んでいるものは何なのか?そしてどうやって自社にたどり着いてもらうのか?を高度に考えていかなくてはなりません。マーケティングにおける効果に求められる比重はどんどん大きくなっています。やはり、ビジネスが複雑化しているのだと思います。これはチャンスが多いとも言えますが。



萩原
ビースタイルへの依頼でも、マーケティングに関連する職種は増えているんでしょうか?

三原
明らかに増えています。圧倒的にニーズがあるのはWebマーケティング関連の職種です。また、お客様のセールス活動もSFAの導入は当たり前になっていますから、データハンドリングをできる人のニーズも高いです。要求の高いお客様からはアナリストのような上流工程を行う職種のオファーもあります。
また、現在はマーケティング活動に必要な「コンテンツ」が多様化しています。お客様に如何にメモライズしてもらえるコンテンツを作っていくか?ということが重要になっています。ですからオウンドメディアに注力している企業が多く、その運用に関わる人材のニーズも高まってきています。編集やライターの業務は、かつては専門業務として捉えられ、オフィスの中で必要な職種とは認識されていませんでしたが、いまではあらゆる企業で編集やライターの業務が必要になってきています。マーケティング上の顧客接点が、リアルな営業マンより増えているので、多くのコンテンツが必要です。

萩原
そうした編集やライター業務のようないままで専門的とされていた業務ができる人材はいるんでしょうか?
三原
過去に消費財系のメーカーでBtoCマーケティングをやっていた方などがBtoBに興味を持って移ってくるとか、多くは無いですが人材はいます。何より給与面の条件が年々良くなっていますから。
いま給与水準は時間と比例する時代では無くなっています。給与水準は、その人が産み出す経済効果に紐付いてきています。いままでの営業職は、どうしても時間と効果が連動していましたが、マーケティングの世界では労働時間に左右されない部分も大きい。なので、マーケティングスキルの高い人材は、時間に束縛されることなく大きな効果を産み出すことができます。ビースタイルの派遣人材は時短の方も多いですが、お客様からは「働ける時間は関係無いから。」と言っていただけることも多くなってきました。効果に対してシビアに見られるという面もありますが、能力を高めれば高い効果を産み出しやすいということは、働く側にメリットになります。

――たしかに、実現できたらとても大きなメリットになりますね。

萩原
我々はマーケティングを実務で支援していますので非常に共感できます。MAに関して言うと、国内市場は3,000億円規模と言われていますが、日本ではまだ200億円程度しか導入が進んでいません。4〜5年前は限りなくゼロでした。まだまだMAの導入は進んでいくということを表しているのですが、MAの導入が進むと、それを運用する人材が必要になってきます。MAだけ見ても潜在市場はこれだけ大きいということです。
また、BtoBマーケティングで注目が高まっているインサイドセールスという職種がありますが、日本語で言うと「内勤営業」と言うのでしょうが、アメリカでは「外勤営業」より「内勤営業」に従事する人の方が圧倒的に多くなっています。非対面での営業が一般化されれば、日本でも同じ状況になるでしょう。対面営業では1日に3件程度しか営業できませんが、非対面であれば10件行うことが出来る。こうなると生産性は飛躍的に向上します。マーケティング人材の潜在市場が、いま正に顕在化してきています。



三原
そうですね。マーケティング人材の需要は確実に高まってきています。歴史が浅いので当然ですが、供給は追いついていません。いまはお客様も手探りで挑戦しているという感じです。

*マーケティング人材の特性について

――マーケティング人材の特性について、おふたりはどのようにお考えですか?

萩原
エムエム総研では昨年度からマーケティング人材の育成に注力しています。BtoBマーケティングの人材は明らかに不足していますので、育成して市場に出て行ってもらうということを本格的に行い始めたところです。研修生を募集して感じたことは、マーケティングへの興味関心は非常に高まってきているということです。
研修生に応募してくる人は、いままで法人営業をやっていた人が、その経験の中で非効率さを感じてマーケティングの世界に飛び込んできた。または、そういった法人営業を受けていた側の人が、マーケティングに活路を見出して飛び込んでくるというパターンが多いです。BtoCと比較してBtoBマーケティングは遅れている。そこに疑問を感じている人が興味を持ったものの、学ぶ場所も試す機会もなかなか見つけることが出来ずにいた人が応募しています。
マーケティングには論理的でもあり、一方でクリエイティビティも求められる高度な職種だと思います。ただし、両方100点という人はいないので、例えば、「デジタル系デバイスに強く接客もできる」のように一方に偏っていない人が向いていると感じています。

三原
そうですね。右脳派・左脳派という風に分けることがありますが、マーケティングは右左脳両方長けている人が向いている気がします。人材サービスはハイレベルな人材ほど採用が難しいのは言うまでもありませんが、給与条件が上がってきているので少しずつですが集まってきています。ただ、絶対数は少ないので教育の重要性は共感します。ただし、教育するとなると難しい。マーケティングはビジネス全体を俯瞰して捉えることが必要ですが、いきなり全体を捉えることは難しいですし、全てを幅広く学ぶには時間もかかります。マーケティングに紐づく個別の施策から学んで、何か一つを極めることから始めるのが良いのかもしれません。まだまだ個別の施策でも企業にとって効果は出せますから。BtoBマーケティングは黎明期なので、個々の人材に得意不得意があるのは当然です。

萩原
その通りだと思います。しかし、日本の企業では、マーケティング組織のある企業でもその組織は少人数であることが殆どです。なので、一つだけでなく、複数のスキルを持っていることは強い武器になります。少しずつでも良いので、マルチタスクをこなせるスキルを意識すべきかもしれません。

三原
確かに、マーケティングと言っても範囲が広いですからね。業種や業態によってもマーケティングで行う活動の範囲は違います。BtoBマーケターの最大公約数を見極めて育成できれば良いのですけど。
ただ、マーケターを目指すなら、「戦略性」は欠かせないと思います。個別の施策にも戦略は必要です。「お客さんを獲得していく」ということに対して、戦略を立てる。戦略を立てないとPDCAを回せませんから。ある種ゲーム感覚のような側面があります。仕事をゲーム的な楽しみに昇華できる、それを楽しめるような人は合っていると思います。

萩原
それはあると思いますね。マーケターは、PDCAを回して、たくさんの失敗を経験する職種だと思います。その失敗から学んで、次の戦略に活かすということ。これを楽しめないと辛いと思います。

*今後のBtoBマーケティング人材市場を予測する



――今後のBtoBマーケティング市場をどのように予測されますか?

萩原
外資系企業が先駆けているBtoBマーケティングですが、今後、日本の企業にBtoBマーケティングが普及していく中で、外資系企業のマーケティングの形が、そのままピタッと日本の企業にはまるということは難しいと考えています。どこかのタイミングで「日本なりのBtoBマーケティング」というものが必要になるはずです。日本企業に根付いている「営業文化」というものも簡単に変わるものでは無いでしょうから。
最初の切り口としてはインサイドセールスの導入だと思います。営業のプロセスを分業化し、非対面のプロセスを作る。ここにはデジタルでのコミュニケーションも必要になります。営業部門内にマーケティング組織を作っていくというパターンです。マーケターの職種がさらに細分化されていくのは、その先だと思うのですが、確実にマーケターの需要は伸びていくはずです。

――ありがとうございます。三原さんはいかがですか。

三原

社会問題となっている労働力の減少や働き方改革という面でも、マーケティングの果たせる役割は大きいです。あらゆる企業で生産性を高める必要がある中で、マーケターという職種はナンバーワンの可能性を秘めていると言えます。先ほども言いましたが、マーケティングの特徴は、一人の人間が産み出せる経済効果が大きいということです。スキルによっては短時間で効果を産み出せる職種です。
また今後、日本では社会の変化に応じて、新しいビジネスがどんどん産まれてくると思います。新規顧客の獲得と、既存顧客に対するクロスセルは別の取り組みになると思うのですが、新規顧客の獲得には企業ブランドが重要になってきます。これには、事業戦略、ブランド戦略、マーケティング戦略、といった「戦略立案」する能力が重要になると思います。
さらに、AIに代表されるような新たなテクノロジーが、どのようにマーケティングに取り入れられていくか?ということにも興味がありますね。人間よりも遥かに高い生産性になるはずです。ただし、AIは新しいことに取り組む。チャレンジする。ということには向いていない。なので、これからは新しい取り組みを産み出していくことを、マーケターのスキルとして磨いておくべきかもしれません。

――社会の変化に応じた新しい取り組み、それを生み出すことにチャレンジすることがひとつのスキルということですね。

萩原
ホワイトカラーと言われる職種の中で、営業の生産性が最も課題があると言われています。一方で、売上に直結する職種なので、ホワイトカラーの中で最もメスが入れやすい職種でもあると思います。いま日本には200万人の営業職がいるのですが、この生産性を上げることができるのであれば、大変大きな経済的な効果になります。これを実現できるのがマーケティングです。少子高齢化になっても、少ない人数で効果を上げることができる、マーケターには大きな可能性を秘めています。

――今回はマーケティング人材と深くかかわっているおふたりより、マーケターの重要性と求められるスキルについておうかがいすることができました。
三原さん、萩原さん、本日はお忙しいところ貴重なお時間いただき、ありがとうございました。

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